名前:Dead_or_Undead
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 私が宮と出会ったのは、公園で猫らと臨時国会を開いているときだった……のかな?
 その公園は住宅地の隅っこにある小さな公園で、『ボール遊びをしてはいけません』とかいう割とよく分からない看板が立っている、基本的に子供も遊びやしない、まるでこの土地の値段が高いとされる日本の中で、存在意義を大いにロストしているエアポケット的空間だったのだけれど、まあ当然その公園の存在意義のなさは周囲の有閑マダムたちもご存じで、最近ではよく不審者も現れるともっぱらの噂が立ちこめ始めたりすることから(一日中この公園にいるときもあるけれど見たことないなあ)、どうやら来月に取り壊されることが決まったらしく、在住している私と猫の間ではその話題で持ちきりだった。実際の所はベンチでひなたぼっこしているだけなのだけれど。
 その日も私はベンチで横たわっていて、寝そべった身体に7匹の猫を乗せてボーっとしていたら、突然、衝撃音がカンセーな住宅街に轟く。
 驚いて飛び上がると(7匹の猫はとっくに逃げ出していた。二匹くらいに顔を踏まれた。淡白な奴らである)、少し離れたところにある滑り台が、大いにひしゃげていた。確かに取り壊される予定の全然使われていない滑り台で、利用者といえば時々暇をこじらせて気まぐれに滑ってみる私くらいだとしても、何もそんな風に破壊しなくても。存在意義のなさで言えば、私とどっこいどっこい程度だし、見た目通り実直で素直な滑り台だったのに。(後日、危険なので使用しないように、という張り紙がされるだけで、もちろん修理されることはなかった)
 ちょうど滑るところが酷く折れ曲がった滑り台にめり込んでいるのは、宅配ピザのバイクだった。煙を上げてひっくり返っている。車体後部のボックスからピザの入った紙の箱が飛び出ており、いくつかはサイドメニューか何かのチキンやポテト、コーラのペットボトルと共にそこらへんに散らばっていた。それを点々と目で辿ると、どうやらそのバイクの運転手らしき人が、地面に突っ伏している。
 あっちゃー、と思った。これじゃまるで私が殺したみたいじゃないか。なんて冗談だけれど、そのまま眺めているわけでもないので、近寄って声を掛けてみる。
「もしもーし。おにいさーん、事故りましたよー」返事はない。
 しばらく対応に取りかねていると、近所の有閑マダムたちがそこかしこから湧いて出てきた。私はケータイとか持ってないので救急車やら警察やらは彼女らに任せて、さて私はおいとましますかねー、とその場を立ち去ろうとしたとき。
「……ん」事故った男が意識を取り戻したのか、小さくうめき声を上げる。男は緩慢な動作で両手を地面につき、上体を持ち上げた。
 その様子を見て、思わず変な声が上がる。
 顔面が流血で真っ赤だった。
 なんだこれ大丈夫なのこれやばいんじゃないの。もしかしたらあんまり動いちゃいけないんじゃないの死ぬんじゃないの。というかグロい。なんというアンデッド。うん、まあ、私が言えたアレじゃないんだけれど。
 とか何とか思いながら赤いお兄さんを見ていたら、そいつは「あ、どうも……」とか言って片手をあげる。私含めて周囲を取り囲む有閑マダムらは明らかにリアクションに困っていた。何事もなかったかのように配達を始めそうな勢いだけれど、赤いお兄さんは顔面が真っ赤なことに、というか顔面もそうだし血が垂れて首回りから肩にかけても真っ赤に染まりつつある。こんな人がピザ持ってきたら怖いな。というかピザもエラいことになってるけど……。
 実際の所全く大丈夫そうに見えないので、有閑マダムズの中で、しまったことに赤いお兄さんと一番物理的距離が近い私は妙な責任感を覚えて、とりあえず話しかけてみる。長いものには巻かれるタイプの私である。「ちょっとお兄さん大丈夫?」
「あ、はい、まあ……」お兄さんは何というか、大変素晴らしい目で私を見る。思わず背けたくなるような――と、そこで赤いのの言葉は途切れて、ふら、っと身体を仰け反らせる。やっぱり近くにいた私は妙な正義感に駆られて、ああもう一張羅なのに、お兄さんの身体を受け止めていた。気絶している。そりゃあまあ、あんな混濁した目じゃね……。
 そんなこんなで私は彼の身体を受け止めたまま(というか有閑マダムらがあんまり動かすとよくないだのなんだの言うから身動き取れなかった)救急車やらが到着し、何故か私はそれに同乗して病院まで付き添うことになっていた。多分救急車に乗るのは初めて……かな。
 どことなく、厄介なことにならないといいなー、と思いながら、私はただただボーっとしていた。
「あ、お姉さん、お名前は?」と救急隊員が私に尋ねる。全く身構えてなくて「えっあっ」とか変な声を出しながら、私は、「桐来八(きりきはち)です」と答えた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【現実より】
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
「や、実のところここら辺のこと、ぜんっぜん知らないんだよねー」行科がハネた女性は、彼に抱えられたまましれっと返答する。後に『桐来 八(きりき はち)』と名乗る彼女である。
「え、えっ」それを横で見ていたのは静原てまり。本人曰くぽっちゃりした体型をした彼女だけが、桐来がハネ飛ばされても、誰も何事もなく済まそうとしていることに混乱していた。
「あ、そうなんすか、そんじゃ……」それに対し、行科は用済みと言わんばかりに、桐来を放しバイクのハンドルに手を掛けた。行科がサドルに跨ごうとすると、桐来はそこで初めて行科を制止させた。
「来た道を戻るといいよ。私たちはそっちから来たけど、ダメだった」
「ダメ?」
その返答に答えたのは静原。「ダメでした。ここら辺みたいに、ぜんっぜん知らないところっていうか。おかしいですよね、私、自分の家から、普段使ってる駅の方に歩いてたんです」
 家を出てまだ2分も歩いてないのに、と付け加え、静原はため息をつく。酷く疲労していた。
「かれこれ、数時間くらい歩いてるのかな。あんまり動かない方が良いかも、とも思うんだけれどねー。ま、私はここがどこだろうとあんまり困らないんだけれど」桐来はわざとらしく意味ありげな笑みを浮かべて、ミトンになっているピンクの手袋をした手をパタパタする。ちなみに、真夏ではないが、しかし手袋をするような気候では決してない。
「ケータイもずーっと圏外だし、神隠しにでも遭ったみたいな。どこの家も明かり1つついてないし、他に人もいないし……。もう、ほんとどうなってるの」話しているうちに不安が不安を呼んであふれそうになった静原の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。彼女の手を、桐来は手袋越しに握る。
 行科はいまいち理解出来ていないようで(誰も現状について理解などしていなかったが)、あまり彼女らの言葉を信じてはいないようだった。
 どうしよう、適当に走ってみるか……? などと、行科はボーっと考えながら、衝撃でずれたヘルメットの位置を正す。
「んー、分かった、ありがとー。そんじゃー」そう言って、行科は走り去っていった。しばらくして行科と彼女らは再会することになるが、この舞台には、桐来と静原の二人が残された。
 二人は止めていた足を動かし、「そーいえばさ」と静原は尋ねる。「なんで轢かれても平気だったの?」
 幸い、周囲は暗い。それに桐来は表情をくらませて、「当たり所がよかったんじゃないかな」とはぐらかす。桐来は自分が『死なない』せいだと思っていたが(そしてそれは単なる妄想や空想ではなかったが)、実のところそれも正しくはなかった。
 しばらく、二人はゆっくりと歩いていた。疲労した静原のペースに合わせて、疲れを知らない桐来は、スキップしたり、少し先に歩いてから立ち止まってまったり、落ち着きのないようだった。時折手をつないで歩いたりもした。元来、お喋りの好きな二人であったので、やり取りが絶えることはなかったが、それでも言葉数は減りつつあった。
 二人が再度足を止めたのは、赤く濡れた何かの存在に気づいたときだった。それは地面にうち捨てられており、周囲を酷く汚していた。
 それは、ズタズタに切り刻まれた、女性の死体だった。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【ぶらり湯けむり夢気分編】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 定期的に駅に泊まる特急列車に、新たに乗る者はいなかった。静原は停車する度に何らかの食料を買い込み、行科や八も、息抜きに表へ出たりしていた。
「また大貧民かよー、くそっ」行科はトランプをまとめながらぼやく。かれこれ8ゲームほど、逆転出来ずにビリの座を温め続けていた。一方大富豪は静原。静原と桐来がたまに交換する程度で、実力の差は如実だった。
 シャッフルし、手慣れた手つきでトランプを配る。渡される札に一喜一憂する桐来だが、それだけ札の内容がだだ漏れでも負けないのだからしょうもない話である。
「そろそろ違うゲームでもやる? 七並べとか」そう提案するのは静原。行科とトランプのやり取りをし、2の並んだ札を扇のようにして微笑む。じゃがりこ(ジャーマンポテト味)を頬張っていた。
「あと2回で宮が10敗だから、それでキリがいいね」
 桐来がそうからかうと、「っておめーもそんなに勝ってないだろ!」と言い返すも、桐来の嘲笑的な視線をイマイチ押し切れない。

 三人を載せた特急電車は、トンネルをくぐり、水面をすり抜けて、雪原に降りては街を過ぎる。夕方を裾に引っかけては、夜を引きずって次の日を呼ぶ。
 座席を倒し、毛布を被って眠りに就くが、桐来は一人眠らずに二人の邪魔をしたり、行科の携帯ゲーム機で遊んだりしていた。時折カーテンを少しめくり外を見れば、遠くでゆっくりと流れていく明かりを見やったりして、朝が二人を起こすまで暇を潰していた。時間を無為に過ごすことについて右に出る者がいない桐来は、寝たふりで彼らよりも遅くまで目を閉じていることさえやってのけた。
 朝ご飯も、停車駅で適当に買って済ます。静原は全ての駅弁をコンプリートする勢いだったが、行科はクリームパンとコーヒー牛乳で済ましていた。
 その日の暇つぶしはしりとりに始まり、いくつかのトランプのゲーム、UNOをして、昼飯を食べれば昼寝、携帯ゲームと、飽きれば次の、次のと、お喋りを交えながら、何かを忘れるように、時間を費やしていく。
 何かを忘れるようにして、時間を費やしていく。

 それでも、傾いた三日月に、何かを思うときはある。この場にいる理由、目的。お互いのこと、自分のこと。
 静原は目的のことを思い返していた。それ以外のことも、幹から分かれる枝のように考えていた。行科はこの特急電車について考えていた。それ以外のことは、あまり考えたくなかったから。桐来は自分の過去を振り返っていた。それ以外のことは、考える必要がなかったから。
 車輪がレールを打つ脇で、魚が跳ねた。
 何を思い、何を思わなくても、特急は進む。

――やがて、目的地についた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
「でさー、そしたらその子の彼氏が、『牛乳飲み過ぎて腹壊したからいけない』とか言ってさ意味わかんないの。超ウケるw だから私は――」
 入院している理由は、聞かなかった。てまりは楽しそうにお菓子を食べながら話しを続けていて、私もそれは心地よかったからそれに頷いていた。お菓子は食べなかったけれど。カーテンから部屋へと織り込まれる明かりは穏やかで、病院の特有な暗い雰囲気はあまり無かった。
「そーいえばさ、血が付いてるけど、それ」
「あ、うん。さっきね」赤い人を受け止めたときについた血だ。表面は乾燥してパリパリに固まっている。手袋と袖の、比較的広い部分にそれは広がっていて、多分水でゆすいだ程度では落ちないだろう。どうにかしないとなぁ。
「なんで手袋つけてるの? 暑くない?」
「んー。まあ、ねぇ。あんまり、肌を見られるの、好きじゃなくて」
 てまりは、へぇ、と、軽く流した。お互い、あまり深くは触れないでいた。空気を共有しているだけで、それで十分だった。深くを知るには早すぎるだろうし、でも、多分きっと、しばらくすれば、何かを明かすには遅すぎてしまうのだろうけれど。

「ちょっと、様子見てくるね」そういって私は、赤い男、ええと、行科 宮って言ったかな。彼のところに向かう。あまり面倒なことは嫌だったけれど、彼が心配じゃないかといったら嘘だ。
「あ、桐来さん。どこ行ってたんですか、探したんですよ」
 廊下を歩いていると、エッチなビデオとかに出てきそうなセクシィメガネのナースさんに見つかった。緊急外来で受け入れのときに担当していた人だ。おっぱい。
「行科さんはどうですか?」
「命には別状はないです。目立った外傷も特になし。あとは、脳に異常が無いかを調べて、って感じですね。もうしばらく時間が掛かります」
 割と大丈夫らしい。少し安心して、ってまあ、おかしな話だけれど、ともかく、良かった。
「その間、どこにいればいいですか?」
「そうですね、一旦家に帰って頂いて、後日連絡をとります。行科さん、両親とも他会なさっていて――」
「私、実はケータイも電話も持ってない(そして家もない)んですよね。どうしましょう。というか、まあ、実際、行科さんと関係って、全然ないんですよね」
「えっ」
 ……あーあ、ほんと私、なんでここにいるんだろう。

 なのに私は、次の日も病院にいた。頭に包帯を巻き、目を覚まさない宮の横で座っていた。てまりと、おしゃべりをしながら。
 同じ、病室だった。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
強い衝撃を受けて、自分が転倒したのだと気づく。
痛い。
ふらつく頭、軋む身体をどうにか動かして、立ち上がろうと――
立ち上がろうとしたけれど、邪魔された。
再度激しく転倒し、迸る痛覚に現実が遠のいた。どこが痛むかを把握出来ないほどに全ての感覚はない交ぜで、昏倒してしまいそうだった。
転倒したのは、誰かに強く打ち据えられたからだった。咄嗟に、自分の防衛本能が顔面を覆い、腹部を足で守った。幸い、ヘルメットをしているから頭を狙われない。
再度振りかざされる暴力は、ガードしている両腕を砕く。食いしばっていても、鋭い痛みが声帯を通り抜けた。
――くそっ、なんだよわけわかんねえ、ざけんな……!
不意の攻撃に当然怒りがこみ上げてきて、しかし、繰り返される攻撃に太刀打ちは出来ない。更に殴打を浴び、そのままボコボコに殴り殺されるビジョンが頭に過ぎる。嫌だ、痛い、死にたくない。
蹴り倒されて、脇腹を強打される。息の根は止まらなくても息は止まる。身をねじり上げる痛みは、その上に浴びせられる更なる痛みにシェイクされて初めて忘れられた。
――し、死ぬ……!
頭蓋の中は霞んで、口の中は血で淀み。
網膜には、瞼の裏の絶望だけが刻まれていた。
にわか雨のように唐突な暴力に、飲み込まれていく。飲み込まれていく。
沼からは自分の手だけが伸びていて、助けを求めるしか出来ない藁をもの指先――
そして振り下ろされる木刀を、俺は受け止めた。
手に握りしめたマチェットの刃に、木刀は深く食い込んだ。相手が抜くのに手間取っている間に、俺は立ち上がり押しのけた。無理に動かした身体がえげつないほどの悲鳴をあげるけれど、途端に醒めた頭脳がそれを組み伏せる。
相手は、(多分)高校生だった。比較的小柄。血で酷く汚れた学ランを着ていて、木刀を正中線上に重ねていた。肩で息をしており、そして彼の目は、抉るように俺をにらみ付けていた。にらみ返す。傾けられた殺意に、抗わない理由などない。
「ぁぁあああッ!」少年は叫び声を上げて、木刀を振り回す。斬るか斬られるかの曖昧な間合いを、わずかな空隙を踏み倒すように踏み込んで、木刀を振り回す。そのスピードに、正直のところ追従など出来ていなかった。
だが、ダメージは通らない。無意識が、マチェットの面でそれを受け止めていた。かすかな手の痺れも気にならずに、翻すように繰り出してきた連撃も、自分では信じられないほど鮮やかに捌く。
もはや、彼は俺にダメージを与えることなど出来なかった。
連続攻撃を凌ぎ、俺は躊躇いもせずに刃を振るう。自分では、追い切れるなんて思っていなかった、まるで達人のような動きに対し、俺の身体は、マチェットは、容易に対応していた。容易に、何の抵抗もなく、彼の肩口から胸部までを、深々と切り込んでいた。マチェットの鈍い刃は、更に強引に彼の身体をひしぎ、断ち切ろうとしていた。
一度引き抜いて、もう一撃。
刃伝いに生々しい感触を残して、彼は死んだ。
自分の酷く痛んだ身体を労りながら、倒れたバイクまで歩いて、それを背もたれに少し休む。血で赤黒く濡れたマチェットが、いつの間にか手に握られていたマチェットが、どうしようもなく、この世界のリアルだと、気づいた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【ぶらり湯けむり夢きぶん編】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
「「「最初はグー、ジャンケンポン!!!」」」

「あー! やっぱり俺からか! なんだこの補正!」
「日頃の行いが出たね」
「頑張って」

洋風の鉈をビルドし、メイデアと対峙する宮を目に映しつつ、頭では考え事をしていた。宮は負けない。危なげのある場面はいくつかあっても、『絶対に』負けない。私も、八も、負けない。少なくともこの場面では負けない。
何故それが分かるのか? 分からない。ただ1つ裏付けるものがあるならば、異常なまでの既視感。宮が戦っている場面を初めて見たのに、全ての動きが予測通り。まるで私が未来視でも持っているみたいに。

昨夜目を覚ますと、八がいなかった。どうも寝付けなかった私は、なんとなく、八を探して別の車両まで探しに出た。眠らない彼女は、きっとどこかうろついているのだろう。しばしばどこかに行っているのには、気づいていた。お互い深く詮索するような仲じゃないから、私はあえて問いただしはしなかったけれど。
他の車両にも、私たちの他には誰も見あたらなかった。一切変化のない風景の繰り返しに、まるで延々とこの車両が続いているかのような錯覚を覚えつつ、照明の絞られた薄暗いを歩いた。窓の外は、明かり1つない闇で、地の底だった。
「どうしたの、てまり」八の声がしたのは後ろだった。私は振り向くと、本当にすぐ後ろのところに、八が立って私の顔を覗く。
「うわ、びっくりさせないでよ」
「お化けみたいでしょ? 幽霊列車っていうか、魔列車みたいな」
「マレッシャ?」意味が分からない。
「で、どうしたの」
「いや、別に。なんか寝付けなくて」むしろ、どうしてこんな所にいるのかを、私が聞きたい。
「そう」
わずかな空白を埋めるのは、電車の走行音。単調に。
「そういえばさ」少し、俯きがちに、八は。
「うん」
「私、誰かと旅行に行くって初めてだな」
「そうなんだ。まあ、旅行っていうか、なんというか」
「そうだけどね」八は小さく笑って、顔を上げて、言葉を繋げた。「それでもまあ、楽しいなら、旅行でいいんじゃないかな」
「そうかもね」
「そう言えば、聞いてもいいのか分からないけれどさ」八は、笑みをより大げさにする。それが作り笑いだと、私は知ってる。どことなく、その理由も、彼女の口から出る問いも、知っている。ただ、分からないのは。
「てまりは、何を求めて、聖域に行くの?」
その、答えだった。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 この桐来八という人物に対しての疑問は、多い。
 頑なに肌を見せないこと。コンプレックス? ずっと病院にいるのに、一度も何も食べていないこと。飲んでもいないこと。トイレにも行かないこと。というか、なんでずーっとここにいられるんだろう。ケータイを持っていないこと。どこに住んでいるかも分からない。
 でも、私は尋ねない。踏み込まない。
 まばたきをしないこと。息をしないこと。ふとしたきっかけで素肌に触れたとき、体温がなかったこと。どことなく、生気が感じられないこと。
 尋ねない。私は知らないでいい。
 目の前で、表情豊かに振る舞う彼女の素振りは、それを隠そうとしているのが分かった。自分が、他人に見せるのと同じ素振りだったから。きっとそれを突けば、容易に、何かが、例えばこの不思議な友達関係が崩れてしまうのは、分かっていた。分からないことがたくさんあっても、それだけ分かっていれば、少なくとも続けられた。
「でね、そしたらオジさんの後頭部めがけてね――」
「なにそれ超ウケるw」
 それに私は、八のお陰で、救われていた。一人で天井を見上げているよりは、よっぽどマシな入院生活だったろう。今の私には、どうしても考えてしまうことがあった。目を閉じて、眠りに落ちるまでの2時間。トイレで座っている間。渦巻く味噌汁を眺めている間。
 八がいる間も、それを忘れた訳じゃない。ふとした瞬間にそれを強く認識して、言葉が途切れてしまうこともある。でも、八の、そんな私を見る目がどうしようもないくらいに優しいから。泣き出してしまいそうなほどに。
 私も八も、お互いのことは何一つ、本当に何一つ知らないのに、その憂鬱の底では、どこか、共通しているものがあった。それは、一方的な勘違いかもしれない。きっとそうなのだろう。それでも、私は八を必要としていて、そして八もまた、私を、必要としていてくれるのだ。
 私は、今日、退院する。
 ずっと頭で考えていた続きを。うんざりするほど、不気味に揺れ続けているような日常を、私は再開する。数日ほど前までにはそんな勇気なんてなかったけれど、きっと私は頑張れる。八だって上手くやっているんだから。もしダメだったとしても、私はここに戻ってこれる。ダメじゃなくても会いにくるけどね。
「てまりさん、検査の時間です」
「あ、はい。……それじゃ、八、またね」
 小さく手を振ると、八は満面の笑みでそれを返す。「うん、またね」

 そして私は――
「ただいま」
 家に、戻ってきた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
「殺しに……って」てまりはボーティーズの去った後、地面にへたり込んで不幸を嘆いた。どこか分からないここ、疲れ切った身体、まるで無力な自分、死体。
「ちょっと、休もう。私も疲れちゃった」と、八は言う。座り込んだてまりの肩に手を置いたまま、すぐ隣に座った。そのまま手を横に動かして、ぷにぷにとてまりの頬をつついた。
 しばらくの間、そうしていた。太陽は、クリスマスツリーのお星様みたいにてっぺんで、まるで落ちてくる気配はなかった。
 次第に、何とか気持ちを整えたてまりは、先ほどからてまりの頭を撫でに撫でまくっている八に視線をやる。疲れた、という発言は本当のようで、八の頬に汗が滴っていた。暑いのならさっきの子みたいに上着を脱げばいいのに、とは思う。
「てまりは、さあ」
「うん」
「どこか行きたいところって、ある?」
「自分ち」
「そっかー。自分ちね。うん」
「八は?」
「私はねえ、んー……」八は空中を見上げて、続けた。「私も、自分ちかなあ」

***

 身体が、重い。
 てまりに、疲れていると言ったのは嘘では、なかった。まるで生きているみたいに、生きているみたいに、身体が疲労していた。足が痛い、息が荒い。何かに身を支えたい。座りたいと。そのどこか懐かしい感覚は、まるで自分が生きているようだった。
「ねえてまり?」
「ん」
「もしさ」
「うん」
「死体が動いてたりしたら、びっくりしない?」
「する」
「するよね」
「当たり前じゃん」
「だよねえ」
 瞼が重い。眠い。目を閉じて、そのまま暗転する視界に身を溶かしてしまいたい。生きている、みたいに。
 生きているから死ぬ。
 死んでいれば、死なない。
 それを裏付ける実験をしてみたことがあるが、それは左胸に風穴を開けただけでおしまいだった。皮膚を裂き、割って何かが入ってくる生々しい感覚は今でも覚えているけれど、それはそれ以上の意味はなかった。痛みもなく、血もなく。
 今の、生きているみたいな私には、死ぬことが出来るだろうか。それは魅力的な提案だけれど、でも、生きているみたいなのも、やっぱり、悪くなかった。死んでいるよりは、よっぽどね。

 ――だから、私は剣を手に取ろう。

「危ないッ!」私はてまりを突き飛ばし、振り下ろされた刃物を受け止める。非力な私でも、それが小さなナイフであれば、なんとかなるもんだね。
「くそッ!」ナイフを振り下ろしたのは少年だった。大体中学生くらいかな。高校受験とか親とかにうんざりしてどうこうしちゃったようなていをしている。よく分からないけど、ここみたいな無法地帯なら、間違いも犯しちゃうだろうねえ。ねえ?
「油断していると思った? 残念、油断してる私も倒せないのが君だよ」私の手には、細身の剣だった。レイピアっていうのかな。細くて長い、針みたいな剣だ。剣なんて持ったこともないけれど、案外、しっくりくるもんだ。悪くない。
「八? どういう――」当然、後ろから疑問を投げかけるてまりに、悪いけれど構っていられるほどの余裕はない。
「ごめん、後にして!」このヤンチャ坊主をどうにかしないと、と言葉を繋げる前に、少年はナイフを振るう。バックステップ、なびいた髪がかすかに切れる。くそう、私の髪は伸びないんだぞ、大事に扱え!
「あんまり、『れでぃ』に向かってナイフを振り回すもんじゃないよ少年!」
 レイピアをのど元へと突きつける。体格、運動神経にはあんまり差がない君と僕だ。攻撃をいなし、すぐにチェックメイト出来たのは、覚悟だとか、センスだとか、まああと才能だとか何だとか色々あるかもしれないけれど、どれか1つあげるとしたら武器の違いだった。
「動いたら、割と、痛いかも」なんて脅してみるけれど、てまりの手前そんなことをするつもりはあるはずもなく。少年は、ナイフを持つ手をゆっくりと下ろした。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
「ごめんなさい、しばらくは安静にしていないと……。うん、3日くらいは……。てまりさんの状態によるけれど、少なくともそれくらいは、ね」
 てまりが再度入院したという話を聞いて、何となく私は、安心した。酷く残酷なその感情を、私は分かっている。それは、まるで私自身が死の淵へ招いているみたいな気分にさせるけれど、しかし、それはあながち間違いじゃないのかもしれない。傷ついて、確固たる拠り所もなくて、まるで緩んだネジみたいにぐらぐらな、そんな人を見つけてはすり寄って。そしてどうしようもなく冷たい私は、彼、彼女らの知らないうちに体温を奪い去って。
 私は、私はそんな私自身を赦そうと思っている。そうしなければいけないと思っている。私は、そうしなければ、一体どうすることが出来るだろう。私は、求めずにはいられない。ご飯を食べない、息をしない私は、唯一、他者との接触を、あるいは居場所を求めている。多くは求めていないつもりだ。ただ、私がその目を覗き込めば、同じように私を目を見てくれる存在があればいい。それだけでいい。それくらい、求めてもいいでしょ?
 ……消えて無くなることも、出来なかった。傷を増やしても意味はない。痛まない、傷むだけだ。悼まれることはなく、いたたまれない私はそこにいつづける。首と身体を切り離してみたとしても、私は動き続ける。一度私は、小指を身体から切り離したことがある。気持ちの悪い話だけれど、小指は、意識をすればそれでも動いた。まるで身体に繋がっているかの如く、動いた。芋虫みたいに。
 私の身体は不揃いだ。例えば左手の薬指は、私が私に気づいたときにはなくて、もしかしたら動かそうと思えば、今でもどこかでうねうねとのたうっているのかもしれない。……薬指から切り離された私は、今でもこうやってのたうっているわけだし。
 首と身体を切り離してしまっても、それは変わらない。もしかしたら、火葬したって変わらないかもしれない。身体を失っても、私はこの世に止まりつづけるかもしれない。それは怖い。誰からも気づかれることはなく、私はただ、そこに存在し続けるだなんて。そんなことをするならば、東京タワーの蝋人形館で、一生(一生?)、人形に混じってパントマイムでもしている方がマシだ。蝋人形の彼らなら、いくら私が目を合わせたところで、その生を奪うことはないだろう。

「ん……」
 宮が目を覚ましたのは、拾ってきた漫画雑誌を読んでいたときだった。
 なんの前触れもなく、静かな病室に彼の声。
 私は、何も出来なかった。いや、雑誌に落とした視線を持ち上げるくらいはしたけどさ。
「……あ、れ」
 宮は呟く。赤くない赤い人は、目をこすり、深い呼吸。身体をゆっくりと起こす。
 そこでようやく私は、
「おはよう」
 だなんて、なんでそんな言葉が出るかな。
「あ、うん、おはよう……」
 でも、まだ完全に目が覚めたわけではないみたいだった。半ば寝ぼけた彼は夢か現かで、きっと何か言ったところでしかたがないだろう。私は、しばらくじっとしていた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【ぶらり湯けむり夢きぶん】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 ぅわんぅわんぅわんぅわんぅわん――
 コーヒー牛乳を飲み、マッサージチェアに座って。
 ボーッと、どこか緩んだ気持ちだけがそれに揉まれていた。何も考えないで良い、何も考えないのが良い、そんな時間。
 なのに、なのに俺は。
 頭の片隅で考えていた。こんなことでいいのだろうかと。いつも正常さなんてなくて、何となく当たり前に落ちていた石に躓いた、そんな平坦な日常からの転落の後には、何が俺を突き動かしていたのだろう。消しゴムのような単純な摩耗に消えてしまいたいと考えていたのは事実で、振り返ってみればそこに俺は何を求めていたのかも分からない。
 ここは、どこだろう。
 いつから、俺はここに至ったのだろう。想起すれば手に握られるマチェットに疑問を覚えないのはいつからだろう。少なくとも、俺は剣なんて知らなかった。オーロラメモリー? ビルド? なんのこっちゃ? なんて、しらばっくれではなくて本当に知らない、そのはずだった。初めて八に、てまりに会ったときもまだ、正常だった。いつから俺はここにいる? 周囲を見渡す目を無くした俺に、それを推測するほどの情報はない。頭に刻まれた365の軌跡もまた、偏執的に単調な波形しか残していない。
 八かてまりに尋ねてみれば、案外すんなりとそれに答えてくれるかもしれない。あるいは、そんなことを考える俺を笑い飛ばしてくれるかも知れない。全ては嘘だと、俺がどうかしているんだと。どっちにしたって、そうすれば俺は救われる――んだろう。
 立ち上がって、徘徊する。
 聖域は広い。俺は何の手がかりもなくただ歩いていた。二人はまだ入浴しているかもしれないし、もう部屋に戻っているかもしれないけれど、何となく歩いていたかったというのもある。修学旅行に来たっぽい高校生の集団を何度か横目に見つつ、気づいた時には一番下の階に来ていた。
 巨大な扉が開かれていて、そこには薄暗い通路が続いていた。重々しい雰囲気が、ゆっくりと抜ける冷たい空気に溶けて、眠気と脱力を奪っていく。
「あ、宮!」
 てまりの声。それを見つめて立ち尽くしていた俺の焦点を動かしたのは、てまりだった。もうちょっと別の風呂入ってくる、と再度別れてから、見たところまだ八を見つけていないようだった。
 てまりもまた、その開かれた扉の向こうへ、視線をやる。
 既に、言葉は必要なかった。お互いの思惑や感情は分からないけれど、運命の傾く方向に耳をやる必要もない。あらゆる行動を想起する以前に、自分の足が動き出していた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<10/0/0/1/魔魔魔魔魔魔魔/伏線>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
「そういう名前なんだ。私は桐来 八って言うんだけれど、ここがどういうところか、知ってる?」八は切っ先を、宮と名乗った中学生から反らした。十分に警戒は宮にも伝わっており、彼は動こうとしない。地面に座ったまま、言葉を返した。
「……剣」
 ハッキリと聞き取れない。「え?」
「剣の、世界。ここじゃ、剣が全てなんだって、言ってた。殺せって」少年の口調は乾いた地面みたいで、色の取り戻した光彩が私を見つめている。
「言ってた? 誰が?」
「……知らない男の人。いや……」視線を上下させる。疑問符を引っかけたままに話されても、困るんだけれどな。
「多分、俺……かな」
「えっ――」八がその言葉の真意を問いただす前に、少年は目を閉ざした。そうして力なく身を崩すと、酷く降り注ぐ太陽の下に出来た、彼自身の影に沈んだ。まるで滑らかで、水面に沈み落ちるように。
 そこには影だけが残された。夜が染みついたような、不気味にも見える、影が。その影もまた、緩やかに、光の中へ溶けていく。まるで何も、なかったかのように、いなかったかのように。
「なるほど……?」八は曖昧に事態を解釈しながら、頭痛に苛む頭を押さえた。私も、限界かもしれない。病み上がりもとい、死に上がりのこの身体では、無理は利かない。そもそも私は華奢な女の子な訳で。
 死に上がりだ、なんて言っちゃったけれど、私は本当に生き返ったのかな。ボロボロに、ズタズタに引き裂かれた私の身体の傷は塞がった? もし再び心臓が動き出したところで、あんな身体じゃ全身から血を吹き出しておしまいなはず。
 ……いや、あるはずのない薬指が、きちんとある気がする。手袋の中で、きっと多分恐らく信じられないけれど、ちゃんと私の手にくっついている気がする。動かせる。もしかしたら、本当に生き返ったのかもしれない。
 心当たりは、ないわけではなかった。
 私をはね飛ばした男が、私にしたことだ。あれが私を蘇生したのかもしれない。分からない。分からないけれど、この手袋を外して、自分の身体を確かめたいところだった。
 だが、その喜びを上回って説破する、体力の衰弱は無視の出来ない話だった。生き返ったせいで死ぬだなんて滑稽な話、冥土への手土産には安すぎる。
 てまりも、もう限界だろう。この日差し、彼女の心身の衰退ぶりから、どこかまともな場所で安静にしないとダメだ。でも、どうすればいい?


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:桐来 八【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<10/0/0/1/魔魔魔魔魔魔魔/伏線>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速熱熱衝絶絶>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 孤独だった、誰もかも。
 行科宮も、桐来八も、静原てまりも。
 両親が死亡し、荒んだ行科は、ネジの砕けたオートマトン。自分がそこに立っている理由さえ、どこに目覚めていいのかさえ分からない彼の目覚めを待つ人間など、いるはずはなかった。特別な所以がなければ、糸が結ばれていなければ、そのまますり抜けてしまう安価な命。その値段を見切っているのは誰でもない、彼自身だった。
 死体の桐来はアンデッド。自分が立っている理由さえ、どうやって眠るかさえ知らない彼女が眠れる場所など、あるはずもなかった。特別な所以がなければ、結ばれることのない揺らいだ存在。繋がれる場所を求めて彷徨わなければならない彼女がここにいるのは、他でもない、ここにいる理由があるからだ。理由なんていらない、そんな言葉がありふれている世界であるのに。
 太陽ですら、夜は沈んで朝に発つ。明るく装うことを自分に強いる静原は、常に装うことが出来ぬならと、隠れた内を燃やして壊れたマグネシウム。特別な所以がなくとも、誰かと出会いそれを照らす、照らす。強く光り輝いていれば、誰も直視なんて出来やしないと。光り輝く太陽に、誰がサーチライトを投げかける? 誰にも悟られない、悟らせない。手首から溢した燃えかすだけが、彼女のあげた悲鳴の反響。それでも彼女がいなければ、きっと二人は救われない。救うことでしか救えない、彼女がいなければ。
 後日静原は、八のために宮を誘う。プリクラを撮り、カラオケをし、ボーリングをした。デッド・オア・アンデッド。不揃いの彼らは昼に笑い、夜に喋り。繋がりを求め、諦め、それでも解けず連日にはずむ。不揃い故に。不揃いが為に。
 
「聖地温泉行かない?」
 そうやって静原が二人に見せたパンフレットは、現実の解れ目。あるいは綴じ目。現実からはみ出した桐来を、現実に結び直すための逸脱。
 しかし、それに至るまではまだ、時間がある。語るべき物語も、彼、彼女らの日常も。
 行科、桐来、静原。
 それは、三人で夜の海浜公園を歩いている時のこと。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:ハチ【ぶらり湯けむり夢きぶん】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<10/0/0/1/魔魔魔魔魔魔魔/伏線>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速熱熱衝絶絶>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 隣の風呂も見てみるか、と、俺はてまりを放っておいて進む。俺は十分風呂入ったし、八を探さないとな。混浴だから、そこで探すってのも、まあ、何というか色々、アレなんだけれど……。特に八は、だ。
 言理の湯と書かれているそこは、いくつかの湯に人声や水音、桶の打つ音が反響しているのに対し、静けさが注がれていた。高い敷居が湯と湯を隔てているが、それ越しに聞こえる音がそれを揺らすが、湯気はまるで霧のよう。それにすら薬効が浸透しているようにも感じる。
 ……八だ。
 湯気の奥、湯船に背を持たれ、目を閉じている。死んでいる、ように見えた。酷く傷ついた身体は、古傷のような傷跡ではなく、出来たばかりのように見えた。ここに入るときに傷つけられたのかもしれないが、その割には、湯は透明を保っていた。
 浴衣を脱ぎ、俺もその湯に入る。
 その瞬間――
「こんにちは」
 聞き覚えのある声。そこには、女子高生が立っていた。
 栗毛のセミロングヘアーにミニスカートにマフラー、黒タイツ、ローファー(は見えないけど)……ボーティーズ。
 忘れていたはず、だった。
「あービショビショ。もう、君のせいだからね」そういって不満そうな笑みを投げかける彼女は、そのままの表情で言葉を繋げた。「でも、まあ、来たのは私だけれど。なんとなく、呼ばれてる気がしたからね」
 ボーティーズ。彼女に会ったのは二回目だ。
 初めて会ったのは、八に会った後のこと。八に再開する前のこと。つまりは、事故って気絶している間に見た、夢だ。
 夢は、夢だった。いつか見た、剣の世界とは違う、ある意味では純粋な夢だった。まるで鍋みたいにごちゃ混ぜな、そんな夢。
 その一片の中、妙に鮮明なシーンがある。目覚める直前にどこかの淵、何かの縁。ボーティーズと名乗るJKが、俺に話しかける夢。
 その時も、彼女は「こんにちは」と話を切り出した。
「通りかかったよしみで、一応のアドバイスね。君はもうじき、目覚める。そうしたら、桐来八と静原てまりに会う。二人は、君が会いたいと、あの世界で会った二人に会いたいと願ったから会うことになった人間。会うことが出来た人間で、君が望んだ世界なの。忘れていると思うけれどね。この夢だって、忘れちゃうと思うけれど」そう言ってため息を吐く。
「それでも、言っておく」一歩、こちらに近づく。静かだった湯面が波立つ。「君だって男だ。君が招いた二人を、ガッカリさせちゃダメだからね。私だって二人ととも大した縁はないよ、たまたま会っただけだからね。あの世界の結末を知ったのも、『知人』から聞いただけだし。まあ、そーいう訳で、グッドラック」
「そうそう、そのボーティーズだよ。思い出したかな。ここはそういう場所みたいだね」歯を見せて笑う。湯船に立っているが、服を脱ぐつもりはなさそうだ。「で、何の用事かな」
直接、呼んだつもりはなかったが、しかし俺の口からは何も迷うことなく、言葉が出た。初めから決まっていたみたいに、決めていたみたいに。「八を、助けて欲しい」
 それを聞いて、ボーティーズは笑う。声を出して笑う。
 まるでバカにされているみたいで、それに対して怒鳴ろうとしている自分がいた、が、春先に吹く強い風のように、そんな自分を制するのは、彼女の不適な笑みと真っ直ぐな視線だった。
「それは、見当違いだよ、宮君。八は死んでいるんじゃない。君と同じように、記憶を縒っているだけだよ。ただ彼女は記憶を喪失していたがために、その情報量が彼女には外界への意識を保てるだけの処理量をオーバーしている。大丈夫、すぐに起きるよ」
 笑みは優しさを孕んだ微笑に変わる。「それに、彼女はそうしてきっと、救われるものがある。私は救うとか救われるとか、そーいう言い方はあんまり好きじゃないけどね。そしてそれは、てまりちゃんが願った世界。てまりちゃんの意志だよ。……ひひ、ちゃんと私の言ったとおりに、二人を大切に思っているようで良かった」
 そういって、彼女は立ち去った。湯気の奥に消える彼女の後ろ姿を見て、もう二度と会うことはないだろう、と思った。
 そして、再度八に視線を向ける。
 ……今度は、俺が目覚めを待つ番だ。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:ハチ【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/1/速鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡/物語の端>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<10/0/0/1/魔魔魔魔魔魔魔/伏線>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速熱熱衝絶絶/伏線回収>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 強い雨、傾いた二人は沈むようだった。
 桐来八は豪雨に意識を喪失し、また急激な体温の低下は、体温ともに体力を漏洩させていた。
 一方、静原てまりは、冷たい雨に頭を打たれ、一時的な覚醒状態にあった。彼女の本能自身も、心身友に傷んだ自分が、そういった状況にあるなど奇跡的状況であることに気付いており、尚更明晰さを強調していた。
「八――!」てまりは八の身体を抱く。雨を大いに吸ったセーターは鎧のようで、てまりはそれを脱がした。ハイネックで、オーバーサイズ気味のそれに隠されていた素肌は、白く滑らかで、美しいものだった。
 そしててまりは、命の剣で彼女を貫いた。
 その行動を彼女が自覚する頃には、命の剣をビルドし、心臓に突き立てた後、まるでなかったかのように解け消えていく最中であった。それで彼女はすぐには死なないと、直感的に理解していたてまりは、彼女の軽い、不気味なほどに軽い身体を背負うと、闇雲に走り出していた。右手には八のビルドしたレイピアを持ち、そしてその剣は、自然と二人を行科の元へと導いていた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:0


名前:ハチ【Dead_or_Undead】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<0/3/0/4/高高高/三点リーダ>
 ・召喚剣<5/0/0/1/速鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡/物語の端>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝絶絶/地の文>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/台詞>
 ・召喚剣<10/0/0/1/魔魔魔魔魔魔魔/伏線>
 ・召喚剣<0/4/0/3/高高高/インデント>
 ・召喚剣<30/0/0/2/盾盾/栞>
 ・召喚剣<35/0/1/1/盾/眠気>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速熱熱衝絶絶/伏線回収>
 ・召喚剣<5/1/0/4/熱熱斬斬/行間>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>
 ・召喚剣<50/0/0/0//物語の端>

設定:
 いつだって、一人だった。……いつだって。
 でも、一人じゃなくたって、私は。いつか一人になってしまうと知っているから。生きているのか死んでいるのか。死者と生者は、一緒にいられない。
 ならば、その手を、放そう。
 あるいは――

***

 それは、三人で夜の海浜公園を歩いている時のこと。 湿った風、曇った夜空、暗い海。それでも街灯は、正常だよ、と。私も誰も、どこか影を覚えながら、その場に立っていた。笑いあっているのに寂しくて、満ちているのに立ち止まれない。
 時に雑談は解れて、会話が途中で止まってしまうことがある。2つのサイコロを投げて、ぞろ目が出てたような沈黙。そんなちょっとしたキッカケは、しかしそんな夜には十分過ぎるほど。三人は、口を閉ざして海を眺めていた。
 再度、初めに口を開いたのは、てまりだった。なんて言っただろう、覚えていない。どことなく重い空気に、気を遣って冗談めかすことを言ったと思う。宮はそれに小さく笑って、でも空気は重たいままだった。まるで空がのし掛かっているみたいな。
 3人との生活は、楽しかった。楽しい。どうしようもない冗談で笑ったり、喧嘩したり。そんな当たり前なことを貴重にするのなんて、それがいくら大切でもばかげてる気がするけれど、けれど、自分の居場所があるというのは、大切なことだと思う。
 私の経験じゃないけど、漫画とかドラマとかでよくある三角関係だってさ。好きな人を取られるだとか、それ以上に、2人と1人に分けられるのが辛いんじゃないかな。いつも3人で歩んでいたのに、3人はお互いのことを知っていたのに、いつの間にか2人の世界が出来ていて、蚊帳の外。それは、別にある1人を遠ざけたいというわけじゃなくて、2人は2人だけの世界に浸りたいだけ。でも、それは残酷に、2人と1人なんだ。
 それは三角関係の話だけれど、社会とはそういうこと。友達というグループだって、それは友達同士で世界を共有する傍ら、それ以外を排する性質を持っている。なんだってそうだ。人がいれば、人は集まる。それは同時に、人を排すること。こぼれ落ちた人はどこに行くのだろう。どこにも居場所のない人間は。家族も、友達も、共有する過去もない人間は。
 ……私たちは、そうして出来た、余り物のグループかもしれない。アウトレットみたいな?
 でも、私は、人間ですら、ないのだ。生者と生者と死者。やがて解れる、結びつき。
 実のところ、私にだって過去はある。今みたいに、誰かと一緒に住んだこともあれば、遊びに行ったこともある。けど、ダメだった。何も食べない、息も吸わない。トイレだって行かないし、体温もない。そして、この身体。違和感を覚えない人などいない。適当な言葉でそれを繕っても、『化け物』だと、いつか見抜かれてしまう。そんな過去は、話すつもりなんてないけれど。
 いつ、消えていなくなろうかとずっと考えていた。そしたら。
「聖地温泉行かない?」なんて。あ、そういえば、と、てまりは鞄からパンフレットを取り出した。
 温泉なんて、私にはぞっとしない話だけれど、でも。旅行も悪くないなあ、と思った。……別に、猫風呂に惹かれたわけじゃない。
 それで、さよならしようと思った。その新しい土地で、私は彼らとの関係を終わりにしようと思っていた。
 けれど、それはただの温泉じゃなかった。思えば、そのパンフレットをてまりが手に取った瞬間に、私は踏み込んでいたのかもしれない。
 それは、剣の世界。死と生を分かつのは、剣の描く直線のみ。自分と他者との間より、生きた自分と死んだ自分が近い世界。
 ならば、もう少し、傍にいてみようかと思った。

***

 長い長い、奇妙な電車に揺られながら。
「もしさ、自分が幽霊だ、って気付いたら、どうする?」と、桐来は二人に尋ねた。
「なにそれ、シックスセンス?」そう聞き返すのはてまり。
「んー、そうだなー」宮は一旦言葉を区切る。「幽霊って、普通の人間とどうちげーの? 壁透けたり?」
「ん、なにも変わらないよ。でも、幽霊なの」
「なんだそりゃ」わざとらしく表情を作る。「それじゃ、なんも変わんねーじゃん」
「まあ、そうかもね」桐来は、車窓から景色を眺めた。どこか昔に、見たことのある景色。それはたまらないほどに悲しい印象と共に、心に染みついていながらも、どうしようもないくらいに楽しい今とが、折り重なって滲んで見えた。


オーナー:clown

(出典:マーガレット千夜一夜)

評価数:2
(elec.)(samantha)


同じ電車のシーン。でも私とは対称的なオチかも。clownさんの文章が読めてよかったです。またいずれなんかやりましょう。 (samantha)(03/30 19時20分01秒)