名前:死を殺す方法
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:1
剣技:
・デス剣 ・デス剣 ・デス剣 ・デス剣 ・デス剣 ・デス剣 ・デス剣 ・デス剣
設定:
静謐な夜だった。
僕たちは霊坂山の頂にある神社へと続く、長い石階段をただ登っていた。あとどれほど進めば、頂上に辿り着くのだろう。右手に握った懐中電灯でずっと先のほうを照らしても、それらしき影はない。
永い行軍に脚の痺れを感じた僕は、立ち止まって後ろを振り返る。僕のすぐ後ろをついて来ていた、墨色の着物に身を包む少女は、僕に先へ急ぐよう身振りで促した。
懐中電灯に照らされた、百合花のように白い、血の気のないような肌。さらりと揺れる濡羽色の髪。控えめな目や鼻に、小ぶりな唇。そしてその手には、枯れた花束を抱えている。この馬鹿みたいに長い階段にもまったく疲労の色を見せない少女に僕は愕然としつつ、仕方なく前に向き直って、再び階段を登り始めた。
「なあ」しばらくして僕は言った。「本当にこの先に例の場所≠ヘあるのだろうか」
「――ありますよ」少女は少し息を整えてから、絞り出すような声で呟いた。先ほど振り向いたときは涼しい顔をしていたのに、なんだ。しっかり疲れていたんだな。
だから、僕は少し気を利かせたつもりで言ってみた。
「疲れたんだけど、少し休まないか?」
「あと、少しですから」
にべもなかった。
それから僕たちは、気が滅入ってしまわぬように、ぽつりぽつりと他愛のないことを喋りながら歩いた。
静寂な夜空に浮いた会話の中で、僕は少しずつ少女の人柄を知る。じつを言うと、僕は彼女の名前すら知らなかったんだ。
やがて、視界に映り続けていた灰色の石階段が途切れた。ようやく、頂上に辿り着いたみたいだ。
砂利道を進んで、少女に促されるまま赤錆びた鳥居をくぐると、打ち捨てられた神社がそこにあった。木材は虫食いだらけで、屋根は軽く陥没しているし、供え物は雨水の溜まった酒瓶が二本あるだけ。神への冒涜もいいところだった。
周囲には野草が好き放題に伸び、木々は枯れかけている。とにかく不気味なところだというのが、率直な感想だった。
少女は僕の服の裾を引っ張って、神社の裏側へ回るよう合図した。懐中電灯を持っているのは僕だけだったから、僕に先導して欲しいのだろうけど、その仕草が妙に可愛らしいものだから、距離感も相まって、少しだけ彼女を意識させられる。
神社の裏側には、小さな石の墓が二つ並んでいた。墓標に名前は書かれていなかったけど、少女はそれが誰の墓なのか分かっているようだった。少女はしゃがみ込んで、二つの墓の間に添えるように、枯れた花束を供えた。
「七年前の或る夏の日のこと。憶えていませんか?」
「……いや」
僕は生唾を呑み込んだ。なにか、嫌な予感を覚えていた。
「……そうですか。では、話さなければなりませんね」
少女は目蓋を閉じて、祈るように両手を合わせた。
オーナー:werueru
評価数:6 (theta)(theta)(osakana)(「こうやどうふ」)(ポーン)(sunatower) 引き込まれます。天冠、左前、菊、小衿一部赤い?縁の赤線が素敵。天冠の紐と相まって彼岸花のよう。おさげに襟の赤線でセーラー服のようにも見える・・・七年前は学生だったとか・・・?想像が膨らみます素敵です。綺麗。 (「こうやどうふ」)(07/09 19時09分10秒) |