名前:ハチ【ぶらり湯けむり夢きぶん】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ> ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文> ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞> ・召喚剣<10/0/0/1/魔魔魔魔魔魔魔/伏線> ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント> ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞> ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気> ・召喚剣<5/0/0/3/速熱熱衝絶絶> ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間> ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>
設定:
隣の風呂も見てみるか、と、俺はてまりを放っておいて進む。俺は十分風呂入ったし、八を探さないとな。混浴だから、そこで探すってのも、まあ、何というか色々、アレなんだけれど……。特に八は、だ。
言理の湯と書かれているそこは、いくつかの湯に人声や水音、桶の打つ音が反響しているのに対し、静けさが注がれていた。高い敷居が湯と湯を隔てているが、それ越しに聞こえる音がそれを揺らすが、湯気はまるで霧のよう。それにすら薬効が浸透しているようにも感じる。
……八だ。
湯気の奥、湯船に背を持たれ、目を閉じている。死んでいる、ように見えた。酷く傷ついた身体は、古傷のような傷跡ではなく、出来たばかりのように見えた。ここに入るときに傷つけられたのかもしれないが、その割には、湯は透明を保っていた。
浴衣を脱ぎ、俺もその湯に入る。
その瞬間――
「こんにちは」
聞き覚えのある声。そこには、女子高生が立っていた。
栗毛のセミロングヘアーにミニスカートにマフラー、黒タイツ、ローファー(は見えないけど)……ボーティーズ。
忘れていたはず、だった。
「あービショビショ。もう、君のせいだからね」そういって不満そうな笑みを投げかける彼女は、そのままの表情で言葉を繋げた。「でも、まあ、来たのは私だけれど。なんとなく、呼ばれてる気がしたからね」
ボーティーズ。彼女に会ったのは二回目だ。
初めて会ったのは、八に会った後のこと。八に再開する前のこと。つまりは、事故って気絶している間に見た、夢だ。
夢は、夢だった。いつか見た、剣の世界とは違う、ある意味では純粋な夢だった。まるで鍋みたいにごちゃ混ぜな、そんな夢。
その一片の中、妙に鮮明なシーンがある。目覚める直前にどこかの淵、何かの縁。ボーティーズと名乗るJKが、俺に話しかける夢。
その時も、彼女は「こんにちは」と話を切り出した。
「通りかかったよしみで、一応のアドバイスね。君はもうじき、目覚める。そうしたら、桐来八と静原てまりに会う。二人は、君が会いたいと、あの世界で会った二人に会いたいと願ったから会うことになった人間。会うことが出来た人間で、君が望んだ世界なの。忘れていると思うけれどね。この夢だって、忘れちゃうと思うけれど」そう言ってため息を吐く。
「それでも、言っておく」一歩、こちらに近づく。静かだった湯面が波立つ。「君だって男だ。君が招いた二人を、ガッカリさせちゃダメだからね。私だって二人ととも大した縁はないよ、たまたま会っただけだからね。あの世界の結末を知ったのも、『知人』から聞いただけだし。まあ、そーいう訳で、グッドラック」
「そうそう、そのボーティーズだよ。思い出したかな。ここはそういう場所みたいだね」歯を見せて笑う。湯船に立っているが、服を脱ぐつもりはなさそうだ。「で、何の用事かな」
直接、呼んだつもりはなかったが、しかし俺の口からは何も迷うことなく、言葉が出た。初めから決まっていたみたいに、決めていたみたいに。「八を、助けて欲しい」
それを聞いて、ボーティーズは笑う。声を出して笑う。
まるでバカにされているみたいで、それに対して怒鳴ろうとしている自分がいた、が、春先に吹く強い風のように、そんな自分を制するのは、彼女の不適な笑みと真っ直ぐな視線だった。
「それは、見当違いだよ、宮君。八は死んでいるんじゃない。君と同じように、記憶を縒っているだけだよ。ただ彼女は記憶を喪失していたがために、その情報量が彼女には外界への意識を保てるだけの処理量をオーバーしている。大丈夫、すぐに起きるよ」
笑みは優しさを孕んだ微笑に変わる。「それに、彼女はそうしてきっと、救われるものがある。私は救うとか救われるとか、そーいう言い方はあんまり好きじゃないけどね。そしてそれは、てまりちゃんが願った世界。てまりちゃんの意志だよ。……ひひ、ちゃんと私の言ったとおりに、二人を大切に思っているようで良かった」
そういって、彼女は立ち去った。湯気の奥に消える彼女の後ろ姿を見て、もう二度と会うことはないだろう、と思った。
そして、再度八に視線を向ける。
……今度は、俺が目覚めを待つ番だ。
オーナー:clown
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