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「不一さま――あの頃はまだ違う名前だったけど――が全身まるごと人形にとっかえるって聞いた時は、思い切ったことするナァって思ったけどネ。
今じゃアタシもほとんど人形になっちゃったわ。ホラ、人間の体って、百年も保つようにはできてないから。
だから不一さまは、言ってみれば先見の明があったのかしらネ。今の状況を――黄樽家がいったん滅んで、再興まで人間の何世代分も待たなきゃいけないって状況を予見してて、それで人間やめたんだとしたら――ちょっと、おそろしいような気がするけどネ、アタシは。
ああ、戦いの前だって言うのに長話しちゃってごめんなさいネ。
　
『不可止絡繰』こと、黄樽　春千代(こうたり・はるちよ)。お相手いたします」

オーナー：luitomo

(出典：マーガレット・スローライフ)

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「アタシたちのコト、哀れだと思うかしら？　でもネ、たぶん一番哀れなのはあのコよ。
あのコはアタシたちと違って、“まッとうな普通の人間の暮らし”ってモノを知らないまま育ってしまった。だからきっと、自分が特別辛いとか苦しいとか考えたことはないと思うの。アタシにはそれが余計に不憫でならないのヨ。
ええ、ホントに不憫だわ。もう永遠に普通の暮らしなんて望めない。なんておいたわしい万里依さま」

オーナー：luitomo

(出典：マーガレット・スローライフ)

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「六花がバカなこと言ってたわ。これでずっと皆と一緒にいられるから、万里依さまはこうなるのが一番幸せだったんだとかなんとか。
そりゃァ六花はネ、不一さま信者だから。不一さまのなさったことはなァんでも正しいしずぅッと一緒にいられるのが幸せなんでしょうヨ。でも一緒にいたいってのはアンタの望みであって、万里依さまがアンタと一緒とは限らないじゃァないの。
――ああ、今、コワイこと考えちゃったわ。不一さまも六花と似たようなこと考えていて、万里依さまを手放したくなくて、それで……なんてネ。冗談よ……笑いとばして頂戴。だって、万里依さまを当主にするために、いッちばん教育熱心だったのは不一さまだもの。まさか、ねェ。」

オーナー：luitomo

(出典：マーガレット・スローライフ)

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「機械というか、人形の扱いは得意ヨ。なんたッて、あのオズの一番弟子だったンだから。天才人形師の不見守　小豆(みずかみ・おず)……知らない？　アラそう。まァ、何十年も前に死ンじゃった人だからしかたないかしらネ。とにかく、その人の一番弟子だったのヨ。人形の作り方、使い方、直し方……それに壊し方。全部教えられたわ。
　だから今でも、黄樽の人形の管理・メンテナンスはアタシのお仕事なのヨ。そう、不一さまの体も含めてネ。もっとも不一さまの体はお師さまの特別製だから、ほとんどメンテなんていらないンだけどネ」

オーナー：luitomo

(出典：マーガレット・スローライフ)

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