名前:漆口ふたえの個人的な体験
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
・召喚剣<10/0/0/4/熱熱絶絶/トウソウガンボウ> ・召喚剣<20/0/1/2/死盾護/タイコウ> ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/ジコトウエイ> ・召喚剣<25/0/0/2/死回4斬/トウカイ>
設定:
一般的な女子高校生というものは、もしかして寄ると触ると恋愛の話なんかをするものなのだろうか。最近世のメディアで散々披露されているガールズトークとやらは、七割ばかりが恋愛の話題で、残りがファッションや食べ物の話題であるような気がする。私はあまり仲のいい友達というものがいないので、よく分からない。少なくとも、私と九島さんの間では、恋愛の話はほとんど出たことがない。
私に関して言えば、色恋沙汰に興味がないわけではない。初恋らしきものは一応幼稚園の頃に済ませた。恋愛小説や映画も見る。けれど今、実際に誰か男の人と付き合ったりしたいとは思わない。面倒だからだ。もしも凄く好きな人ができたなら、そんな面倒さなんて吹き飛ぶのかなあと思うけれど、恋をするために手ごろな男とくっつこうという気にはならない。草食系女子(女にも使うのか?)というやつなのかもしれない。まだ自分を干物女とは思いたくない。
そして、九島さんに関して言えば。惚れた腫れたの話は鬼門だったりする。詳しいことは知らないが、昔、恋愛に関して何か嫌なことがあったらしい。九島さんと話すようになって間もないころ、適当な場つなぎとして好きな人とかいるのか、などと尋ねたところ、九島さんは眉根を寄せて「うーん……私、そういうのちょっと苦手なんだ」と言った。そのつもりで九島さんを観察していると、周囲の話題がその辺りに及ぶと、少しだけ嫌そうな顔になるのだ。嫌そうな、というか、苦しそうな、というか。暗い感情をあまり見せない九島さんが表情に出してしまうのだから、きっとまだひどく痛む傷があるのだろう。だから私は、九島さんの前で恋愛の話はしないできた。今までは。
早々に家に帰って味の感じられない夕飯を家族と食べた後、私は自分の部屋のベッドに転がって今日のことを思い出していた。
結局昼休みから九島さんとは目も合わせなかった。
合唱部を辞めた理由を話したくない、ということの表現として、わざとタブーの話題にかすってみた。結果は、うまくいったと言えばうまくいったが、効果がありすぎた。九島さんを本気で怒らせてしまった。
九島さんのことだ、あの程度の傷への触れられ方で、頭に血が上るほど痛かった、というわけではないだろう。怒ったのはきっと、弱みを使ってでも九島さんの心配を拒絶しようとした、私の卑怯さと悪意に対してだ。九島さんはおそらく、自分の恋愛に対する苦手意識を私に知られている、と気づいてている。その上で私があんなはぐらかし方をするということは、裏切り、いわば宣戦布告だ。嫌がることを意図的にされたショック。それに九島さんは傷付き、怒ったのだろう。
などと、勝手な九島さんの分析をして、私は枕に顔を埋めて息を止めた。
九島さんは今どうしているだろうか。まだ怒っているだろうか。それとも、怒ったことを後悔しているだろうか。だとしたらますます申し訳ない。二重三重に傷付けてしまったことになる。やっぱり謝らなければならない。でもどんな風に?
「だから、やっぱ正直に話すべきだろ」
それが一番簡単なのは分かる。けれど……。
「何迷ってんだよ、悪いのはお前じゃねーだろ。遠慮するこたないって」
悪いことをしてなきゃ、悪いことには繋がらない? そうだったらどんなにいいか。でもそんなわけがないことは、たかだか16年の人生でもよく分かっている。それこそ私が部活を辞めた理由だって――。
(え?)
私は枕から顔を上げた。今まで私は息を止めていた。それなら、今、しゃべったのは、誰だ?
「俺だ」
ひょこり、と。私の顔の前、ベッドの頭側の枠の上に、そいつは現れた。
そいつの外見を、どう説明したらいいだろう。大きさは15cmほど。大体は、小人のようだ。背中に四枚の色の違う羽があるから、妖精のようだと言った方がいいだろうか。肌の色は薄緑。どこかの民族衣装のような、クリーム色のゆったりした服を着ている。肩口まで伸ばした銀色の髪。そこから飛び出た尖った耳。顔だちは、小学校高学年の男子程度に見える。右目に青い眼帯をつけていた。
「やっと見つけたな、俺を」
それが、私とフコーとのファーストコンタクトだった。
オーナー:takatei
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