名前:行科 宮 【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:1
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/ミックスピザ>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/マトリョ模様のヘルメット>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/サイドミラー>

設定:
───行科宮は気づく。

自分が今ピザをいつも通りのルートで宅配している筈だった事と、
自分がまったく見知らぬ土地を走行している相反する二つの事に。

殆ど無意識に走行する事はあっても、道に迷う事は無かった。
そもそもこの界隈で通ってない、全く見知らぬ道なんてあるはずもなかった。

バイクを止め、辺りを見回す。知らない道。家。空気。
曖昧な思考を振り切るように思わず頭を振った。
闇夜に吐かれる行科の吐息だけは白く、確かだった。
「ああ、クソ」
そう呟いても事務的とも無表情とも言えるツラを変えず、携帯を取り出し開く。
自己の認識と携帯のディスプレイに映る日付に深刻な差異を認め、そこでようやく行科は眉を顰めた。
何かが起きた。失職する恐れがある何かが自分に起きた。

宅配用バイク後部のハッチを開ける。
ピザがある。まだ暖かい。せめてピザの実在を、自分の正気を確かめたかった。
時間の事は判らないが、とりあえず来た道を戻ろう。

走り出してすぐの交差点、左手に人が歩いているのが見えた。
人、人だ。久しぶりにまともに他人を認識した行科の脳が判断力を低下させる。

視線を通常より長くそちらに向けてしまった。



衝撃。
視線の先、左前方。女性、いや、女の子が歩いている。
悲鳴。
びっくりされている。誰に?多分俺かなぁ。
前を向く。

「あっ」
正面にもう一人女性が居た。転がっていた。
「やった」
思わず呟く。歓喜の意味ではなく、自分が起こした事を自分の脳に落とし込むために。
行科の脳はそれほどまでに他人に対して鈍化していた。
左手に居た子は、まあ予想通りのビックリしてます!としか言いようの無い顔をしていた。


「はは、どーも」
バイクから降りて、左側の女の子に調子良く、この場には至極不適切な明るい笑顔を見せる。
行科の左手には綿飴のような光がくっついた棒が、右手には黄金十字の剣がいつの間にか握られていた。

行科は倒れ臥す女性に近寄り、ためらわず黄金十字の剣を突き立てた。また女の子から小さな悲鳴が聞こえる。まあ、ぱっと見追い討ちだ。
「すいませーん大丈夫ですかー、だいじょーぶっすよねー」
十字剣の刺さった女性を無理やり仰向けにして、光る綿飴を無理やり口に突っ込む。
へたり込む女の子に向かって(腕にぐったりとした人間を抱えていなければ)爽やかな、社交的な笑顔を作って
「あと、どっちでもいいんでこの辺の地図教えて欲しいんですけど……」
笑顔とは対照的なひどく事務的すぎる蘇生処理を行いながら、行科は現在地とピザの事だけを考えていた。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:1
(kusa_hen)


名前:行科 宮 【ぶらり湯けむり夢気分編】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:1
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/まるっこい娘>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/しんでるっぽい娘>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/列車に映る俺>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/ガタンゴトン>

設定:
http://stara.mydns.jp/upload/up/sennya2.jpg


なんか弁当多くない?
いやまあいいか。今から何時間だっけ?うわー、超遠いなあ。

お菓子についてはその、それそれ、おい何食ってんだ食うなくーうーなーよー
あーあーあーあの駅限定だったのにー

あー久々に喋りすぎて頭痛くなってきた。テンションわかんねー。

うん、うん。
あー、まぁねぇ。

まあなぁ、俺ら以外に乗ってるのは居ない…
居ないよな?居るはずもないんだっけ?本当に?


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:1
(supply)


名前:行科 宮 【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/本棚本棚本棚>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/おやつだらけの買い物籠>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/売店のおねえさん>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/冷蔵庫冷蔵庫ア>

設定:
むちったお姉さんは私の風体をちらりと眺めて一言。
「お見舞い?ですか?」
確かに私が入院してる様には見えないよねぇ。疑問系なのってもしかして私顔色が悪い?まあ仕方ないよねぇ。

「ん〜、付き添い、かなあ?」とりあえず起こったことを掻い摘んで説明してあげる。
「はぁー、それは……災難?ですね。」
お互い何とも言えない表情で肩をすくめた。
まあ赤いおにいさんにも私にも、災難と言えば災難だから。

誰だって首なしライダー……もとい赤い人が普通に立ってたらびっくりするし
あまつさえ一緒に病院に連れてこられちゃったら、やっぱり戸惑うよね。
まあ一番の被害者は事故ったお兄さんなんだろうけど。

「帰っていいのか、よくないのかも良くわかんないし、とりあえずうろうろしてたんです。」
お姉さんはううん、と僅かに首を傾げ、何かを考え始めた。視線はお菓子棚。
しかし手は動いてないのに、いつの間にか籠の中身は増えていた。
ほんとうに何時の間に……
「じゃあ、私のお見舞いでもして時間潰しちゃう?お菓子がちょっと足りないかもしれないけど…」

「えっ」
それで少ないの?


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科 宮 【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/堂々巡り>
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/鼓動>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/思考停止>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/体温>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/何も見たくない>

設定:
『きょうはのらないで』
てまりの背をさすりながら、八は先程別れた、自分を跳ね飛ばした男の事を思い出していた。
「……?」首を傾げる。足元のてまりが嗚咽する。
とりあえず八は一緒にしゃがんでてまりを撫でてやる事に専念した。

---------------


宵闇の中を、風を切ってバイクが進む。
対向車どころか通行人も他の車も見当たらない異常事態に、漸く行科の思考が動きを取り戻す。
路肩に停まりまた携帯を開く。
ディスプレイに映った時刻は先程とはまた違った異様な時刻だった。

軽く舌打ちして、GPS……地図機能を始動すべくメニューボタンを押す。
……と同時に着信が掛かってきた!指は止まらず思わず非通知の着信を取る。

「……もしもし?」
呼びかけてみるが、スピーカーの向こうからは何も帰ってこなかった。
10秒待ってやったが一向に喋らない。行科は舌打ちして通話を切った。今この状況で長々と相手が話し出すのを待ってやれる余裕なんてものは、行科には無かった。


GPS機能は結局動かなかった。
行科はバイクを走らせる中、先程の電話を切った事を後悔した。
そもそも携帯圏外になっている中、どうして掛けてこれたのか、それとも単に奇跡的な電話だったのか。
「ああクソッ!!」心からの苛立ちを久々に口に出す。

30分ほど走り回ったところで、一向に風景は変わらず住宅街だった。
住宅街としてこんなに静かなのも、人気が無いのもおかしい。何より広すぎる。


「はぁぁぁ……」大きく溜息を吐いた。
ピザが冷める。まずはそう思ってしまうのがアルバイターの悲しき性だ。
「何処なんだ、ここ」ハンドルに項垂れる。

「……っ!!」
ふ、と自分の足元が曖昧になったような気がした。「んだよ、気持ち悪りぃ……。」
おぞましい感覚に足を思わず払う。……闇が深すぎる、周りが暗すぎただけだ。そう思うことにした。
しかし暗闇と静寂は、少しずつ行科の精神に悪影響を来たしていた。
「どうしてこんな事、ばかり……」思考が次々と口から零れる。
「真っ暗だ」「普通の生活がよかったのに」「本当に、誰もいない」「……俺はどこに行くんだ?」


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科 宮 【ぶらり湯けむり夢きぶん編】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/ようこそ聖域温泉へ>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/メイデア>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/ブラインダ>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/ヒーティア>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/3人の瞳>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/どこへでも行ける切符>

設定:
今日日水曜どうでしょうでも無いぞ、3日電車て。シャワー設備が無ければ即死だった。
とりあえず俺たちは漸く目的地に着いたわけで……温泉に、やって来た訳で……。

勿論目的は温泉だけじゃないんだがね、俺もこの娘達も。



ホームを道なりに歩いていくと、陽光燦々と降り注ぐだだっ広い通路に出た。
壁も床も柱も、足跡着けたら雑巾にされちまいそうな程白く輝いている。材質はなんだろな?大理石?ヒュー。

高所にでもあるんだろうか。涼やかな風がごうごうと廊下へと吹き付ける。

「風、強いね!」桐来がはしゃぐ。どうしてお前は手ぶらなんだ。でも服は変わってる、謎だ。
「ホント、飛ばされちゃいそう!」てまりちゃんそれはな……  ううんなんでもない……。
ああ、前髪が風に吹かれて鬱陶しい。オールバックは似合わないんだよなぁ俺。切ってくりゃよかった。



数分歩く。途中お土産ショップでまた時間を食われる。お土産の一部はその場でてまりに食われる。
そして、廊下よりも幾分狭いエントランスホールへ辿り着く。

温泉マークののれんが天高く掛かっている。
その直下に胸にマトリョックスマークの着いた和服の女性が……女中さんのようだ、だがその容姿は人間のモンではどうやらない。
全パーツ球体間接。
左の耳からは放射状に広がる金のアンテナ。
左の目から頬にかけてはチェレンコフ光的な青のライン。
顔上半分はメタリックブラック。どう見てもロボだこれ。

「ようこそ聖域温泉へ!私当館のご案内を務めさせて頂く『メイデア』と申します」
恭しく、深々と礼をする、きっと45度ぴったりなんだろう。

「当館の利用は剣士とそのお連れ様に限らさせて頂いております。」
「その為、お客様方にはお手数ですが、簡単な《ボディチェック》をさせて頂きます。」

荷物をできる限り隅に置く俺と静原。この後の事は大体予測がつく。
荷物の無い桐木はぴょんぴょん飛び跳ねている。準備運動か?

「私メイデアが、特定のテンプレートに基づいた構成を提出させて頂きます。お客様にはそれを討ち破って頂くだけの簡単なチェックで御座います。」
俺は思わず盛大に溜息を吐いた。
「それでは剣を御取り下さい。」
構える女中ロボの手に剣が生成される。ああ、やっぱりね。やっぱそーなっちゃうか。クソめんどくせぇ。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:1
(piyo)


メイデアかっこいい! (piyo)(03/09 00時15分36秒)

名前:行科 宮 【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/こきゅう>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/わたし>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/びょうしつ>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/あなた>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/めいろのようなびょういん>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/めいにち>

設定:
もぐもぐとアルフォートを咀嚼するてまりはどこか小動物っぽかった。
「明日かぁー。」
残念だった。なにしろお兄さんはまだ目覚めない。

病室には私たち3人しかいない、このままじゃ死体もどき2人だけになってしまう。それは病院として不健全だと私は思うぞ!つまり寂しいぞ!
そんなのが顔に出ちゃったのか、てまりが困ったようにはにかんで笑う。
「だーいじょうぶだって!明日も来るから。」
てまりは笑顔で私の手を取ると、「だってトモダチでしょ?」
と言った。なんだかテレビドラマみたいだなぁと思いつつ、やっぱりうれしかった。

へらへらと笑顔を返す。
このお兄さんが血だるまになってからお友達はできるし雨風のしのげる所に居れるし万々歳だ。
ぶっ飛んできてくれてありがとう名も知らぬお兄さん。
お兄さんの命と引き換えに友情……っとっとっと死んでなかった。起きてほしいんだったよもちろん!

「早く、目が覚めてくれるといいね。」
てまりの笑顔は優しかった。
その笑顔がうれしかったので、頷きながらアルフォートをもう1包み開けてあげた。
ついでに口まで突っ込んであげた。

「(もがもが)」
もうひと包み。
「(もががが)」
もいっちょ。
「(もぐもぐもぐもぐ)」
おお、余裕の表情……。



そういえばてまりは何で入院してるんだろう。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科 宮 【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/秒速>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/X軸>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/Y軸>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/Z軸>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/パラレル・ダイナミック>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/現実とは>

設定:
(ああ、バイク弁償させられるんかなぁ、困った。)
耳は足音を察知すべく研ぎ澄まされていたが、相変わらず心は別のところにあった。
この街は家には誰もいない。どこの家にも誰も居ない。
俺がピザを届ける先じゃなくてよかった、不在は面倒だから、と行科はひとりごちる。


足音が近づく。
出来得る限り音を殺して深呼吸。


-----------------------------

「え……」八は思わず目を疑う。
「……?」
八の手が背中から離れるのを感じ、てまりも漸く顔を上げて、小さく叫び声を上げてまた顔を伏せた。
眩しい!?闇に慣れきったてまりの視神経が悲鳴を上げた。
「え、昼?朝?なにこれ、目がー目が〜……」
両手で顔を覆いうろうろする八を放っておいてゆっくりと目を慣らし、顔と瞼を上げるてまり。
朝だ……一瞬で、世界が朝になってしまった。


朝になったからってなんだというのだ。てまりは動く気になれなかった。
疲れた、ほんとうに……

「ねぇ、あなたたち。」背後から、声が。
てまりが体を大きく震わせて慄き、八が声の方に超スピードで振り向く。
その勢いにややたじろぎつつも、確かにこっちに手を振る姿があった。
ああ、声が!!人が、やっと生きてる人に出会えた!!行き詰まったてまりの心にも光が射す。

栗毛のセミロングヘアーにミニスカートにマフラー、黒タイツ、ローファー……女子高生である。
あついあついと呻きつつマフラーを外しながら、陽光を背に此方に歩いてくる。
右手にはびしょぬれの傘があった。

「うげっ、死体だ。うわー、この辺にも出たのか……危なかった。」少女は足元の塊に驚き飛び退く。
「うわぁーーーん!!」「うわ、ちょっと!」
飛び退いたところにジャストタイミングで涙目のてまりが速度と質量を伴って突進する!
「げぶっ」バランスを崩した少女はてまりを支えるように尻餅をついた。



泣きながらしがみつくてまりを何とか制し、お互いは軽い自己紹介を終える。
と言っても少女は名前以外の一切を明かさなかった。
自分を「ボーティーズ」と呼んで欲しいと言う事以外は全てひ・み・つとはぐらかすのだ。
二人はまず現在地について激しく質問をぶつけた。
ここは何処なのか、何処に行けば何処に着くのか。


「ん?ここは何処にでも行けるんだけど。」
「だから、そうじゃなくってぇ!!」
てまりの感情がオーバーフローしている。八は後ろからぎゅっと抱きしめててまりを静止させ、話の続きを促した。
「どこへでも行けるのよ、本当に。あなた達そのためにここに居るんじゃないの?……ああ、そうか、君達は巻き込まれ型なのか……。」
ふんふんと一人頷くボーティーズ。八はなんとなく何かを考えているようで、てまりの方は全身から?マークを溢れさせんばかりの困惑っぷりだ。その二人を意に介さずボーティーズは語り出す。
「……まぁ、とにかく、ここは何処へでも行く事ができる。全ての可能性へ辿り着ける。」
ここは第なんとか階層全てと繋がる空間で、云わば自分はその空間を自由に行き来できるうんたらかんたらで、望むところ全てへうんたらかんたら、君達は多分誰かの転移に巻き込まれたんだろうとか、つまり君達も何処へでも行けるとかなんとか。てまり達には理解し難い説明を等々と続け、もちろん自分の肉体は変わらないから、あんまり無茶なとこ行っても死ぬだけだけどね、と最後に付け加えた。
てまりと八は気が抜けたようにぽかんと口を開けて聞いている。サイコかこの子は。

二人の視線をあえて見なかったことにしてボーティーズは続けた。
「戻れないって……本当に、君達はそこへ、帰りたいのかい?」ひひ、と白い歯を見せて笑う少女。
「そうです!!だから、ずっと歩いてたのに!!」
てまりが激昂するのを横目に、八だけはなぜか得心が行ったように手を打った。
訝しげに八を見遣ったてまりを尻目に、ボーティーズが立ち上がってスカートの埃を払う。


「じゃ、私はもう行くけど最後に一つ注意しておくよ。」

「時々、私のような人間を殺しに来る奴がいるんだ。」
ちらりと隅っこの死体を見遣る。「馬鹿みたい、お前らをどうこうしようってワケじゃないのに……。」
ボーティーズの表情は、怒りや哀れみというより、道路に落ちてる軍手を見ているといった感じだった。
わけがわからないし興味もないといった面持ちである。
「君達も気をつけるといい。凄い勢いで向かってくる奴が居たらそりゃ敵だ。中には人を殺したいが為に留まってる奴もいるしね。」
その言葉に不安げに怯えるてまりの頭をボーティーズがぽんぽんと撫でて微笑む。
「ま、君達なら大丈夫。」
わしゃわしゃとてまりの髪をくしゃくしゃにして、てまり達に背を向けて歩き出す。


「また会えたらいいね。」
一度此方を振り返ってふふ、と微笑む。
八だけが能天気にボーティーズに向かって手を振っていた。


-----------------------------
登場人物:ボーティーズ
世界の階層を渡り歩くことのできる少女。名前は偽名という事以外は一般的な女子高生。
今まで居た階層に飽きたので別の階層へ行く途中にてまりたちと出会う。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:1
(utsm4)


名前:行科 宮 【ぶらり湯けむり夢きぶん】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/熱湯!!!>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/河村風呂>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/熱湯スタン風呂>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/心の壁を解き放つ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/心理迷宮>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/ヘブンズドア>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/絶対のマチェット>

設定:
三者三様の思いがあった。
重大な使命か、ただ遊びに来ただけか、運命の悪戯か、それともマーガレットの導きか。

http://stara.mydns.jp/upload/up/bura81.jpg
http://stara.mydns.jp/upload/up/bura82.jpg


巨大すぎる扉がそこにあった。

マーガレットの従者たらんと己に剣の翼を咲かす乙女のレリーフ。
その足元に剣の花が咲き、数多の剣がドアの枷となる。
全ての剣を射抜いて尚絢爛とそこに在る螺旋の剣は何の象徴か。

桐木八はただそこに居た。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科 宮 【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/断罪>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/無期懲役>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/過剰防衛>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/受容>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/拒絶>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/絶対暴力>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/生への逃避>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/ああ美しきは>

設定:
----------------------------------

闇夜の中に自分の心音だけが鳴り響く。
高速二刀。自分の心音がひどく煩く感じる。
見敵のその瞬間に全てを終わらせるべく。ああ、この心音は敵にも聞こえているのだろうか。

マチェットを研ぎ澄ます。比喩的な表現ではなく、自分の心に従ってマチェットは薄く、清く研がれていく。

足音が近づく。
あと何mかはわからない。有効範囲だけを勘で探る。

止まる。剣の届かない所で相手の足音が止まる。
ああクソ、そうだった、相手ボウガンじゃねーか……。

----------------------------------

少年と私の間に沈黙が流れる。
沈黙が流れる。
沈黙。

おお、この少年なんて死んだ目なんだ、目だけで言ったら私のほうが生きてるんじゃないのかな?しかもさっきからぜんっぜん何も喋ろうとしない。やりづらい。気まずい。てまりまで黙っちゃってるじゃん!誰か何か言えよー!!
じりじりと日差しだけが3人を焼く。……憔悴しきりのてまりのためにもこのまま此処に留まっているわけにはいかない。
「よし少年、まずは後ろに下がってみようか。」言葉に従って後ずさる少年。
「ナイフ、右のほうに投げて。」素直に投げる。従順さよりも無気力さが見て取れた。
さて、どうするかな?
てまり?

----------------------------------

次の世界は楽しいかな?
へへ、さっきの子たちが自分の望む世界にいけますよーにっ!

----------------------------------

何が起きたんだろういま何がおきているんだろうどういうことなんだろう私家に帰りたいよ、本当に帰りたいの?どこでもいいんじゃないの?あの子は何を言いたかったんだろう?どうしてどこにもいけないんだろうわたしどこにいきたいんだろう八はなんで剣なんて持ってるのかなこの子は誰なのなんで私たちを襲うのかなどうして私がこんな目に遭うんだろう罰かなぁ罰なのかなぁ私わたし私がわるいのかなわたしが私がいるから私なんてやっぱり私どこにもいけないでこのまま死んじゃうのかな熱い、太陽が暑い、熱い。怖いぜんぶ怖いここがどこかわからないこともどこにもいけないこともたとえどこかに行けたとしてもずっとなにもかわらないで私は、わたし私嫌嫌嫌嫌全部

----------------------------------

何もかも嫌になって何処にも行きたくなくってただ今ここに居たくなくって気づいたらここに来て
つい、<censored>ちゃって、案外、楽しいかなって、だからついもっと<censored>たくなってずっとここにいた
でも突然終わった。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科宮は…【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/>

設定:
私達は少しの間見つめあった。
元・赤い人は私を数秒見つめて、まず口がぽかーんとマヌケに開いた。
ぼやけた目の焦点が、私の瞳に結ばれるのが何となくわかった、ヤッダーちょっと照れる。
それから、なんともいえない、笑顔とも、泣き顔ともとれる表情の動き。あの事故の日とは別人のように表情が静かにくるくると変わっていくのが良くわかった。
このおにーさん、まだ寝ぼけてるんだなあ、ああ、そうだ、私の当初の計画がついに……!!

ちょっと大仰に胸に手を当てて息を吸い込む。
称えよ!ならぶことなき我が名を称えよ!なんちって!
「き・り・き……さん」吸い込まれた息がびしっと肺の中で固まる。
私の名前を知ってる!?えっ、何、どういうこと!?脳に高速ダブルスタン!
唇がわなわなと震えるのが判った。知っている?私の事知ってる?どうして?
謎の人物は、何か輝く目で私を見ている、もしかして、私が知らないこの人が、私の過去を。
思わず立ち上がって身を乗り出す。弾かれた椅子が乾いた騒音を立てた。


だが不意打ちすぎる運命の出会いは即座に勘違いだと知る。
「あ、いや、ほら、横で名前が聞こえたから。」
お兄さんはへへ、と俯いて苦笑を浮かべていた。
はひぇ、と名状しがたい音を出して今まで停止していた呼気が一気に漏れ出す。
……あぁ、淡く爆発的に灯った期待はそれはもう跡形もなく散るもんだぁ。

へぇ〜っと思わずもう一度溜息をついてしまった。
「なんだ〜、私の知り合いかと思って期待したのに〜。」おっと、ちょっと不自然な事を言ってしまったかな。
お兄さんはなんでか知らないけど、軽く……首を横に振った。
「───」
何事か呟いたようだけど、聞こえなかった。

「俺は行科 宮って言います。……ありがとうございます。」
「え。いえ〜……」
へへへ、ちょっと順序は狂ったけど予定通り。私は喜びポインツをゲットした!
「……行科、宮……」
ぽつり、噛み締めるように、もう一度行科と名乗ったお兄さんは笑顔だった。
俯いて、笑顔のまま泣いていた。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科宮とてまりと眼鏡A【ぶらり湯けむり夢きぶん】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/死の欠片>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/眼鏡A>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/覚醒テマリー>
 ・召喚剣<10/0/0/3/絶絶速速熱/時間>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/瞬間>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/熱量>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デスレア>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/鏡海面>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/扉の向こうさらに向こう>

設定:
http://stara.mydns.jp/upload/up/sen11-2.jpg
http://stara.mydns.jp/upload/up/sen11-3.jpg


開かれた扉の向こうへ。急く心は次第に足も急がせた。
この先に、何があるのかなんて、知った事じゃあない、いや、知っているのかもしれないが。
そして俺は少しだけ先の思考にリソースを回しすぎたようで。

何かがいる。気づけなかった。圧倒的に自分は遅かった。
足は既に闇を、相手のテリトリーを踏みしめ、敵は既に数多の剣を振りかざし威嚇していた。
メイドロボが、死の闇を無理やり人の形に拵えたような悪趣味な人形が目の前に。
この思考のラグから来る死の香りに、記憶の奥が不快に疼いた。

脳に直接警告が届く。停止せよ停止せよ停止せよ停止停止停止停止。
神経に直接叩き込まれた言葉が肉体に影響を及ぼす。呼吸も何もかも、心臓以外が全て止まる。
凶剣の切っ先が眼球から進入し、視神経から伝って全て、存在も何もかもを圧倒的に侵略し滅し尽くす。行科宮は死ぬ。
警告として先行して送られてきたビジョンが数瞬遅れて、現実になる。
切っ先が瞳に届く。


届かなかった。
ぶるぶると振動する黒人形の後頭部に剣が刺さっていた。
「……てまり?」
剣の飛んできた方角を見ると、息を切らすてまりが居た。
お互いが言葉を交わす前に、てまりは再度オーロラメモリーにアクセスする。
10/0/0/4/熱熱衝衝/
暗闇の後頭部に向かって衝撃剣をひたすら投げつける。
数本投げたところで、暗黒は全ての暗黒剣と共に散り散りに吹き飛んだ。

「行こう!!」てまりがさらに奥に向かって走り出す。
やべぇワケわかんねえ!!思考も展開も何もかもから置き去りにされつつ、とりあえず俺も走り出した。

先ほどの雰囲気とは似つかわしくない、その辺の銭湯と錯覚するような建物に辿り着く。
マッサージチェア完備の脱衣場を走り抜け、湯に煙る引き戸を乱暴に開け放って中に入っていくてまり。扉横の看板には『再構成温泉』と書かれていた。
まあ、良くわからん風呂に入るのもなんだから(そもそもてまりは服すら脱いでない。俺が居るのに脱がれても困るが。)じっくり効能を眺めていると、てまりと、知らない男の叫び声が木霊した。
「てま…  うげぶ!」
慌てて風呂場に顔を覗き入れると腰にタオルを巻いた眼鏡の青年(おおよそさっきの修学旅行生のうちの一人だろう)が飛び出してきた!
鈍い音を立てて俺にぶつかる眼鏡野郎。何だこの嬉しくないラッキースケベ。

「痛……。」呻く俺と眼鏡。
風呂場の奥ではてまりが顔に手を当てて、指の隙間からコッチを見ていた。
古典的だぜてまりちゃんよぉ。どうせなら俺は女の子にぶつかられたかったんだけど。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:行科宮【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/みやくん>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/ねえどうしたの>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/みやくん>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/いっしょにいこうよ>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/おねがいだよ>
 ・召喚剣<10/0/0/3/絶絶速速熱/みやくん>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/かおをあげてよ>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/みやくんみやくんみやくん>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/こっちをみてよ>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/どうしたの?どこかいたいの?>

設定:
一度大きく息を吐く。その吐息に魂でも混ぜ込んでしまったかの様に、熱い熱い溜息を。
視界が酷く揺れた。久々の感覚、死んでる間には久しく覚えなかった眩暈。
まるで生きているようだ、やはり。
だが感慨に耽る暇も無く、太陽は尚もてまりと八を思考ごと灰にせんと照り続ける。
「てまり。」呼び掛けに、応えるものは無かった。
己の声も幽かになる。時間が無い、私にもてまりにも、きっと、多分あの男にも。
異常な空間、原因の元へ、心当たりのあるあの男の下へ行かなければならなかった。
急すぎる体力の低下、太陽の熱が逆に自分たちの熱を奪っていく様だった。

「てまり、あのひと──バイクの。」
異常な熱が、まるで心臓から火葬が始まったような不愉快な熱が沸き起こる。ああ、これは拙い……
八はその場に座り込んで、近くの民家のドアを指差した。声を出す気力も急速に奪われていく。
それでも何とか振り絞る。此処が本当に何処へでも行けるなら、行けるはずだ。
「───。」
でまかせだった、ただ、てまりの心に指標を刺す事だけが目的だった。
てまりは、見ているだろうか。聞こえただろうか。




倒れ臥す二人をゆっくりと確認して、女が日傘を閉じ、踵を返して何処かへ歩いていった。

----------------------------------------------------------------
つづき
http://stara.mydns.jp/upload/up/sen12.txt


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:1
(utsm4)


名前:死体と生きる屍と生き過ぎる人【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/絶絶速速熱/>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<5/0/0/4/鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/>

設定:
「ここで」
八が二人に振り返り、マジシャンのように大仰に手を広げた。
「行科君が、この滑り台に、ぐわっしゃーん!ってつっこみましたー。」
てまりがくすくすと笑い、宮がばつが悪そうに苦笑する。

前衛的に捻くれ曲がった滑り台の周りは一本のロープで囲われ、
『危険なので使用しないように』と簡単に書かれた張り紙がぴらぴらと風に揺られている。
実に簡単なものだった。

八がロープを乗り越え滑り台の天辺に立つ。
てまりがおやつのサラミをぽいと投げるとすぐさま猫が走って寄ってきた。
宮はそのうちの一匹を捕まえて、ぐにぐにと撫で遊んだ。

何の共通点もなかった三人が、宮の事故で無理やり繋がっている事に、三人とも内心感謝していた。
結局宮はピザ屋のバイトをクビになり二人とつるむようになって、八はてまりの家に転がり込み、三人で楽しく時間を消費する。てまりはそれで心の平穏を得ている。孤独が縒り固まって一本の不恰好な糸になっていた。
お互いにお互いに対して言い知れぬ違和感を抱いてはいたが誰も口には出さなかった。
これまで三人の間では驚くほど何も無かった。ひたすらに遊んで、笑って、楽しいと言える時間を作成するよう尽力していた。
三人ともせめて今だけは依存していたかったのかもしれない。いずれは壊れてしまうかもしれない関係だから、と思っていたのか、どうなのかは定かではないが。

誰も過去を語らない。てまりは自分の為に語れず、宮は過去を失って、八には語るべき過去もなかった。
行科は自分がなぜ桐木八の名前をあの時口に出来たかも、涙の理由も解らないでいた。
桐木は少しずつ、自分の身体に違和感を覚え始め、少しずつ己への疑問が生まれてきた。
静原は日々のささやかな幸福を飲み下しつつ、常に這い寄る自分の内面とのギャップに溺れ沈みかけていた。

凛と輝く月を、八が猫を抱いて見ていた。
三人との日々の中で八の中に少しずつもやもやと、今までになかった感情が沸き起こっている。
八を知るにつれてまりもその変化に気づいて、何とかしたいと純粋に願った。
宮は二人と自分への、何か大事だったはずの、漠然としか見えない記憶に苛立っていた。

違和感が鎌首を擡げ奥底に忘れられた真実が瞬いて、霞がかった現実を晴らさんとする鼓動。
三人は少しずつそれに突き動かされていく。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:真相黎明【ぶらり湯けむり夢きぶん】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/ナイフ>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/ワンワンワン>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/執拗>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/興奮>
 ・召喚剣<10/0/0/3/絶絶速速熱/ざくざくざく>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/絶叫>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/記憶>
 ・召喚剣<5/0/0/4/鏡鏡鏡鏡鏡/脳裏>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/抵抗>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/キリキ>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/ハチ>

設定:
「……」
もうもうと立ち上るむせ返るほどの湯気。浴衣が蒸気を吸ってしっとりと重みを齎す。

待つ間八の身体に厭が応にも視線が行く。別に裸体とかそういうわけではなくて、無数のエグい傷だ。
何故、八にこんな傷があるのか、なぜ生きていられるのか、今までの服装の理由に思いを馳せて眉根を寄せる。
お互いの事は何にも知らなかったが、別に悲しくは無かった。
今日からまた生きていけばいい、宮はそれなりに楽天的な思考を取り戻しつつあった。

ふ、と深呼吸すると少しずつ思考が明瞭になっていくのを感じた。
夢の内容が少しずつ、美しく蘇っていく──夢の手前の事も。
何度も深呼吸を繰り返して咽たところで宮は意を決し立ち上がる。

「……よっしゃ。」
言葉のテンションとは裏腹に勢いよく浴衣の上を剥ぎ取って投げ捨てた。一応タオルは巻いて。
凱旋よりも堂々と湯船に歩み寄り、半身浴になる程度に腰を沈め、目を閉じる……。
思い出さなければならない、というわけでもなかった。
ただ二人のために思い出したかった。
自分の結末を。

記憶を辿る。
---------------------------------------
その頃隣?の風呂場では。

「で、てまりさんだっけか。てまりさんは風呂入らないんですか。」
「えっ。」
「此処の風呂は立ち入り禁止なんですよおねいさん。そんな所に態々来たって事は何か目的があるんでしょう。」
「ううん……と、特には。あれ、でもなんではるりんがここに。」
「はるりん言うなあと携帯仕舞ってください何で構えてるんですかやめて。僕はまぁ……ちょっとアレな事して入ったんだ。」
「チッ。」
「んでまぁ!ここに入ればいろんなものが再構成できるわけですよ。」
「は、はぁ。」
「……身長体重をある一定時期まで復元できたり。」
「!!!!…あああっちょっとなんでそこでニヤニヤするの!?なんなの?!」
「あたたたた。まあメインは空間転移時の構築ミスをオーロラメモリーに勝手に取っておいたバックアップでうんたらかんたら。」
「へぇー……(なんだか聞いた事あるなぁ…)」
「じゃあまあ僕はそろそろお暇させて頂き──おい携帯を仕舞えッ!!」


---------------------------------------

幾許かの時間の後、八が薄っすらと目を開く。
自分の身に掛かった浴衣を見て、八はのっそりと上体を起こす。
顔を上げた先には、フルーツ牛乳を片手に仁王立ちしている行科宮(それも腰にタオル一丁の)が立っていた。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:エンディング【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/絶絶速速熱/>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/>
 ・召喚剣<5/0/0/1/速鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<5/0/0/4/鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/>

設定:

---------------------------------
(ピリリリリリリ…)
(携帯が、鳴ってる)
行科が手を伸ばそうとするが、優しい手に手首をそっと握られる。
ゆうの瞳が微笑んで宮の思考を捕らえる。
主導権は握った。暖かい表情とは裏腹にゆうの心は宮とその周りに沸々と激情に苛立っていた。



皆啼ゆうは剣士ではない。彼女の脳回路はオーロラメモリーに上手くアクセスできない。
だが彼女はその事を不満に思ったことも、悩んだ事も無い。むしろ感謝すらしていた。
彼女は先天的にナイトハンドリングの能力に長けて居た。
幼い頃から誰もが皆、皆啼に傅き、丁重に愛情を持って扱ってくれた。
彼女にとってはマーガレットなど児戯に過ぎず、そんなものに命を賭ける剣士は自分の人生のための便利な駒に過ぎなかった。

遊びに遊んで駒遊びに飽きた16歳の頃、皆啼はようやく駒に対して目を向けてやった。
それから暫くいろんな剣士を使い捨てて見つけたのが疎通剣≪ヘブンズドア≫だった。
疎通剣をある方式で応用すれば、異なる空間へと飛び立てる。
自分の周りを喰い散らかした皆啼には恰好のおもちゃだった。
しかしこの世界のオーロラメモリーはマーガレット・ハンドレッドに対応していない。
皆啼の犠牲になった剣士が、何かしらの事故で空間を渡ってやって来たただの観光客だったのだ。

そしてその新しい駒がある日殺害もしくは失踪してしまった。
というのも、その剣士の自宅にナイトハンドルの維持行為をしようと訪ねて行くと、部屋中血みどろに塗りたくられ、部屋の真ん中に一本の剣が突き刺さっていた。
家は荒らされた形跡がなく、血の量のわりには肉片も見当たらない。
ただ、剣に「禁ずる」とだけ刻印されていた。
皆啼は始めて自分に危害を加えられた事を理解した。
何かが私に反抗している。それだけで皆啼の嗜虐性のスイッチを入れるのには十分だった。



それから可能性のある剣士を探すのには時間が掛かった。何しろこればかりは一人ひとり探ってみないと解らないのだ。
そして漸く行科宮という可能性に辿り着く。
そこからは今までの苦労を帳消しにせんと言わんばかりに、時間を掛けて行科の心を丁寧に磨り潰し、自分に依存させるように仕向けた。
両親を殺させたのは、自分に接近させて心を得るための布石。それ以上でもそれ以下でもなかった。
日に日に人格を失い人形と化す行科を皆啼はにこにこと眺めて楽しんでいた。

途中別の駒と”遊んで”いる所を見られたがそこを上塗りする力が自分にはある。
皆啼は漸く手に入れた別世界への鍵を今また獲得しているのだ。
その満足感の前には、予定外の疎通剣暴走などなんと言う事も無かった。早かれ遅かれこの階層からはおさらばするつもりだったのだし。
だが、何かと邪魔が多かった。あの二人もそうだし、訳の解らない殺人鬼もいる。マーガレットの力というものはなんとも面倒なものか。


此処までの計画の誤動作はひとえに、皆啼はマーガレットを軽視しすぎていたせいだ。
遣り様によってはマーガレットも十分面白い事が出来ると言うのに。
(ベルが止まない。)
皆啼の思考がイレギュラーに対して警報を鳴らす。
この空間の管理人の意思は掌握したはずなのに、音が収まらない。
銀糸のように美しく、細い右手の指先を行科の頬と接触を密にさせながら、携帯に手を伸ばす。
そっと、電源ボタンを長押しして携帯の息の根を止めた───。


ふ、と笑みを浮かべる皆啼が目線を上げる。思考に有り得ないものが、現実に、二人から15mほどの距離に見える。
自分が、ちょっと行科で遊ぶために、罪悪感を作り上げるために引きずり出した中学時代の行科が、携帯電話を片手に此方を見ていた。
そしてその後ろに、動かなくなったはずの死体女を、動けなくなったはずの肉女が抱えていたが。
死体女の傷はどれも塞がっている……まさか、そうか……マーガレット!!
皆啼の幼い貌がぎしりと歪む。マーガレット、マーガレット、どいつもこいつも剣剣剣、馬鹿らしい。
自分の御しきれないところに存在するマーガレットが疎ましい!

「どいつも!こいつも!!なんで邪魔ばっかりするの!!」
咆哮。純然たる怒りが皆啼から溢れ毀れる。
中学時代の行科人形に、排除せよと命令を下す。……が、人形は命令を聞き届けることなく、哀しい目をして地に融けた。
「あああ。あああ……あああっ!!なんなのよ!!折角、此処まできたのに!!」
泣きながら地団駄を踏む。今まで何もかも上手く自分の手のひらにあったのに。
激情に任せ、皆啼は行科の手を取り、瞳を覗きこむ。
ナイトハンドリングを応用し、一時的に行科の力を皆啼自信に付与させる。
お前らそんなにマーガレットが好きなら、マーガレットで死ぬがいい!!

「み、や!!」
擦り切れた喉でてまりが叫ぶ。手を伸ばす。
マーガレットを皆啼に付与するために行科への思考支配が一瞬弱まった。

「五月蝿いッ!!死ねッ!死んでッ!邪魔をするな!!私たちの前から消えなさい!!」
目の前には、いつもと違う皆啼ゆうが。

「み、や……はちが、しん、じゃう」
皆啼を無視して、行科に手を伸ばしながら歩み寄る。
(俺がさっき、跳ね飛ばした子は。ハチって言うのか。)
(死んじゃうのか、俺のせいで。)
「HP減殺ッ!!効果二倍!!高速起動!!便利なもんだよねっ!死んでよこれで!!こんどこそ!!」
(こんどこそ、ってなんだい、ゆうちゃん。)

「助けて!!」
最後の声を振り絞って、てまりが叫ぶ。
言葉が記憶のほころびを貫き、涙が脳の曇りを払う。
「あっ」
行科が声を上げるのと同時に、目の前で八とてまり、二人纏めて剣に貫かれていた。

「……。」
目の前では肩を上下させて荒く息をするゆうちゃんが。
そのもっと前には、団子みたいに連なって串刺しになったてまりと八が。
「ゆうちゃん?」

舌打ちして厳しい目でこちらを見るゆう。
(ゆうちゃんのこんな顔初めて見た。……あれ、俺、今。何考えて。)
皆啼の驚愕と、行科の思考の復活は同時だった。
(しまった、こっちに気を取られすぎた!!)
慌てる心を即座に殺した皆啼は、その瞬間最適な表情を行科に向ける。

「さ、行こう!二人の望むところへ!」
行科の視界情報からは既に死体を始末している。早急に思考の書き換えを進めないといけない。
いけない、いけない、いけないのに。
行科の心に接続できない。


行科は皆啼を見ることもせず、酷く悲しげに微笑んだ後、俯いたまま皆啼に背を向けた。
「俺は、俺の人生を生きるよ。」
「ちょっと。」
「ゆうちゃんはゆうちゃんの人生を生きてくれ。もう、俺の事は、大丈夫だから。」
「話を聞いてよ。」焦りが。

「あなたの両親を殺したのはあなたよ!!どの世界に行ってももう戻ってこないのよ!?」
せめてもの楔を打ち込んだ。確かに、その言葉は呪いのように行科の心を深く抉った。
「でも、でも私と一緒に行けば、私と一緒に居れば宮くんの両親の生きてる可能性のある世界にいけるんだよ!?」
めちゃくちゃな理論だった。だが、皆啼にはナイトハンドリングがある。もう一度、もう一度心に接続できれば!!
だが、行科はゆっくりと首を横に振った。
行科の心は既に擦り切れていた。そこに全く関係の無い二人が巻き込まれて死んだのだ。
思考停止に陥っていた。追い詰めすぎた皆啼のミスだった。


不意に衝撃が皆啼の華奢なボディを3度走る。痛みは無い、が。声も出せず痺れたように倒れ臥す。
いや、実際に痺れていた。此方に気づかず
駆け出そうとするが動かない。動かせない。
行科が、衝撃剣を投げていた。


漸く這いずれる程に回復した時には、既に行科は目の前に突然現れた階段を昇っている。遠い。
「待って!!」
愛情を装うために割り当てた皆啼のリソースが、心が悲鳴を上げる。
「あ、あああっ!あんた、あんた私の駒なのに!!どうして!?私を置いていくの!無視できるの!!」
拒否否定激怒憤怒激昂焦燥消沈孤独孤独孤独孤独孤独。
仮初の筈だった愛情が暴走を起こし、皆啼を狂乱させた。
「置いてかないで!!」

「私を一人にしないでよ!!!」


だが既に行科の背には、その叫びの一切が物理的に耳に入らないようになっていた。
不可視の厚い壁が行科を取り囲む。
視界が白く切り替わる。空間の跳躍を細胞が感じ取った。






光と線の溢れる空間が目の前に広がる。
そこでは空間の橋渡したる機械人形メイデアが、渡る資格のあるものだけを隔離していた。

「ようこそオーナー。お待ちしておりました。」
「いひひひ、遅いよ〜。」
「……。」
セミロングの女子高生?と押し黙って座っている眼鏡の青年が、機械人形の横に立っていた。

「ったくよう、オーナーが良くわからんことになったせいで僕らの移動まで干渉されちまったぞ……。」
「ひひ、そんな事言わないの〜。」
「能天気だなあ君ぁ。」
問答を聞き流す。
暗い男と、皆啼とはまた違った笑い方をする女だ、程度にしか行科は感想を抱かなかった。
二人の無関係な明るさは行科の心には何も波風を起こしすらしなかった。

ただ今は、何をすべきか。
疎通剣の使い方を心が理解していた。
「俺は。」
行科が深く深呼吸する間、メイデアはただ佇み、頬に燐光のラインを光らせ、プログラミングされた瞬きを行う。
「……二人を、俺に巻き込まれて死んだ二人の、生きてる世界へ。」
俯いて二人に思いを馳せる行科に、思わぬ冷淡な答えが返った。
「オーナー。その願いは受諾できません。望まれる世界はオーナーを基準として作られます。」
「……。」やりきれないように、顔を顰める行科の後ろで、眼鏡の青年が口を挟む。
「ヘッタクソだなぁ。元はといえば全部あのクレイジーサイコビッチのせいだろ?」
「……テメェ。」ころころと歪む行科の表情は、ナイトハンドリングの支配下から抜け出してすぐの不安定さを見せていた。
殺気溢れる視線を無視して眼鏡の青年は続ける。
「あの女が存在しない。それ以外はなーんも変わらない世界。行きゃいいんだよ。」
「……なるほどね。」
少しの間俯いて、何かを考えている。

幾許かの間を置いて、漸くメイデアに歩み寄る。
「俺を、皆啼ゆうと出会う前に戻してほしい。そして、皆啼ゆうじゃなくて、あの二人と、生きたあの二人と出会わせてくれ!!」
メイデアの頬のライン、明かりがふっと消える。
「イエス、オーナー。受諾いたします。」
突如ぎゅるり、と背を後方に逸らす。
肋骨から剣が咲き、両の手でそれを引き抜く。
ずるりずるりと、白銀の長剣で出来た背骨を引き抜き、自分の胸に掲げ……貫いた。
そこから爆発的に無機物の結晶が咲き乱れ、燃え広がる炎のように急速にドアを形取った。

(これでいいんだ。)
行科は最後に皆啼の言葉、両親は自分が殺したという言葉を信じてしまった。
そんな事をやり直すなんて、なんだか両親にひどく申し訳ない気がして出来なかった。
一瞬感傷を瞳に浮かべる。……すぐに振り払い、甲高く脈打つドアに扉を触れる。



あの二人を、せめて。
やり直すんじゃなくて、あの二人を……。
行科は扉をそっと開いた。


オーナー:elec.

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:3
(clown)(piyo)(samantha)


お疲れ様でした。elecさんとかけて本当によかったです。最後の最後でしっかりまとめてくれてありがとうございました。 (samantha)(03/30 19時12分25秒)