名前:エンディング【現実より】
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<0/5/0/3/高高/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶/>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱熱衝絶/>
 ・召喚剣<10/0/0/3/絶絶速速熱/>
 ・召喚剣<15/0/0/2/絶絶絶速熱/>
 ・召喚剣<5/0/0/1/速鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<5/0/0/4/鏡鏡鏡鏡鏡/>
 ・召喚剣<25/0/0/2/斬護護/>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/>
 ・召喚剣<35/0/0/1/命回7/>

設定:

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(ピリリリリリリ…)
(携帯が、鳴ってる)
行科が手を伸ばそうとするが、優しい手に手首をそっと握られる。
ゆうの瞳が微笑んで宮の思考を捕らえる。
主導権は握った。暖かい表情とは裏腹にゆうの心は宮とその周りに沸々と激情に苛立っていた。



皆啼ゆうは剣士ではない。彼女の脳回路はオーロラメモリーに上手くアクセスできない。
だが彼女はその事を不満に思ったことも、悩んだ事も無い。むしろ感謝すらしていた。
彼女は先天的にナイトハンドリングの能力に長けて居た。
幼い頃から誰もが皆、皆啼に傅き、丁重に愛情を持って扱ってくれた。
彼女にとってはマーガレットなど児戯に過ぎず、そんなものに命を賭ける剣士は自分の人生のための便利な駒に過ぎなかった。

遊びに遊んで駒遊びに飽きた16歳の頃、皆啼はようやく駒に対して目を向けてやった。
それから暫くいろんな剣士を使い捨てて見つけたのが疎通剣≪ヘブンズドア≫だった。
疎通剣をある方式で応用すれば、異なる空間へと飛び立てる。
自分の周りを喰い散らかした皆啼には恰好のおもちゃだった。
しかしこの世界のオーロラメモリーはマーガレット・ハンドレッドに対応していない。
皆啼の犠牲になった剣士が、何かしらの事故で空間を渡ってやって来たただの観光客だったのだ。

そしてその新しい駒がある日殺害もしくは失踪してしまった。
というのも、その剣士の自宅にナイトハンドルの維持行為をしようと訪ねて行くと、部屋中血みどろに塗りたくられ、部屋の真ん中に一本の剣が突き刺さっていた。
家は荒らされた形跡がなく、血の量のわりには肉片も見当たらない。
ただ、剣に「禁ずる」とだけ刻印されていた。
皆啼は始めて自分に危害を加えられた事を理解した。
何かが私に反抗している。それだけで皆啼の嗜虐性のスイッチを入れるのには十分だった。



それから可能性のある剣士を探すのには時間が掛かった。何しろこればかりは一人ひとり探ってみないと解らないのだ。
そして漸く行科宮という可能性に辿り着く。
そこからは今までの苦労を帳消しにせんと言わんばかりに、時間を掛けて行科の心を丁寧に磨り潰し、自分に依存させるように仕向けた。
両親を殺させたのは、自分に接近させて心を得るための布石。それ以上でもそれ以下でもなかった。
日に日に人格を失い人形と化す行科を皆啼はにこにこと眺めて楽しんでいた。

途中別の駒と”遊んで”いる所を見られたがそこを上塗りする力が自分にはある。
皆啼は漸く手に入れた別世界への鍵を今また獲得しているのだ。
その満足感の前には、予定外の疎通剣暴走などなんと言う事も無かった。早かれ遅かれこの階層からはおさらばするつもりだったのだし。
だが、何かと邪魔が多かった。あの二人もそうだし、訳の解らない殺人鬼もいる。マーガレットの力というものはなんとも面倒なものか。


此処までの計画の誤動作はひとえに、皆啼はマーガレットを軽視しすぎていたせいだ。
遣り様によってはマーガレットも十分面白い事が出来ると言うのに。
(ベルが止まない。)
皆啼の思考がイレギュラーに対して警報を鳴らす。
この空間の管理人の意思は掌握したはずなのに、音が収まらない。
銀糸のように美しく、細い右手の指先を行科の頬と接触を密にさせながら、携帯に手を伸ばす。
そっと、電源ボタンを長押しして携帯の息の根を止めた───。


ふ、と笑みを浮かべる皆啼が目線を上げる。思考に有り得ないものが、現実に、二人から15mほどの距離に見える。
自分が、ちょっと行科で遊ぶために、罪悪感を作り上げるために引きずり出した中学時代の行科が、携帯電話を片手に此方を見ていた。
そしてその後ろに、動かなくなったはずの死体女を、動けなくなったはずの肉女が抱えていたが。
死体女の傷はどれも塞がっている……まさか、そうか……マーガレット!!
皆啼の幼い貌がぎしりと歪む。マーガレット、マーガレット、どいつもこいつも剣剣剣、馬鹿らしい。
自分の御しきれないところに存在するマーガレットが疎ましい!

「どいつも!こいつも!!なんで邪魔ばっかりするの!!」
咆哮。純然たる怒りが皆啼から溢れ毀れる。
中学時代の行科人形に、排除せよと命令を下す。……が、人形は命令を聞き届けることなく、哀しい目をして地に融けた。
「あああ。あああ……あああっ!!なんなのよ!!折角、此処まできたのに!!」
泣きながら地団駄を踏む。今まで何もかも上手く自分の手のひらにあったのに。
激情に任せ、皆啼は行科の手を取り、瞳を覗きこむ。
ナイトハンドリングを応用し、一時的に行科の力を皆啼自信に付与させる。
お前らそんなにマーガレットが好きなら、マーガレットで死ぬがいい!!

「み、や!!」
擦り切れた喉でてまりが叫ぶ。手を伸ばす。
マーガレットを皆啼に付与するために行科への思考支配が一瞬弱まった。

「五月蝿いッ!!死ねッ!死んでッ!邪魔をするな!!私たちの前から消えなさい!!」
目の前には、いつもと違う皆啼ゆうが。

「み、や……はちが、しん、じゃう」
皆啼を無視して、行科に手を伸ばしながら歩み寄る。
(俺がさっき、跳ね飛ばした子は。ハチって言うのか。)
(死んじゃうのか、俺のせいで。)
「HP減殺ッ!!効果二倍!!高速起動!!便利なもんだよねっ!死んでよこれで!!こんどこそ!!」
(こんどこそ、ってなんだい、ゆうちゃん。)

「助けて!!」
最後の声を振り絞って、てまりが叫ぶ。
言葉が記憶のほころびを貫き、涙が脳の曇りを払う。
「あっ」
行科が声を上げるのと同時に、目の前で八とてまり、二人纏めて剣に貫かれていた。

「……。」
目の前では肩を上下させて荒く息をするゆうちゃんが。
そのもっと前には、団子みたいに連なって串刺しになったてまりと八が。
「ゆうちゃん?」

舌打ちして厳しい目でこちらを見るゆう。
(ゆうちゃんのこんな顔初めて見た。……あれ、俺、今。何考えて。)
皆啼の驚愕と、行科の思考の復活は同時だった。
(しまった、こっちに気を取られすぎた!!)
慌てる心を即座に殺した皆啼は、その瞬間最適な表情を行科に向ける。

「さ、行こう!二人の望むところへ!」
行科の視界情報からは既に死体を始末している。早急に思考の書き換えを進めないといけない。
いけない、いけない、いけないのに。
行科の心に接続できない。


行科は皆啼を見ることもせず、酷く悲しげに微笑んだ後、俯いたまま皆啼に背を向けた。
「俺は、俺の人生を生きるよ。」
「ちょっと。」
「ゆうちゃんはゆうちゃんの人生を生きてくれ。もう、俺の事は、大丈夫だから。」
「話を聞いてよ。」焦りが。

「あなたの両親を殺したのはあなたよ!!どの世界に行ってももう戻ってこないのよ!?」
せめてもの楔を打ち込んだ。確かに、その言葉は呪いのように行科の心を深く抉った。
「でも、でも私と一緒に行けば、私と一緒に居れば宮くんの両親の生きてる可能性のある世界にいけるんだよ!?」
めちゃくちゃな理論だった。だが、皆啼にはナイトハンドリングがある。もう一度、もう一度心に接続できれば!!
だが、行科はゆっくりと首を横に振った。
行科の心は既に擦り切れていた。そこに全く関係の無い二人が巻き込まれて死んだのだ。
思考停止に陥っていた。追い詰めすぎた皆啼のミスだった。


不意に衝撃が皆啼の華奢なボディを3度走る。痛みは無い、が。声も出せず痺れたように倒れ臥す。
いや、実際に痺れていた。此方に気づかず
駆け出そうとするが動かない。動かせない。
行科が、衝撃剣を投げていた。


漸く這いずれる程に回復した時には、既に行科は目の前に突然現れた階段を昇っている。遠い。
「待って!!」
愛情を装うために割り当てた皆啼のリソースが、心が悲鳴を上げる。
「あ、あああっ!あんた、あんた私の駒なのに!!どうして!?私を置いていくの!無視できるの!!」
拒否否定激怒憤怒激昂焦燥消沈孤独孤独孤独孤独孤独。
仮初の筈だった愛情が暴走を起こし、皆啼を狂乱させた。
「置いてかないで!!」

「私を一人にしないでよ!!!」


だが既に行科の背には、その叫びの一切が物理的に耳に入らないようになっていた。
不可視の厚い壁が行科を取り囲む。
視界が白く切り替わる。空間の跳躍を細胞が感じ取った。






光と線の溢れる空間が目の前に広がる。
そこでは空間の橋渡したる機械人形メイデアが、渡る資格のあるものだけを隔離していた。

「ようこそオーナー。お待ちしておりました。」
「いひひひ、遅いよ〜。」
「……。」
セミロングの女子高生?と押し黙って座っている眼鏡の青年が、機械人形の横に立っていた。

「ったくよう、オーナーが良くわからんことになったせいで僕らの移動まで干渉されちまったぞ……。」
「ひひ、そんな事言わないの〜。」
「能天気だなあ君ぁ。」
問答を聞き流す。
暗い男と、皆啼とはまた違った笑い方をする女だ、程度にしか行科は感想を抱かなかった。
二人の無関係な明るさは行科の心には何も波風を起こしすらしなかった。

ただ今は、何をすべきか。
疎通剣の使い方を心が理解していた。
「俺は。」
行科が深く深呼吸する間、メイデアはただ佇み、頬に燐光のラインを光らせ、プログラミングされた瞬きを行う。
「……二人を、俺に巻き込まれて死んだ二人の、生きてる世界へ。」
俯いて二人に思いを馳せる行科に、思わぬ冷淡な答えが返った。
「オーナー。その願いは受諾できません。望まれる世界はオーナーを基準として作られます。」
「……。」やりきれないように、顔を顰める行科の後ろで、眼鏡の青年が口を挟む。
「ヘッタクソだなぁ。元はといえば全部あのクレイジーサイコビッチのせいだろ?」
「……テメェ。」ころころと歪む行科の表情は、ナイトハンドリングの支配下から抜け出してすぐの不安定さを見せていた。
殺気溢れる視線を無視して眼鏡の青年は続ける。
「あの女が存在しない。それ以外はなーんも変わらない世界。行きゃいいんだよ。」
「……なるほどね。」
少しの間俯いて、何かを考えている。

幾許かの間を置いて、漸くメイデアに歩み寄る。
「俺を、皆啼ゆうと出会う前に戻してほしい。そして、皆啼ゆうじゃなくて、あの二人と、生きたあの二人と出会わせてくれ!!」
メイデアの頬のライン、明かりがふっと消える。
「イエス、オーナー。受諾いたします。」
突如ぎゅるり、と背を後方に逸らす。
肋骨から剣が咲き、両の手でそれを引き抜く。
ずるりずるりと、白銀の長剣で出来た背骨を引き抜き、自分の胸に掲げ……貫いた。
そこから爆発的に無機物の結晶が咲き乱れ、燃え広がる炎のように急速にドアを形取った。

(これでいいんだ。)
行科は最後に皆啼の言葉、両親は自分が殺したという言葉を信じてしまった。
そんな事をやり直すなんて、なんだか両親にひどく申し訳ない気がして出来なかった。
一瞬感傷を瞳に浮かべる。……すぐに振り払い、甲高く脈打つドアに扉を触れる。



あの二人を、せめて。
やり直すんじゃなくて、あの二人を……。
行科は扉をそっと開いた。


オーナー:elec.

評価数:3
(clown)(piyo)(samantha)


お疲れ様でした。elecさんとかけて本当によかったです。最後の最後でしっかりまとめてくれてありがとうございました。 (samantha)(03/30 19時12分25秒)