名前:シームンク
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/虚霊>
 ・召喚剣<10/0/2/2/速熱衝絶/妖霊>

設定:
シームンクは落ちこぼれです。
元々は村の出で、学者になろうとして魔術学校のある都市へとやってきました。
それで魔術学校に親の遺産と下働きで得たお金で入学しました。
彼は普通の若者の如く、ある程度の夢を持っていました。
彼は魔術学校へ入学して、すぐ魔力の検査を受けました。魔力は万人に与えあられている者ではなく、人によって差があるので検査してクラス分けなどをする必要がありました。
シームンクはびっくりするくらい魔力がありませんでした。落ちこぼれです。頭がいいとか関係なく魔力がほぼゼロなので超絶落ちこぼれでした。
魔力が自分にないので魔術学校へ来ても無駄だよ、と入学した直後に宣告されたシームンクですが、遺産も使ってしまったし、都市に着たので引くに引けません。
その世界で学者である、というのはまず魔術がある程度使えることが前提でした。
加えて魔術学校を卒業すれば、社会内である程度の優位が約束されます。
それで落ちこぼれながらも、魔術学校で勉学に励みますが、育ちもよく才能もある良家の貴族達にメタクソな扱いを受けます。
魔術学校に来ているのは、基本良家の人間です。
シームンクが入学できたのは、お金の力と頭が良かったからです。
彼は最初は貴族を見返す気持ちで試験などを頑張りますが、ダメです。
魔力がないので実技試験は受ける意味がないのと同じです。
筆記などでは優秀なのが、また他の魔力が少ない貴族達の反感を買います。
彼は都市で日々働き、学校へ行き、精神をすり減らしていました。
彼が魔術学校へ行くのは、惰性だけではなく、ある女性に惹かれていたからでした。
貴族の出で、才女と呼ぶに相応しく、彼女はシームンクを馬鹿にしませんでした。
彼女に近づこうという思いも相まって、彼は頑張ります。
どれだけ努力しても。彼女の傍にいるのは常に魔力のある良家の男です。彼らを蹴り飛ばすことなど、シームンクにはできませんでした。
やさぐれていたシームンクはなんとか方法はないかと都市内の図書館で魔力を高める方法などを探します。
そんなとき一冊の本が彼の目に入りました。それは失われたはずの「召喚術」に関する本でした。

――召喚術とは、妖精や精霊を召喚する術です。
過去には別世界の生き物を召喚することもできましたが、戦争で利用されたため、その別世界の生き物は全滅しました。
現在召喚できるのはその世界に現存する”神のしもべ”と呼ばれる精霊ぐらいでした。
精霊は自然現象の塊です、台風みたいなもんです。
何もない空間から洪水を起こしたり、岩などの巨体で踏み殺したりします。
彼らには意思があり、魔力と引き換えに契約を結ぶことができます。
魔力は精霊にとって電池です、彼らはその電池を使って、本来存在できない場所で息をすることができます。*サラマンダーなどは雪山では生きられない。
しかし、その世界には精霊は戦争などの人為災害で殆ど死滅しており、また今生きている人間達は精霊と契約できるだけの魔力を失いつつありました。

というわけで、召喚術は今の世界では超強力ですが、使えるやつがいないので伝える人もいませんでした。
需要ゼロの魔法です。
半信半疑でシームンクはその本を読みました。著者はゼフルとされていました。ゼフルは伝説の召喚術師です、先の戦争で「精霊王」と呼ばれ、ありとあらゆる精霊を駆使し、人間を勝利に導いた魔法使いです。
ますます「うさんくせー」と思いながらもシームンクは心の底で何かを期待していのか、本を読み始めます。
そこには世に伝えられていなかった秘儀が書いてありました。
精霊との契約は魔力がなくても行える、と。
ただし、その代わりに己が肉体を捧げなければならないとも、本には書いてありました。
つまり、肉体の一部を精霊と同化させて、そこに精霊を宿らせるという荒業です。
もしその一部がなくなれば精霊は死ぬし、精霊が死ねば宿らせた部位も消えます。
これは精霊側の強い承諾がなければ無理な技です。
魔力で契約する場合、魔力は精霊への賃金です。
お金を積めば、精霊側は黙って働きます。お金がなくなったら精霊はこないだけです。
しかし、肉体に宿らせるとなると、衣食住を与える代わりに生死を共にすることになります。
精霊側からすればリスキーすぎます、いくら契約者の体の一部を好きにできるからといって、メリットが少なすぎます。
というわけで、この方法はほとんど世に残らなかったわけです。実用性が低いし、魔術師も基本安全な魔力供給を選ぶので。
これをみてシームンクは思いました。この手段しかないと。
本の真偽は彼にはあまり関係ありませんでした。掴んだ藁の強度を考える溺者はいません。
彼はすぐさま、荷物をまとめて、話を聞きまわりました。どこかに精霊はいないかと。
都市にいる彼女に釣り合う存在になろうと、貴族を見返してやろうと必死で調べ、聞きまわりました。
彼は知ります。現在精霊は厳かな自然が残る辺境の地に生存することを。
1年中吹雪の止まない霊峰がある、それを聞いたときシームンクはそこに精霊がいると確信しました。
すぐさま都市を出てそこへ向かいます。
厚着をし、地元の村人に話を聞いてシームンクは確信を深め、山を登ります。
聞いた話では6合目を過ぎたあたりから、突然吹雪が強くなるとのことでした。
彼はとりあえず六合目を目指して歩きまくりました。ぜーはーぜーはーいいながら上りました。
やがて六合目につきます。吹雪が明らかに強まっています。が、特にそれ以外注意すべき点はありません。
彼は疲れていましたが、さらに上りました。
7合目、八合目、と頂上に近づくにつれ、やはり吹雪が強まっていきます。
もう前にも進めないくらい吹雪いて「これは無理くせー」とシームンクが挫折しかけたとき声がしました。
「ちょっとアンタ!何登ってきてるのよ!」
甲高い少女の声です。ですが、周りに人影はありません。
幻聴か、不思議なこともあるんだ、とシームンクはなんとか一歩を踏み出します。
「降りろっつってんのよ!この人間風情が!」
急激に吹雪きが強まり、シームンクは吹っ飛びそうになりました、なりましたが吹っ飛びませんでした。
瞬時に、腰に巻いた命綱をピックに巻き、背を低くしてやりすごしました。
とんでもない吹雪は一瞬で、それが過ぎ去った瞬間、ぱっ、と止みました。
「あ、ヤバい」
どこかでそんな声を聞いた、と思うと明るくなった視界の先に青い小さなシルエットが浮いていました。
それは人間をそのまま小さくしたような姿で、耳はとがっており、氷の衣を着ていました。
シームンクははっとします。そう、彼女は精霊でした。
「み、見つけた!」そう言って彼は彼女に飛び掛ります。
「触んなッ!」
彼女を掴もうとした瞬間右手に熱さを感じました。みると、手に霜が降りています。
冷たすぎて逆に熱さを勘違いしたようでした。反射的に手をひっこめ、シームンクはうずくまります。
「八合目まできたのはアンタが始めてよ、このスカポンタン。何のつもりで着たのかしらないけど、私は人間が大嫌いなの、さっさとこの山を降りなさい」
「契約・・・だ・・・契約をしにきた!お前の力が欲しい!」
シームンクは叫びました。己の感情のおもむくままに。
すると、彼女は笑いました。
「は、アハハハ、あんた、アホじゃないの?契約ってのは精霊と対等の立場の人間がするのよ?あんまり私をナメないでよ、アンタ魔力ないじゃない、馬鹿にしてんの?」
[「ここまで登ってきたことはそりゃぁ人並み外れてるけど、もう立っているのもやっとでしょ。下まで吹き飛ばしてあげるわ」
「俺には・・・俺には魔力はない!そりゃわかってる!だから、俺の体の一部をお前にやる!」
シームンクの放った言葉に精霊は一瞬固まりました。
「頭でも!腕でも!足でも!どこでもくれてやる!だからお前の力を俺に貸してくれ!」
「・・・吹き飛びなさい」
シームンクは彼女の放った全力の吹雪で山のふもとまで吹き飛ばされました。
ふもとに落っことされたシームンクはなんとか生きてました。彼は悪運だけは強いようでした。
村の人に拾われ、彼は英気を養いました。村人から「精霊様にあうたのか、さからっちゃいけねぇ」などありきたりな警句を投げつけられましたが、シームンクは再び山に登るつもりでした。
そして、数日後再び山に登りました。
八合目、そこで彼女は待っていました。
会うや否や、彼女は吹雪を全力で飛ばしてきました。
彼は背を低くしましたが、吹っ飛びました。
吹っ飛びましたが、また登りました。根性比べでした。彼女とシームンクとの。
何度ものぼり、何度も吹っ飛ばされ、日が暮れかけたとき、吹雪が止みました。シームンクの勝ちです。
「・・・馬鹿馬鹿しい。好きなだけ身の上でもなんでも喋りなさい。私は契約は絶対にしないわ」
「・・・どうして人間を嫌う?」
「・・・そんなこと決まってるじゃない、連中が自然を壊すわ、生き物を殺すからよ」
「そうか、ならお前はお前はつい最近生まれたばかりの精霊なんだな」
「な・・・」
精霊とは自然の結晶です、自然の力が凝固して生まれたのが彼らで、自然に発生するものです。
シームンクが彼女を何故生まれたてかと思ったのかというと、人間を嫌う理由に「戦争の道具にしたから」という答えを出さなかったからでした。
年季のある精霊なら、人間が精霊たちを道具にして死なせた事を知っているはずでした。
加えて、そういう情報が入ってきてないということ。彼女の口調から察して友達がいないことをシームンクは察しました。
「お前はこの山から一度も降りたことがない!そうだろ?」
「加えて俺と同じで友達もいない!そうだろ!?」
「うっるさいわねぇ!」
彼女はもう一度シームンクを吹き飛ばしました。
今度は運が悪く、崖の方へシームンクは飛んでいきました。間一髪、片手でがけっぷちを掴みます。
そこへ彼女が飛んできました。
「二度と契約したいなんて口にしなければ助けてあげるわ」
崖っぷちのギリギリでシームンクはぷるぷるしながら言葉をつむぎます。
氷だからアイシア!アイシアでどうだ!」
「・・・は?何言ってんの?」
「お前の名前だ!どうせ名づけ親もいないんだろ!俺がお前に与えてやる!欲しいモノはなんでも!」
「・・・そう、死にたいようね・・・」
「お前はこの山の外の世界を見たことがあるか!」
「吹雪のない山の上から夕日をみたことがあるか!」
シームンクの叫びに、彼女は固まりました。
「草原に茂る花々をみたことがあるか!」
「活気ある人々の生きる市場をみたことがあるか!」
「この世にあるまだ知らない未知なるもの、その全てをここから出て見たいを思わないのか!」
「俺が、お前の目になってやる!お前に世界を見せてやる!」
「この山の外へ、お前を待っている広い世界へ、俺がお前の目になってやる!だから、頼む・・・!」
「俺の目をくれてやるから、力を貸してくれ・・・!」
「・・・・・・・殺すのも、馬鹿馬鹿しいわ」
ふっと肩を落として彼女は言いました。
「アイシア・・・アイシアねぇ・・・もっといい名前はないの?人間のセンスには、ほとほと呆れるわ」
彼女がそういうと、シームンクの足元から吹雪きが吹き荒れ、崖の上へと吹き飛ばされました。
どさっ、と雪畳のうえに打ち上げられたシームンクを彼女、アイシアが見ていました。
「丁度、丁度よ。山にいるのも飽きたから少しだけ貴方に付き合ってあげる。いいこと?私が下界に満足したらこの山に必ず帰しにくるのよ。わかった?」
シームンクは喜んでちょっとだけその場で踊り、彼女を自分の右目へ迎え入れました。
こうして、シームンクは召喚術師としての第一歩を踏み出したのです。

第一部完。


オーナー:nitoro

(出典:召喚師の宴)

評価数:3
(suika)(アスロマ)(悪鏡)


読みました。面白かった。
ぺロッ、これはアイシアの嫉妬から悲劇になってしまうフラグ! (アスロマ)(01/26 10時40分53秒)