名前:夢見る泣き虫
HP :10
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:1
剣技:
・ギルド証 ・夢見る泣き虫 ・夢見る泣き虫 ・nばんめ3 ・nばんめ3 ・nばんめ3 ・笑茸 ・竪琴 ・円楯 ・篭手 ・段平 ・匕首 ・毒壺 ・Cracker
設定:
新米冒険者。ただの少年。
※以下、黒歴史ノート
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――ところで、この度の一連の顛末に「分岐」があった事は、あなたもすでにご存じだろう。
一つ目はミツカミエルフ達との戦い。
練兵を積み、神の加護を受けたエルフ達の集団に、新人の寄せ集めごときが叶う道理もなかった筈だ。
しかし冒険者達の才覚と知恵は、ギルド長の想像のはるか上を行った。
二つ目はエルフの村でのブレスタとの戦い。
茸火くま、恐るべき力を持つ一匹の王を前に、所詮ただの人たる冒険者達は蹂躙されるがままだった筈だ。
しかし一人の指揮官は諦めることなく戦い続け、ついには万が一の奇跡をつかみ取った。
この二つは本来、負けることが既定路線の戦いであった。
ならば、これらの敗北の先で紡がれるべき道筋が、別の英雄譚が、用意されていた筈ではないだろうか?
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ブレスタの群れを掃討し終わると同時に、ふいに意識が覚醒した。
風の巡る琴の音が止み、少年を捕えていた蜃気楼が、どこかへ去ってしまったのだ。
なんだか地震が起こって神らしきものが現れたけれど、どうにも現実感が無く、喧噪のなか、少年はぼんやりと空を眺めた。
蜃気楼の残滓が、未だ少年の中に渦巻いている。
そもそも彼が蜃気楼に捕らえられたのは、あの光景を見たためだ。
スミェールチ、あのうつくしいエルフの、恐らくは遠い幼少時代。
二人の女性に楽器を受け取った子ども、背丈やら装いが似ていたからか、妙に自分を投影してしまって、気付けばあっさりと飲み込まれていた。
ほとんどそのとき少年はスミェールチであり、果てしなく響く音楽のその一部であった。
終わることなき演奏が楽器ごと断ち切れたとわかったとき、なにゆえか涙さえ出たものだ。
だからだろうか、無意識のうちにギルド長が用意していた武器の山から、竪琴をひとつ、持ってきてしまった。
つたない手で弦をつま弾いて見ると、夏の日に嗅いだ草いきれの匂いがした。懐かしい記憶が目の裏に満ちる。
神がなんかうねうねしているのをぼんやり見据えながら、ぽろん、ぽろん、情緒のおもむくまま何度も何度も琴を奏でる。
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――もちろんこの時点で少年はちょっと面倒くさいことになっていた。
いや少年が悪いわけではないのだが、ただいろいろ状況が整い過ぎていたというのだろうか。
そもそもが竪琴と言うのは神話よろしく古来より魔と関係の深い楽器であり、とくに魔を魅力し惹きつける力があるのだ。
そして魔というのはどうもこう連想性やら因果性やら符号性を重視するもので、つまるところ。
・蜃気楼に囚われた際に、その空気を吸い込んで体の中に取り入れてしまった。
・琴の音色が見せたエルフの過去に、必要以上に自分を重ね合わせてしまっていた。
・もはや音の形を保っていないレベルにせよ、残響が空気中にわだかまる空間で、同じ楽器の音を奏でてしまった。
・目の前に他称「神」
儀式としてはまぁ、十分らしかった。
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ふいに風が少年の周りを踊るように渦巻き始めた。
はじめはかすかに、しかしやがてはっきりと、ひとつではない竪琴の音色がそこに現れる。
いくつかのロンドとカノンがじょじょに複雑さを増しながら、けれども主旋律こそは一つに収束して行く。
夏の匂いがどんどん強まって行く。
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――分岐の話の続き。
この手の話によくある仮説として、いわゆる世界線集約説がある。
ようするに辿るルートはそれぞれに分岐するにせよ、キーとなる事象については、何らかの強制力によって全ての世界線が同じ事象に辿り着くというものだ。
そこでは死ぬべき運命の物は死に、残されるべき歴史は残り、歌われるべき歌は必ず歌われる。
それが、どのようなルートを辿ったとしても。
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琴が奏でられている。明らかに異なる世界から同じ琴の音色が響いてくる。
――「三神さま」とは果たしてただの仇名であっただろうか。名は体を表す如く、名こそは因果を表しはしないか。
三つの神。分岐した世界。集約する世界線。響き合う音色。
――そういや音楽は世界を超えるとよく言うだろう、「世界」も超えられるのでは?
――竪琴を使った召喚でもっとも著名なもの、すなわちそれは吟遊詩人がよくやる「物語の召喚」ではないか?
――死に逝くものが最後に残す火花こそが最も明るい、ならば死にゆく魔楽器が最後に放つ力はどれほどだろうか?
因果が溢れる。すべての言質が利用され、関係性が捏造され、舞台がそこに空想される。
――そういや少年、君の名前は「夢見る」泣き虫だったね?
そう、■■■■が言った。
演奏が止まる。
ひときわ強く風が吹いて、夏の匂いが炸裂した。まるで少年のクラッカーのように。
そして、壊れた楽器が見せる夢の、蜃気楼の夢の、その最後の残滓を、彼は見た。
並行世界の夢を見た。
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"こんにちは" "やぁ"
"ええと" "うん"
"なんていうか" "よくわからないけど"
"手を貸そうか?"
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むろん少年は頷いた。
――相手が3つの神さまなら、こちらもきみが3人でちょうどいいってことだ。
オーナー:EscaeP
評価数:8 (sunatower)(theta)(sunatower)(c)(84n)(theta)(winuin4038)(kusa_hen) まだ全部読み終わってないけどどうしても先に評価ボタン押したいです…凄い (theta)(04/24 00時10分27秒)
ギルド員二人つかうとはこういうことだったのですね・・!構成も設定と相まってとても面白いです、文章も丁寧で凄い! (sunatower)(04/24 00時20分51秒)
構成も設定も熱くてカッコいい……! (84n)(04/24 02時49分00秒) |