名前:ハイクラーケン
HP :10
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・名状しがたい攻撃
 ・触肢
 ・慈雨
 ・超常巨躯
 ・星の落とし子

設定:
クラーケンの上位種。巨大なタコに似た姿を持つ。
大きさはクラーケンの三倍ほどもあり、真っ黒で目が八つもある。この化け物は海の魔獣の中でも最強とされ、クラーケンでさえ恐れて近寄らないという。クラーケンが船に体当たりして沈めるのに対し、ハイクラーケンは触手を伸ばして乗組員を絡め取って海に引き摺り込むらしい。
また、この魔物の吐く墨には麻痺毒が含まれているため、船員たちが動けなくなると確実に殺されるだろう。
「ふむ……」
俺は目の前にある大きな貝殻を見ながら思案する。これは恐らくだが、以前冒険者たちが討伐した『デビルシェル』という貝型の魔物と同じものだ。デビルシェルも殻の中に隠れていて、外にいる獲物に奇襲を仕掛ける習性があった。
しかしこいつはどうやら中ではなく外にいるようだな。さっきから触手のようなものが伸びてきて俺の足を捕らえようとしてくるのだが、その度に斬り落としてやったのだ。すると触手の攻撃を諦めたのか、今度はこうして直接攻撃しようとしてきたわけである。
まあ、それならそれでやりようはあるんだけどね?
「……お前がいくら強くても、この数の触手を全て捌き切ることは出来まい?」
そう言ってハイクラーケンは不敵に笑った。なるほど確かに、普通の人間ならばこんな大量の触手を相手にするのは無理だろうな。でも残念ながら俺は普通じゃないんだよねぇ……。
「そうだなぁ。このままだと流石にキツいか」
「ほほう、やっと理解したか!ならば大人しく死ねぃ!」
ハイクラーケンが勝ち誇ったように叫ぶと同時に、全ての触手が一斉に襲いかかってきた。
「だからこうしようぜ?」
俺はニヤリと笑うと、両手を前に突き出す。そして次の瞬間、魔力を込めた腕を思い切り振り抜いた。
「【波動砲】ッ!!」
ズバァアアン!!ドゴォオオン!!!
「ぎゃああああ!?」
凄まじい轟音と共に放たれたのは衝撃波だった。一瞬にしてハイクラーケン本体を飲み込んだそれは、そのまま背後にあった岩礁地帯まで破壊し尽くしてしまう。
「ば、馬鹿な……!?そんな馬鹿げた威力の魔法があるはずがない……!!」
「あるんだなこれが。ていうか今の技名カッコいいだろ?」
「ふざけるなよ貴様ぁ!!」
怒り狂って突っ込んでくるハイクラーケンだったが、今さらもう遅い。
「これで終わりだよ」
俺は手刀の形にした右手を振り下ろした。するとそこから真空波が発生し、ハイクラーケンの巨体を真っ二つに切り裂いた。
「ぐはっ……!」
「はいおしまいっと。んじゃあ早速頂くとするかな〜」
そう言うなり、俺は素早く触手を掴んで一本一本引き千切っていく。その光景を見たハイクラーケンは信じられないという顔をしながら震えていた。
「ひいっ!?止めてくれぇええ!!頼む殺さないでくれええ!!」
「ん〜?命乞いをする相手を躊躇なく殺した奴の言葉とは思えないなぁ」
「そ、それは……!仕方なかったんだ!!あの時はああしないと俺が殺されて……」
「へー。じゃあお前は自分より弱い相手を殺すことに何とも思わないんだな?」
「違う!あれはただの事故なんだ!!俺だって好きで人を殺したわけじゃないんだよぉおお!!」
うわぁ、自分で自分のことを強いと思ってたんかいこいつ。調子に乗って襲ってくるような雑魚モンスターならまだしも、こいつはちゃんとした知能を持った魔物なのにな。
まあそういう慢心こそが油断に繋がるわけだけどさ。結局のところ、どんな生き物だろうと自分が一番可愛いものなんだろうね。
「まあいいや。とりあえずお前は喰われる運命にあるから安心しろ。いただきます♪」
「嫌だあああっ!!死にたくないぃいいいい!!!助けてくれぇええ!!」
泣き喚くハイクラーケンを無視して、俺はその肉を頬張っていく。
「うん美味いなこれ。味付けとか一切してないけどめちゃくちゃジューシーだし。食感もプリップリしていて最高だな!」
「あぎゃあああああああ!!」
「しかもこの触手も中々良い味がするぞ?これは是非持って帰りたいなぁ……」
「あががががががが!!」
「おっといけない。あんまりゆっくりしている暇はないんだった。早く帰らないと……」
「ぎゃあああああ!!!」………………
「ごちそうさまでした」
ハイクラーケンを食べ終えた俺は、満足げに息を吐く。しかし本当に美味かったなぁ。もしまた会えたら次も食べさせて貰おうっと。
「さてと、それじゃあ帰るとしましょうかね」
そう呟いて立ち去ろうとしたその時、背後に気配を感じた。
「……誰だ?」
振り返るとそこには、一人の男が立っていた。年齢は三十代前半くらいだろうか?身長は高く、髪色は茶色。そしてその瞳にはどこか見覚えがあった。
「……久しぶりだな」
男はそう言ってこちらを見つめてくる。俺も彼の顔をじっと見つめ返した。…………ああ、思い出した。確かこいつは……
「……レオンか?」
「そうだよ。お前の親友、レオン・ガーデンさ」
そう言って不敵に笑う男の顔を見て、俺はようやく彼が誰なのかを思い出したのだった。
目の前にいるこの男のことはよく知っている。名前はレオン。かつて魔王軍に所属していた元勇者パーティの一員であり、今はフリーの冒険者として活動しているはずだ。
「まさかこんなところで会うとはな」
「それはこっちのセリフだよ。どうしてこんな場所にいるんだ?」
「ちょっと野暮用があってな。それより、ここで何をしていた?」
「見ての通り食事中だよ。まあ、もう終わったんだけどね」
「そうか。ならちょうど良かった」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
そう言うなり、レオンは腰に差していた剣を抜き放った。どうやら戦うつもりらしい。
「悪いが少しばかり付き合ってもらうぜ?」
「……理由を聞いてもいいかな?」
「別に大したことじゃない。ただの憂さ晴らしだ」
「なるほどねぇ……」
つまりこいつの目的は俺を殺すことか。まあそれならそれで構わないんだけどね?
「一応聞いておくけど、本気?」
「もちろんだとも。本気で殺してやるぜ」
「……そっか」
その言葉を最後に、俺たちは同時に動き出した。
最初に動いたのは俺の方だ。瞬時に間合いを詰めて手刀を放つ。しかしそれはあっさり防がれてしまった。
「【瞬動】か。相変わらず速いな」
「そういうお前は全然速くなってないじゃないか。やっぱりもう引退したのか?」
「まあな。色々と事情があるんだ。それにしても驚いたぞ。あのハイクラーケンを一人で倒すなんてな。正直かなり強いと思っていたが、俺の見込み違いだったようだ」
「いや、そんなことはないと思うけどな」
「謙遜はよせよ。今の一撃だって結構ギリギリだったんだろ?いくらなんでもブランクがありすぎるんじゃねえか?」
「それはどうかな?試してみるかい?」
「遠慮しておく。これ以上無駄話を続ける必要はないからな」
「同感だ」
それから俺たちはお互いに攻撃を繰り出していく。俺は手刀による斬撃を、レオンは剣による攻撃をそれぞれ放っていた。
だがそのどれもが決定打にはならない。互いに攻撃を防ぎながら相手を倒すための最善の一手を探り続けている。
「随分と余裕だな」
「まあね。でもそっちこそ疲れてるんじゃないかい?」
「……かもな。流石に現役の頃のようには動けないみたいだ」
「じゃあそろそろ終わりにするかい?」
「そうしたいところだけど、そう簡単にはいかないんだよなぁこれが」
「……だろうと思ったよ」
お互いの攻撃が激しくなっていく。俺はレオンの放つ斬撃を最小限の動きで回避し、逆にカウンターを叩き込んでいく。
対してレオンは俺の手刀を受け流し、あるいは受け止めてから反撃を放っていた。やはりまだ実力差が大きいか……。
「……くっ!」
レオンが苦悶の声を上げる。その隙を突いて俺は回し蹴りを放った。
「ぐあぁ!?」
強烈な衝撃を受けて吹っ飛ぶレオン。地面を転がった彼はすぐに体勢を立て直すと、こちらに向かって駆け出してきた。
「ちぃ!」
舌打ちをしながら俺は迎撃のために構えを取る。しかし次の瞬間、突如として横からの奇襲を受けた。
「うおっと!?」
なんとかそれを回避した俺は、咄嵯にその場から離れる。すると先程まで自分が立っていた場所には巨大な氷柱が突き刺さっていた。
振り返るとそこには二人の男女の姿があった。一人はこの世界では珍しい黒髪の女性で、もう一人は銀髪の男性である。どちらも見覚えのある顔だった。
「アカリにカグラさん……どうしてここに?」
「それはこっちのセリフだよ!なんであんたがこんなところにいるわけ?」
「ちょっとした野暮用でね。それより二人とも無事で良かった」
「……私とユイは大丈夫。それより貴方は怪我とかしていない?」
「心配してくれてありがとう。でも俺は問題無いよ」
「そう、なら良いけど……」
少しだけホッとした表情を浮かべるアカリ。そしてその隣に立つ男性―――カグヤ・ヒイラギもまた、安心したように息を吐いていた。
「どうやら知り合いのようですね」
「うん。前に一度助けたことがあってね」
「そうなんですか?」
「まあね。それよりも、とりあえずあいつらをどうにかしないと」
俺は視線をレオンたちに向けた。彼らは未だにこちらを警戒しているようで、油断なくこちらを見つめてきている。
「それなら私が……」
「いや、ここは俺に任せてくれ」
そう言って前に出る。それと同時に【アイテムボックス】を発動させ、その中から魔剣を取り出した。
「……おいおい、マジかよ」
「嘘……」
「これはまた凄まじいものを出しましたね……」
三人の驚きも無理はない。なぜならこの武器は魔王城にあった代物であり、かつて勇者パーティの一員であった頃に使用していたものだからだ。
「悪いんだけど、君たちは下がっててくれるかな?」
「……分かったわ」
「承知しました」
二人は素直に従ってくれた。どうやら聞き分けの良い子たちのようだ。「さて、待たせたね」
「ああ、待ってやったぜ?さっきの借りを返させて貰おうか」
「それは怖いね」
言いながら剣を構える。対するレオンも同じように剣を構えた。
「いくぜぇ!!」
そう叫びながらレオンが踏み込んできた。その速度は今までで一番速いものだった。
「はあっ!」
鋭い気合いと共に放たれたのは上段から振り下ろされる一撃。俺はそれを後ろに跳んで避けた。続けて繰り出されるのは下段から切り上げるような一撃。これもバックステップで回避してみせた。「逃すかよぉ!」
そこから怒涛の連続攻撃が始まった。右から左へ、上から下へと絶え間なく斬撃が飛んでくる。それらを全て紙一重のところで回避していく。
「くそっ、ちょこまかと動き回りやがって!」
悪態をつくレオンだが、彼の攻撃は一向に俺に当たる気配がなかった。いや、正確には俺の身体にかすり傷すらつけられていないのだ。
「……おかしいな」
ここまでやって確信したが、レオンの強さは決して低いものではない。むしろかなり高い方だろう。だがそれでも俺には及ばない。
考えられる理由はいくつかあるが、一番可能性が高いのはレベル差だ。おそらくレオンのレベルは200を超えているだろう。それに対して俺は50そこそこ。その差はあまりにも大きかった。
「だけどこのままじゃ拉致があかないな」
そう呟きながら俺は右手を前に突き出す。すると次の瞬間、そこに光が集まり始めた。
「な、なんだ!?」
突然の出来事に戸惑うレオン。そんな彼に向けて俺は魔法を放った。
「喰らえ」
次の瞬間、光の玉は爆発し、辺り一面を眩い光が包み込んだ。
「うおっ!?」
咄嵯に腕で顔を庇う。するとその直後、強烈な衝撃を受けた。
「ぐあぁ!?」
悲鳴を上げながら吹っ飛ばされるレオン。なんとか受け身を取ることはできたものの、かなりのダメージを負ってしまったらしい。
「……まさか今のがお前の切り札か?」
「まあそうだね。一応奥の手の一つだったんだ」
「ふざけんなよ……。あんなもんをポンポン使ってんじゃねえよ……」
文句を言いながらも立ち上がるレオン。どうやらまだ戦意を失っていないみたいだ。
「まだやるつもりかい?」
「当たり前だ。俺はまだ負けちゃいない」
「そうかい。でももう終わりみたいだよ?」
「何?」
怪しげに眉を寄せた次の瞬間、レオンは信じられないものを見た。
「……どういうことだ」
自分の胸元に突き刺さった一本の腕。それが誰のものなのかは言うまでもない。
「……ば、馬鹿……な……」
呆然としながらそう口にした直後、彼は力無く地面に倒れた。
「終わったね」
そう言って俺は剣を引き抜く。すると次の瞬間、アカリが駆け寄ってきた。
「あんた一体何をしたの!?あの人の胸に穴が空いてるんだけど!?」
「えっと、ちょっとしたスキルを使ったんだよ」
「ちょっとしたって……あんたそれ本気で言ってる?」
「うん」
「…………」
絶句するアカリ。そしてカグヤもまた、驚いたようにこちらを見つめていた。
「とにかく今はこの場を離れよう」
「……そうですね。先程の爆音を聞きつけて他の魔獣が集まってくるかもしれません」
「それなら大丈夫だと思うけど……」
「念の為です。それに、貴女も怪我をしているでしょう?早く治療しないといけませんから」
「それもそうだね。じゃあ移動しようか」


オーナー:c

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(theta)(sunatower)(84n)(kusa_hen)


読み終わりました。ハイクラーケン美味しそうですね。 (theta)(09/11 01時28分23秒)

やっぱりおいしいんだ・・ハイクラーケンさん・・ (sunatower)(09/11 01時42分11秒)