名前:S
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<35/0/3/0//岩窟人形維持二回目>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/クイックシルバ>
 ・召喚剣<5/1/0/4/衝衝衝衝/トラップくん2号>
 ・召喚剣<5/1/0/3/速熱衝衝死/Cの微熱>
 ・召喚剣<10/0/5/1/盾魔/マジックシールド>
 ・召喚剣<5/0/0/2/高斬/(奪剣ギールス)>
 ・召喚剣<5/5/0/2/斬斬/イガバッチド>
 ・召喚剣<5/3/0/3/熱絶重/燃え上がれ俺の恋>

設定:
9.シー

 霧雨乱は空山海に惚れていた。乱は女装をしていたが、海も女装の男子だった。乱の恋は一目惚れで、海が男だとは知らなかった。
 始業式後の自己紹介で「性別は男」と言われたときに、乱の思考は固まった。女装は趣味だが決して同性愛者ではない。けれど海がたまらなく可愛すぎて、理性よりも煩悩を優先してしまった。叶わない恋だった。否、海は全てを愛するタチの人間なので、実らない恋とは言い切れないが、両想いになったらそれも問題で自己嫌悪に陥るだろう。乱の恋の心境は奇怪複雑極まりない。
 ところで海は二つの人格を持っている。カイとウミ。双生児として生まれるはずの姉弟だったが、姉は栄養が足らずに胎内で死に、弟だけが生を受けた。しかし姉の精神は弟の中に生き続けた。普段はウミが表に出るため、海は女っぽい話し方をし女っぽい服を着るのである。
 乱の女装と決定的に違うところは、海は女だということだ。女装を意識してスカートを履いているわけではない。海を数ヶ月間観察して、乱はそのことに気付いていく。
(そんな事情があったなんて)
 カイが表に出ているのを何回か目にしたことがある。カイは下を向いていた。視線を恐れているようだった。いつもの元気なウミちゃんとは様子が正反対だった。
 乱はカイに話しかけた。休み時間に、何気に。
「カイくん、だよね?」
 カイは身を強張らせた。顔を上げる。
「キミは……クラスメイトの」
「霧雨乱だ。よろしく」
「キミも、男の子? なんでそんな格好を」
「へへっ、カッコイイだろ? 走るときに長い髪が揺れるんだぜ」
「カッコイイ? 女装が? キミ、頭おかしいよ」
「うっさいなー。俺はこれが気に入ってんだよ。周りにどう言われようが、俺はこのファッションを貫く!」
「……おめでたいね。僕は好きで女装をしているわけじゃないのに」
 カイは目線を斜めにそらす。「姉さん、まだ昼寝をしてるのかな」と小さな声で独白する。
 乱にはカイが今の状況を楽しんでいないように見える。ウミのせいでカイは苦しんでいるのだろうか。強い光は影を色濃く落とすものだ。
 乱はウミが好きだった。けれどウミは胎児のときに死んでいる。魂だけがカイの体に宿っている。
 果たしてウミは生者なのか。
「カイくんは、どんな格好をしたいのかな?」
「僕は普通にジャケットとズボンで……、あ、七天くんには憧れます」
「八刀か。なるほどなー。だけどウミちゃんがいるからナックルファッションはできないと」
「だから僕はいつも誤解されてるんだ。姉さんが飾った空山海は本当の僕じゃない」
「……」
 カイの話を乱はじっくり推敲する。しばらく目線を彷徨わせる。やがて口を開いていく。
「じゃあ、俺が姉さんを弑しようか」
「え?」
「俺はアサシンだ。ウミちゃんはもう死んでいるから、俺が完全に殺してやるんだ」
 別れの決意を乱はした。ウミへの恋よりカイへの情を選択した。
(カイと友達になれればいい)
 その夜、乱は枕を濡らした。海のように涙は辛い。


オーナー:かに

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