名前:全滅エンドA
HP :5
攻撃力:3
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・蟲毒剣
 ・蟲毒剣
 ・蟲毒剣

設定:
女の首を刎ねる。胴体とのつながりを失ったそれは
ボールか何かみたいにポーンとはねて空中で少し回って、
やがて重力に従い落ちててんてんてんと転がった。

既に事切れている。にも拘わらず、全てを見透かし
否定する瞳が未だ私を睨んでいた。頭の切れる奴だった。
まるで見てきたかのように物を言い、僅かな危険も
察知していた。誰の意見であっても否定し、打消し、
跳ね返す。こと人命を守ることに特化した彼女の
性質は、攻撃一辺倒な私とは本当に相性が悪い。

カラスはこういう奴だったなあと思いはするが、
おともだちごっこの通りに行かなかったのだから、
こいつはカラスではない。

「一人。」

振り返る。一番近い女の胸部を突いて、薙ぐ。
斬ったところから赤い液体が次から次へと流れ
落ちていく。まるで泉のようだなと思った。

今まさに命が失われていく瞬間にも、私の真意を
探るように瞳を揺らしている。この女はいつも
こうだ、一見してガサツで面倒臭がりだが、
沢山の妹と暮らしていてとても面倒見がよい。
貧しい家庭で培った技術なのだろうか。
食べられるものは食べられる内に食べる、ある
もので何とかする、何事にも徹底的に効率化を図る
という思想は、私の戦闘スタイルとはよく合って
いたと思う。
だがおともだちごっこの通りに行かなかった
のだから、こいつはタヌキではない。


「もう一人。」

小柄な少女を蹴り飛ばし、追い打ちをかける
べく馬乗りになる。

なんと寝ている。

最初の一撃で気絶したのか、仲間の血を見た
ショックで意識を失ったのか。
…この女の考える事は最後までよくわからなかった。
楽しい事をしよう。面白い事をしよう。およそ戦闘とは
関係のない思考は突飛なアイディアを生み、予想外の
一撃を繰り出す事がままあった。あれを計算でやって
いるのであれば恐ろしいが、無防備を晒すスタイルは
私にとってはただの的だ。

おともだちごっこの通りに行かなかったのだから、
当然、こいつもヒツジではない。


「…アリクイ。」

最後の一人に向き合う。

「なんで、ホタルちゃんっ、なんでっ…!?」

アリクイが泣いている。
私の愛しい人。ずっと運命の相手だと思っていた人。
今の今まで、私の思い描いていたアリクイと同じだ。
でも違う。おともだちごっこが失敗したのだから、
貴女はアリクイではない。
どれだけ愛おしくても、どれだけ手放したくなくても、
・・・
私たちはやり直さなければならない。

「貴女が本当のアリクイだったら、どれだけ良かったか。」

「どういう事なのっ、なんで、皆をっ!」

「失敗したの。おともだちごっこはまたうまくいかなかった。
 私達は本当のおともだちではなかった。
 カラスはカラスじゃなかった。
 タヌキはタヌキじゃなかった。
 ヒツジはヒツジじゃなかった。
 だから、殺した。だから、やり直す。それだけの事。」

それは石火矢ホタルが守り続けてきた事で、
私も、先代の私も、皆が続けてきた事だ。
だから、やらなくてはならない。
刃をアリクイに向ける。
仲間の血が滴り落ちる。

「じゃあ、なんで、なんでっ


 なんでホタルちゃんは泣いているの…?」

私が、涙を?
頬を伝う冷たさに気を取られたその時に、
背後から私を掴む腕があった。

「アリクイちゃん、逃げてっ!」

「ヒツジちゃんっ!!」

死んだフリかっ!
この女っ、発想の外から私の邪魔をっ!!

少女をふりほどき、焼き払う。
ジンギスカンの匂いがする。まだだ。
今度こそ確実にとどめを刺そうと襲い掛かる

ド リ ル ッ


それはほんの一瞬だった。

その一瞬で、アリクイがドリルのようなもので
私の頭を殴った。

そうだった、アリクイは鈍いが決断は重い。
そうだった、アリクイにターンを与えてはならない。
脅威ではないと踏んでいたのが仇になったか。
或いは、私の中の愛が殺す順番を誤らせたのか。

失敗だ。おともだちごっこも、やり直しも。

涙ながらにアリクイは私に槌を降ろした。
そこで私の意識は途切れた。


「ひぐっ、ぐすっ、なんで、なんでなんでっ
 私達は、こんなにも、おともだちだったじゃないっ…」

一人残された少女の嗚咽が洞窟の中に6連続で木霊していく。


オーナー:utsm3

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