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ザクロというのは、本名ではない。
齢八歳にして、彼は全てを失った。
雨に打たれながら、両親のなきがらを埋め、僅かな銭を手元に彼は浮世をさ迷うことになった。
賊か、物取りか、はては、辻斬りか。
ただ失った悲しみが大きすぎて、彼は敵討ちなど考えもしなかった。
ザクロはただ、ただ、悲しかったのだ。

人は悲しくても、腹は空き、腹が空く限りは生きようとする。
身を物乞いほどにやつしても、なおザクロは生きていた。
幼い子供が持っていたのは、執念である。生き延びよとする意思。ザクロの心には、喜びも、憎しみもなかった。
ただ、苦しいと言う思い。未来永劫、救われぬ。そう悟りながらも、ザクロは這いつくばった。

生きよ、なお、生きよ。
この世にある苦しみは万もともしれず、億ともしれず、果てはあらじと思えつつも、それでもなお、生きよ、と。

自分の内側からそんな声がするのだ。
ザクロにはもはや何もわからない。彼は全てを失っている。
あるのは純粋なまでの生への執着。
浮世に捨てられ、望まれること無く生まれた命。
それでも戦い続けるのは、生きている者の意地に他ならない。

オーナー：nitoro

(出典：マーガレット・グラビデポルカ)

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(niv)(kusa_hen)