名前:シャルロット・セクサロイドの場合
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬>
 ・召喚剣<20/0/0/2/鏡鏡鏡鏡/地獣ホドモラワ>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶>
 ・裏切書簡

設定:
シャルロットは朝を知らない。

 彼女は高品位のレプリノシスであり、娼婦である。
素晴らしく美しい顔立ちで白銀の艶やかなブロンドを揺らし、彼女は毎夜"起動"される。
顧客からの依頼でスリープ状態から覚醒し、客の待つ部屋と向かうのだ。
 レプリノシスの寿命は短い。だから、彼女のような高級タイプは本来の役目――彼女の場合は売春であるが――以外の行動を抑制されていた。
生まれた時からプログラミングで固定され、持ち主と客を全身を使って悦楽させることしか出来ない。
 活動期間は夜だけ。だから、シャルロットは朝を知らない。
 シャルロットは当然、自分が何故生まれて何故夜にしか活動できないのかなど考えない。
人間にとって都合のいい、人権の無い肉機械。それがセクサロイド・レプリノシス。
 快楽の渦の中心で、顧客が満足し開放されるまで夜は続く。
そういうポーズをしろ、と言われれば股も開くし、扇情的に胸を持ち上げたり挟んだりもする。喘げと言われなくても、透き通る少女の声から経験豊富な女の声で望まれるままに喘ぐ。
今日も彼女は滑らかで傷一つ無い真珠色の肌を、人間のために汚し、中も外も隙間なく侵略される。それしか彼女の存在価値は無い。

 事件の発端は情事の全てが終わり、明けない夜の天幕の下、帰りのフロートカーを待っていた時だった。
人が倒れていたのだ。薄い絹を一枚纏っただけの、橙と赤の混じった髪色の少女が。
 レプリノシスの最低限の基本行動として、倒れている人が人間である可能性もあるため救助を行わねばならない。
シャルロットは機械的に、少女を抱きかかえ容態を見た。気絶しているだけらしい。
 端正でガラス細工のような顔、シャルロットはすぐさま彼女の右手を見た。バーコードがある。レプリノシスだ。
そこから先は、少々規定から外れた行為だった。彼女自身、よく覚えていないし、分からなかった。
 シャルロットは少女を抱え、迎えのフロート・カーへ乗せた。
運転手もまたレプリノシスであり、詮索はしなかった。
 やがて、ビルへ着き、チューブ式の反重力エレベーターに乗って彼女の私室へ向かう。
シャルロットは少女を抱きかかえたまま部屋の中へ。

 彼女はまず最初に、濡れたタオルを用意して少女の身体を拭き始めた。
薄い絹のローブを剥ぐと、歳相応の純真な玉肌があらわになる。
 自分の身体を見ても何も感じないシャルロットが、どうしてか、この時ばかりは少女の肢体を美しいと思った。
歪みの無い骨格と発達途中の腰のライン。そっとタオルを当てて汚れを落としていく。
水滴が肌に潤いをもたらし、輝く。瑞々しさが露となって健康的な情念を掻き立てる。
ひんやりと当たるタオルが体の芯に障るのか、少女はたまに「う、ぅん」とくぐもった声を響かせた。
シャルロットは思わず彼女の無垢な体の最奥に手を伸ばしかけたが、ぐっ、とタオルを握って堪えた。
 自分は何をしているのだろう。シャルロットにとってそれは未知の感情だった。
何千という男の今まで相手をし、また人間の女の注文にすら応えてきた。
同属のレプリノシスと絡まされたこともあったし、綺麗な彼等の体や顔を見ても何の情念も抱かなかったというのに。
如何なるエロスの象徴にも靡かなかったシャルロットの心が、強く目の前の少女に惹かれていた。
あるいは、その汚らわしい棒状の罪を連想させぬ、処女のような彼女の肢体がそうさせたのかもしれない。
 とにもかくにも、シャルロットにとってこの少女との出会いは、彼女が初めて処理しきれない感情の波となって自身を襲った。

もし、許されるなら、あぁ。

 彼女は似合わぬため息をついて、先ほどより強い手つきで目の前の肉塊を拭き始めた。
拭き終わると、自分の衣装棚からドレスを一着出し、そっと彼女に着せた。
 あとは水か牛乳でも飲ませるべきだろうか、あぁ、しかし薄桃の溶けた少女の唇を見るとやはり・・・
 普段ならお気に入りのボトルを一本開けて、ソファでくつろいだ後スリープ状態に陥るのが習慣であったが、今ばかりはそうもしていられなかった。
酒を飲んだ自分を制御する自信など今のシャルロットにはない。
 それよりも重要なことに彼女は思い当たる。それはスリープ状態に入ることに今さっき、初めて疑念を持ったことだ。
スリープする、ということはつまり、今宵はもうこの少女の面倒を見れないということ。
 シャルロットにとって、それは初恋の恋文を目の前でズタズタに破られるのと同意義であった。
いつもの装置に入って睡眠薬を飲む、それだけの単純な行為がシャルロットには拷問に思えた。
 もし、私が寝ている間にこの少女が目を覚まし、外へ出ていってしまったら?
 もし、私が寝ている間に誰かがこの部屋に侵入し、彼女を襲ってしまったら?
 取り留めの無い疑念は沸き続けた。シャルロットのような完全自律式のレプリノシスにとって、これは異例の症状だった。
彼女自身、自分が今どうして混乱しているのか分からないのだろう。
ひどく焦る。どうするべきか。彼女が起きるまで、清々しい朝を迎えるまで、どうにかして私が傍にいる方法はないものか。
 ふと、彼女はあることを思い出した。すぐさま服を脱いで衣装を着替える、動きやすいラフな服に。
 そして、戸棚からお気に入りのボトルではなく、度数の極めて高いものをタン、と置いたグラスに波々とついで一気に煽った。
小物入れからは一つの鍵とキーカードを持ち出し、無造作にポケットに突っ込む。
タンタンと強く脈打つ足取りでシャルロットは少女を抱え、部屋を出た。
 さきほど来た道を戻り、ビルの前へ。そして通話する。自分より下位のレプルノシスに、あるフロートカーを一台持ってくるように。
それは彼女がいつか相手をした男からの貢物だった。
全くの無用の長物だと思っていたが、それが彼女の決意を固める役目を果たした。
 自走するフロートカーが来ると少し衣服の乱れた少女を車内に押し込み、シャルロットは運転席に乗り込んだ。
音声を入力し、夜の雑踏へと走り出す。

 天幕の隅では朝焼けの白みが見え、夜がまさに明けようとしているところであった。


オーナー:nitoro

評価数:2
(suika)(hosa)