名前:漆口ふたえの個人的な体験
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
・召喚剣<0/6/0/2/高高/ハンドウケイセイ> ・召喚剣<10/0/0/4/熱熱絶絶/トウソウガンボウ> ・召喚剣<5/0/0/4/熱絶衝衝熱/ドウイツシ> ・召喚剣<20/0/1/2/死盾護/タイコウ> ・召喚剣<5/0/0/2/魔魔魔魔魔魔魔/オキカエ> ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱衝衝/ショウカ> ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/ジコトウエイ> ・召喚剣<5/5/0/2/衝衝/コウゲキ> ・召喚剣<25/0/0/2/死回4斬/トウカイ> ・召喚剣<5/0/0/4/鏡鏡鏡鏡鏡/セッシュ>
設定:
11.
目に入った時計は、まだ午後の授業をやっている時刻を示していた。午後の授業をサボって帰ってきてしまったらしい。サボるのは初めてだったが、何の感慨も湧かなかった。父は仕事、母はどこかに出かけているらしく、家には誰もいなかった。
鞄が重くて、その場に落とした。制服が重くて、その場に脱ぎ散らした。体が重くて、その場にへたりこんだ。
ちゃんと考えることができない。断続的な思考が、しかし猛烈なスピードで浮かんでは消えていく。止められない。九島さん。飛び込み。何でそんなことに。姫宮。部活。合唱。人が死ぬ。九島さん。好きな人。お似合い。恨み。余計なこと。九島さん。車。事故。自殺。ひたひたと。信じられない。車にはねられ。死ぬ。九島さん。さようなら。何で。どうして。嘘だ。本当だ。事故。何でこんな。誰のせい。
「お前のせいさ」
私のせい。私のせい? 姫宮が言った。そんな言いがかり。言いがかりだ。だって私は。九島さんが好きで。そんなわけない。
「お前のせいだ」
私のせい? 姫宮の声。蔑んだ声。囃し立てる声。私は。違う。九島さんは。そんなことしない。だって。九島さんは。立派な。
「お前のせいだ」
私のせい。だって。黙れ。姫宮。違う。姫宮じゃない。この声は。私に。九島さんに。打ち明けろといったのは。
「フコー……!」
「お前のせいだよ、ふたえ」
部屋の隅の暗がりに、フコーがいた。朱色に光る左目で、私を見つめていた。
「九島を殺したのはお前だ」
喋りながら、フコーが一歩こちらに近づいた。
「ち、違う、だって、私は」
「お前が、九島にすがりついたのが悪い」
「な、何で」
私には分からなかった。口は悪くてもずっと私の味方だったフコーが、なぜこんなことを言うのか分からなかった。
「私は、私のせいじゃなくて、」
「そうか?」
「だって、そう、そうだよ! 九島さんに話せっていったのはフコーじゃない!」
「姫宮みたいなことを言うんだな」
「っ!」
フコーが一言しゃべるたびに、一歩ずつこちらに近づいてくる。
「で、でも、そうじゃない! 私は迷ってたのに、フコーが言えって……!」
「俺は、九島に退部した理由を言えとは助言した。だが、それ以上のことも伝えろとは言っていない」
近づいてくるフコーが、無性に怖かった。
「それ以上って……何」
答えは聞きたくなかった。でも尋ねずには居られなかった。
「九島が部活に戻してくれることを期待しただろ。姫宮たちに復讐することを期待しただろ」
「やだ……やめてよフコー」
私は懇願した。それでもフコーはやめてくれなかった。
「嫌なことを全部始末してくれるのを期待しただろ。自分では何もしないでめでたしめでたしになることを期待しただろ」
「やめてよ!」
耳を塞いだ。それでもフコーの声は手をすり抜け、頭の中で反響する。
「お前は泣きながら九島になんて言った? 辞めたくなかったと言ったな。戻りたいと言ったな。悔しいと言ったな。九島がそれをどれだけ重く受け止めるかを、分かった上で」
「う、うう……」
フコーは止まらない。私には止められない。
「気分が楽になって飯も美味いはずだよな。お前は、九島にお前の重さを押し付けたんだ。何があったかを伝えるだけにするべきだった。九島への気遣いはそうあるべきだった。だがお前はどうした? どうなってほしいかまで口にした。九島にべったりと頼った」
「……だって……だって」
「九島がお前を可哀想な奴だと思って付き合ってくれてるように、お前は九島を無条件に立派な奴だとしか見てないんだよ」
フコーは、もう手を伸ばせば届きそうな距離にいる。けれど怖くて手を出せない。
「九島なら立派な奴だから大丈夫、って何回思った? 尊敬するって言葉で、何回九島の人間性を無視した? もし今回大丈夫だったとしても、いつかお前は九島を追い詰めたんだよ」
そんなことない。私は九島さんを気遣って打ち明けるかどうか迷った。迷った……本当に? フコーに言われなくても、結局は打ち明けたんじゃない? 崇拝という押しつけと共に。
私にはもう分からなかった。何が正しいのか。私が正しいのか。九島さんが正しいのか。姫宮が正しいのか。誰も正しくないのか。考えることに疲れてしまった。
「フコーは……」
でも、フコーは。フコーは今まで間違ったことを言わなかった。正しいことを言ってくれた。私の心の底にある欲求を、記憶を、読みとって的確なことを言ってくれた。本当にしたいことを示してくれた。人を救ってくれた。それなら、こんな状況だって、フコーは、私のためになることを言ってくれる。フコーは信じられる。
「フコーは、どうしろって言うの?」
私は耳を塞いでいた手をどけた。
「責任取れよ。自分で責任を持って決めた行動だ、って考えてたよな。責任を取れよ」
うん。だから、わたしはフコーのいうことをきくよ。どうすればいい?
「死ねよ」
分かった。
オーナー:takatei
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