名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
・裏切書簡 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン> ・召喚剣<20/腰/骨/2/凹面鏡、合わせ鏡、余命三秒、女王命令/琥珀丸> ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒> ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス> ・召喚剣<0/3/0/5/高高/スタラ将軍>
設定:
宰相ウツセミは嵐の中を放浪していた。顔に吹き付ける水しぶきも、声を口の中に吹き戻してくる荒れ狂う風も気にも止めず、天に向かって吠えていた。
「おお、天も荒れよ、風も叫べ!わが心を代弁するがいい!たとえ大陸を水没させるほどに降り注いだとて、その雨はわが心の涙とは比べようもないわ!私は娘との絆も失った!領民の信頼も失った!伯爵に仕える喜びも失ったのだ!稲妻よ、この俺を撃つがいい!すべての光を失ったこの俺の闇を恐れぬならば!」
稲妻が光り、ウツセミを照らし出した。ウツセミは稲妻の落ちた方角を睨みつけ、何ごとか吠えた。しかし、その声は続く雷音にかき消されてしまった。
という情景描写を考えながら、ウツセミは宿の2階でコーヒーを飲んでいた。ウツセミは若い頃作家志望だった。一度そうした夢に捉えられてしまった者は、自分のあらゆる心理状態を言語表現に置き換える癖が抜けぬものである。
ウツセミにはつくづく、こうしたときに誰が見ているでもないのに嵐の中で狂乱の振る舞いのできる者がわからない。そうした人間がフィクションの外に実在していることをウツセミは知っている。彼らが自分のような反省を経ることなく、激情によって即座に狂乱へ到るのか、似た反省を通り抜けた上で狂態に何かの意味を見いだしているのか、誰かが見ているのをなんらかの方法で悟って演技としてやっているのか、誰かが見ていることにして演技だと自分に偽って狂気に身を委ねるのか。
いかなる仮定をしても、自分がそのような狂態を演じることはない。本当に何もかもを失ったと感じている、失ったものを大事に思っていた者ならばそのような狂乱に至れるのか、単に理性と知性の劣る証でしかないのか。つまるところ自分は賢いのか、賢さに酔って人の心を失っているのか。
「コーヒーのおかわりをお持ちしました」
「ありがとう」
コーヒーは暖かかった。だが、ウツセミの心は冷えきっていた。という描写をウツセミは考えた。
明くる日、ウツセミは宿を出て宛てなき彷徨を再開した。何も持たずにふらっと来たが、身につけていた上質の衣類と高価な装飾は路銀として十分だった。
林の中を進んでいくと、ほどなく視界が開け、見覚えのある風景に出くわした。密告の結果捕らえられた児童を集めた、平原の縁に立つ施設、ヘブンズリバーの収容所だ。
ウツセミは収容所を回り込み、雨上がりの大平原を見渡した。<無限の射程>に広がるかのようなその大地と空の景観は、なぜか娘を思い出させる。
char型の変数'A'はint型として読みとられた場合には65であり、逆に言えば、異なる複数の概念が同一の値として保存されるように、京子とヘブンズリバーの光景とはそれぞれ異なるコードの同じ値として脳に記憶されているのかもしれない。
「あれっ、ウツセモさんじゃないっスか。こんちはっス。娘さん、裏切ったそうっスけどだいじょぶっスか。バッチリっスか。あれ、随分サッパリしたかっこっスね」
背後からの呼びかけにウツセミの思考は中断した。浅黒い肌に頑丈な体のソルダスだ。ヘブンズリバー収容所の職員の中でも、空気が読めないことでは右に出る者のいない人物である。
なんと返したものか考えあぐねていると、ソルダスは勝手に喋り出した。この男は人と話すのが好きだが、人の話を聞くのが好きなわけではないのである。
「いやー、実は参ってたとこだったんっスよ。こどもたちにエスパーがいたらしくって、逃げられちゃったんスよ。中央の方へ向かったみたいっスけど。あ、サボってわけじゃないっスよ。服務規程にも『収容者に超能力を使わせてはならない』とはなかったわけっスから」
ウツセミはしばらくソルダスを硬直した顔で見つめていたが、ソルダスが返事を促して肩に手を伸ばしかけると、首の支えを失って顔は上を向き、体は傾いて倒れた。
以上は無論、ソルダスの話を聞きながらマルチスレッドで組み上げられたウツセミナレーションだ。そうそう都合よくショックで気を失うなどできぬものなのだ。
オーナー:niv
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