名前:適当伯シャロロム
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/0/0/2/高斬/”冷徹なる”ゴルヴォス>
 ・召喚剣<5/0/3/2/死鏡鏡護/錬剣術師まくろ=こすもす=りーん>

設定:
 適当伯領は伯爵が適当だったので軍事力があんまなく、危機に陥っていた。

「うっひゃー、どうするんですかシャロロム様。先代より続いた(続いていなかったかもしれないが……)このシャロロム領もおしまいですぞ〜」
「あわてるな、宰相ウツセミ。こんなこともあろうかと最高の傭兵と最高の鍛冶屋を雇った」
「なるほど、これはたくましい……」
「彼は最高の舌を持っている」
「それは頼もしい!それでこちらの小さな(僕が巨乳好きであることは、テレパシーで今僕の頭の中を読んでいるみなさんに明言しておきますぞ〜)鍛冶屋さんは……」
「まさしく最高の腕を持っている――特にお菓子は絶品だ」
「アハハハハハ、それはそれは、わが国もこれで安泰というものですな!」

 ウツセミは最初から登場していた。ウツセミは気が狂っていた。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:5
(nitoro)(utsm4)(かに)(GeoK)(hosa)


だがペタ胸もこよなく好きである。 (utsm4)(05/01 03時19分46秒)

気が狂っている! (hosa)(05/17 16時07分18秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・召喚剣<5/0/0/2/魔魔魔魔魔魔魔/まくろの攻城兵器>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<5/0/3/2/死鏡鏡護/錬剣術師まくろ=こすもす=りーん>
 ・裏切書簡

設定:
「な、なんということですぞ〜。あのゴルヴォスとやら、さっさといなくなってしまいましたぞ」
「あいつは雲だよ。誰にも捕らえられない」
「わ、わたくしどもは雲をやとったわけではありませんぞ〜(雲を雇うくらいなら狸耳少女を雇いたい、とテレパシーを使ったスパイ活動に勤しんでいる各国諜報機関の皆様に申し上げておきますぞ〜)」
「待ちなよ。あんたたちはあいつに何を望んだ?『どの国にも負けない軍事力をこの国に……』だろ?約束はもう果たされたよ。あいつの置いていった2本の剣がある」
「み、認められませんぞ!占い師は出てきなさい!裏切り者は片っ端から吊ってやるざんす〜!」

これが後に元老カバホアと並んで歴史に悪名を刻む宰相ウツセミの暗黒時代の始まりだった。適当伯は適当だったのでウツセミの好きにやらせていた。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:3
(tosatsu)(utsm4)(heterodyne)


名前:適当伯シャロロム
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:3
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/3/0/3/斬高高/スイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<5/0/0/2/魔魔魔魔魔魔魔/まくろの攻城兵器>

設定:
 宰相ウツセミの密告政策により、適当伯領は血と裏切りが吹き荒れていた。ウツセミに裏切り者と見なされないために、人々はこぞって無実の仲間を売ったのである。
 膨大な密告に対処するためウツセミは裁判を廃止し、定石と呼ばれる制度を新たに定めた。これは矛盾する訴えがある場合に、その訴えの内容や人数によってどちらの意見が正である確率が高いか、またどちらが正であるかは別として、被告の隣に住んでいる人間や家族が邪心を持っている確率はどの程度であったか、等の統計をとり、これに従って裁きを下すのである。この恐るべき時期、こどもたちの憧れの職業は1位が占い師で2位が霊媒師であった。
 ウツセミを見かねたまくろはウツセミを前にしながら伯爵に提言した。
「しゃろろむ殿、このような者に政治を任せていては国が滅びますぞ〜!」
「しかし、ブレイスヴァは滅びるまい」
「ブレイスヴァは滅びません。しかしブレイスヴァは滅びでもあるぞ」
「国が滅びると困るだろうか」
「一般的には困りますが、個人的には困りません」
「わしも今それを考えておったのだよ」
 これが歴史にその名を刻むアゲルトヘルトの三者鼎談である。鼎談はもともと三者会談を表す言葉であるが、命名者であるミュカレモントが「会談をちょっとかっこよく言った程度の言葉」だと思っていたため、頭に三者をつけてしまったのだ。これが誰からも指摘されず定着してしまったのは、シャロロム領の知識人たちがこぞって適当だったからと考えられている。
 その後、伯爵の返答に失望したまくろは業務を終了して盾国ジニスターへ旅立った。
 この時期、剣国と争っていたジニスターに、神経を逆なでしかねない練剣術師がなぜ赴いたかは不明である。案外まくろも適当だったのだろう、と伯爵は当時を振り返る。

 ここに至りウツセミの悪評を挽回するため、適当伯領随一の厳密家、ウツセミの娘であるスイーツ京子が自ら前線で剣を振るうことを決意した。
 これまでの適当伯領への貢献を考えると現在のウツセミの評価は低すぎる、と、厳密家の血が騒いだのである。
「な、なりませんぞ〜。京子ちゃんをそんな危ない目に合わせるわけにはいかないざんす!(テレパシストの皆様に特別なメッセージを用意する余裕もないほどの慌てぶりを表現いたしますぞ〜!)」
 もちろんウツセミはこれに反対した。親として娘が心配であるし、だいたいこんなことしたら「ウツセミは売名のために娘を危険な戦場に送った」と悪評がうなぎのぼりなのは目に見えているからである。
 しかし、京子は居並ぶ廷臣に向かって出陣の決意を述べた。
「血の愛が私を守ります。愛とは、愛するもののいなくなったあとも、その愛したものを愛し続けることです。私が戦死したら、私の愛したこの適当伯領をみなさんは愛してください」
 これは最近よその国からやってきた商人から聞きかじった話が元になっており、京子はこの話を1回しか聞いておらずあまりよく理解していなかったので、説明も不明瞭なものとなった。愛については語っているが肝心の血の愛については何も言っておらず、血の愛が自分を守る根拠などもはっきりとしない。
 しかし、居並ぶ廷臣たちはそもそも京子が何を言っているのかさっぱりわかっていなかったので瑣末ごとは気にせず、勢いに押されて「いいんじゃないっすか」と京子の言い分を擁護した。廷臣たちもやはり適当だったのである。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:2
(kusa_hen)(heterodyne)


名前:適当伯シャロロム
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/3/0/3/斬高高/スイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/2/魔魔魔魔魔魔魔/まくろの攻城兵器>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<20/腰/骨/2/凹面鏡、合わせ鏡、余命三秒、女王命令/琥珀丸>

設定:
 宰相ウツセミの密告政策により、適当伯領は血と裏切りが吹き荒れていた。ウツセミに裏切り者と見なされないために、人々はこぞって無実の仲間を売ったのである。
 膨大な密告に対処するためウツセミは裁判を廃止し、定石と呼ばれる制度を新たに定めた。これは矛盾する訴えがある場合に、その訴えの内容や人数によってどちらの意見が正である確率が高いか、またどちらが正であるかは別として、被告の隣に住んでいる人間や家族が邪心を持っている確率はどの程度であったか、等の統計をとり、これに従って裁きを下すのである。この恐るべき時期、こどもたちの憧れの職業は1位が占い師で2位が霊媒師であった。
 ウツセミを見かねたまくろはウツセミを前にしながら伯爵に提言した。
「しゃろろむ殿、このような者に政治を任せていては国が滅びますぞ〜!」
「しかし、ブレイスヴァは滅びるまい」
「ブレイスヴァは滅びません。しかしブレイスヴァは滅びでもあるぞ」
「国が滅びると困るだろうか」
「一般的には困りますが、個人的には困りません」
「わしも今それを考えておったのだよ」
 これが歴史にその名を刻むアゲルトヘルトの三者鼎談である。鼎談はもともと三者会談を表す言葉であるが、命名者であるミュカレモントが「会談をちょっとかっこよく言った程度の言葉」だと思っていたため、頭に三者をつけてしまったのだ。これが誰からも指摘されず定着してしまったのは、シャロロム領の知識人たちがこぞって適当だったからと考えられている。
 その後、伯爵の返答に失望したまくろは業務を終了して盾国ジニスターへ旅立った。
 この時期、剣国と争っていたジニスターに、神経を逆なでしかねない練剣術師がなぜ赴いたかは不明である。案外まくろも適当だったのだろう、と伯爵は当時を振り返る。

 ここに至りウツセミの悪評を挽回するため、適当伯領随一の厳密家、ウツセミの娘であるスイーツ京子が自ら前線で剣を振るうことを決意した。
 これまでの適当伯領への貢献を考えると現在のウツセミの評価は低すぎる、と、厳密家の血が騒いだのである。
「な、なりませんぞ〜。京子ちゃんをそんな危ない目に合わせるわけにはいかないざんす!(テレパシストの皆様に特別なメッセージを用意する余裕もないほどの慌てぶりを表現いたしますぞ〜!)」
 もちろんウツセミはこれに反対した。親として娘が心配であるし、だいたいこんなことしたら「ウツセミは売名のために娘を危険な戦場に送った」と悪評がうなぎのぼりなのは目に見えているからである。
 しかし、京子は居並ぶ廷臣に向かって出陣の決意を述べた。
「血の愛が私を守ります。愛とは、愛するもののいなくなったあとも、その愛したものを愛し続けることです。私が戦死したら、私の愛したこの適当伯領をみなさんは愛してください」
 これは最近よその国からやってきた商人から聞きかじった話が元になっており、京子はこの話を1回しか聞いておらずあまりよく理解していなかったので、説明も不明瞭なものとなった。愛については語っているが肝心の血の愛については何も言っておらず、血の愛が自分を守る根拠などもはっきりとしない。
 しかし、居並ぶ廷臣たちはそもそも京子が何を言っているのかさっぱりわかっていなかったので瑣末ごとは気にせず、勢いに押されて「いいんじゃないっすか」と京子の言い分を擁護した。廷臣たちもやはり適当だったのである。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:2
(elec.)(kusa_hen)


名前:適当伯シャロロム
HP :0
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/0/0/2/魔魔魔魔魔魔魔/まくろの攻城兵器>
 ・召喚剣<20/腰/骨/2/凹面鏡、合わせ鏡、余命三秒、女王命令/琥珀丸>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<0/3/0/5/高高/スタラ将軍>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>

設定:
 凱旋した京子を報道陣が取り囲んだ。一面の見出しは「救国の血の愛」となるはずだった。
 しかし、京子は出陣前のハイテンションで聞きかじりのうろ覚えで語った血の愛について、今さら聞かれても恥ずかしくなってしまった。戦場でも(よく考えたらあれは何言ってるかわからなかったな)と反省していたくらいなのだ。報道陣には悪気はなかったが、いじられているような気分になってしまったのも無理からぬことである。
 京子は「無礼者!」と報道陣を一喝し、自室に閉じこもった。記者たちはインタビューが得られなかったので様々な憶測を交えて一面記事を書かねばならず、これがまた厳密家の京子をいらだたせた。以降、京子は自室を中心とした狭い収束半径の中に閉じこもることになる。これが竜宮音木草に言うスイーツ岩戸事件である。
 ここで琥珀丸が登場する。琥珀丸はデッサンが狂っていた。スパイにもかかわらず見るからに怪しい姿をしているが、「どうせスパイをするならこんなに怪しい人物は使うまい」と、かえって怪しまれなかった。
 琥珀丸は剣の女王アリスの密命を帯びて各国を巡っていた。諸侯が争い分断されているデクスター内の各領を回り、情報収集をするのが彼の役目だ。要人の暗殺までは命じられておらず、このあたり、女王アリスのぬるいところである。しかし、スパイとしての信頼と実績を高めるためにアリス直属軍との戦いも演じており、当然のことこれにより多くの人命が失われる。しかしこちらはアリス女王のタブーには触れぬようであり、歴史家シモン=ヴェールフは「適当伯領に限らず、デクスター国内全体が適当だったのではないか」と分析している。
 しかし、さしもの琥珀丸も、最近までバカンスに行っていた名将スタラの目はごまかせなかった。この人物は適当ながらも実に優秀なのである。
「シャロロム閣下。あのようなよくわからぬ者に好き勝手させているのは感心しませんな」
「しかし、あの者は先の戦いでも武勲を上げておる。そう疑ってかかるものではない」
「閣下の寛容の精神、このスタラ感服するばかりでございます。しかし、あれはいけません。これより戦場の指揮は私が採ります」
「よかろう。して、何か策はあるのか」
「戦には腹に、考え事には脳に、つまるところどちらの場合も腹に栄養が必要です。まずはラーメンを食べましょう」
 するとシャロロムは大いに感心しうなずいた。シャロロムもラーメンが大好きなのである。
「古来より、戦のできるものほど食事を大切にするものだ。わしはここに、『食を蝕して戦の職を失う』と、だじゃれを言ってみたい」
 スタラは目を閉じ、伯爵の発言をよく吟味してから答えた。
「なんとも立派な格言にございます。子々孫々に渡るまで、戦人の間に語り継がれる金言でありましょう」
 いつものウツセミは、この適当な会話を聞きながらただただ不安に怯えていた。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:3
(elec.)(utsm4)(kusa_hen)


>ここで琥珀丸が登場する。琥珀丸はデッサンが狂っていた。
虚航船団ふいた (elec.)(05/13 01時06分53秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:4
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/0/0/4/速鏡熱衝絶/弑する愛>
 ・召喚剣<20/腰/骨/2/凹面鏡、合わせ鏡、余命三秒、女王命令/琥珀丸>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<0/3/0/5/高高/スタラ将軍>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>

設定:
「ウツセミよ、あれはなんだね」
 シャロロムより渡された双眼鏡を覗くと見えたのは、城内より持ち出した攻城兵器を操って、得体の知れない怪人物たちとともにシャロロム領に攻め入ってくる娘・京子だった。
 ウツセミは顔を真っ青にして、思わず手にしていた双眼鏡を取り落とした。というナレーションとともに、自分の真っ青な顔、震える手つきを思い描いた。
 実際には、顔色はよかった(昨日の晩はラーメンを食べていた)し、双眼鏡も落としていなかった。人はなかなか、不測の事態に漫画や演劇のようには振舞えぬものである。人に渡された双眼鏡を落としたら落としたで問題ではあるが、そこまでうろたえている自分を表現できれば心証は悪くないのではないか、とウツセミは考えていた。
「裏切りというのはたいへんなことだ。こちらは減ってあちらは増える。敵が増えただけの場合、もしくは味方が減っただけの場合と比べて、その戦力差差は2倍だ」
 ウツセミに背を向けたままシャロロムが語る。
 適当で知られるシャロロム伯がいつになく厳密だ。ウツセミは覚悟を決めていた。こうなっては、わざと双眼鏡を落とす演技など何の役にも立つまい。
「ましてや、そなたは裏切りを許さぬとして大量処刑も行っている。それがこの結果……何を意味するかわかるな?」
「覚悟はしており」
「伯爵様。ピッツァができましたぞピッツァが」
 言いかけたところで、料理人がやってきた。執事が呼びに来そうなものだが、大方執事も適当なのだろう。
「ピッツァだと? なにがピッツァだピザのくせに」
「ピザかどうかは見ていただければはっきりしましょう、さあ下りてきて御覧なさい。遠きものは音に聞け、近きものは目にも見よ。さらに近きは鼻にて嗅げ、なおも近きはその手に触れて、いまだ足らずば舌にて味わわん……」
 適当伯の適当で文脈を無視した返答にはしばしば人はたじろいでしまうのだが、幼い頃よりともに森に川に遊んだ友でもあるこの料理人は伯爵の扱いを心得ている。歌うように滔々と並べ立てながら、伯爵の背中を押して出て行ってしまった。

 ひとり残されたウツセミは、どこへ行くともなく城下町へさまよい出た。町民のウツセミを見る目は冷たい。かの暗黒政策の結果として当然である。
「……夢も命も、物語も必ず終わります。みなさんが読んだり聞いた話では、神がなぜ世界に死や不幸を残したのか、いろいろに説明がされていると思います。死をよいものだと語る神話まである! お笑い種です。こんなものは詐術に過ぎません。
 もっと簡単に考えましょう。全能なのは神ではなくブレイスヴァなのです。万象の滅びがブレイスヴァの証であり、我々はブレイスヴァの気まぐれと慈悲によって生き延びているに過ぎません。そう考えた方が、慈悲によって命を与えた神が死をももたらすなどというわけのわからない話よりもよほど納得がいくでしょう。
 僕はみなさんに弑する愛を伝えるために来ました。みなさんは必ず死にます。正確に言うと、必ず弑されます。みんなに、その覚悟を持って毎日をよく生きてほしい。どんな覚悟を持っていてもブレイスヴァはその覚悟を打ち砕いてきますが、それはそれとして……」
 ウツセミは公園の片隅に腰を下ろし、このよそから来た奇妙な生き物の演説を聞いていた。以下はウツセミの頭の中で想像再生された地の文と会話である。
 ウツセミはこの演説を耳にすると、「弑する愛」のところを聞いて飛び掛り、人だかりをかき分けてこの生き物の胸ぐらを掴んだ。
「お前のせいだ、お前のせいで娘は……」
 血走った目で、息荒くウツセミは詰め寄った。周りの人間が引き剥がそうとしたが、普段のウツセミからは想像もつかない力で抵抗した。いや、抵抗というよりも岩のようにまったく動じなかったのだ。
「お前みたいなやつが娘に変な愛を吹き込んだせいで、」
 ウツセミの殴打が生き物を襲う。いや、襲ったのはやっぱりなしで生き物が返答する。
「娘さんに何があったのかはわかりません。いったい何があったのですか」
「前にやってきた商人が、娘に血の愛だかなんだかを吹き込んだんだ。そのせいで、娘は妙に興奮して戦場に行った。無事帰ってきたが、その血の愛が原因で部屋に引きこもってしまった。私にはあの子が何を考えているのかさっぱりわからなくなった。そうして家庭のことから目をそらしているうちに、あの子は私を置いてどこぞの得体の知れない国に寝返ってしまったのだ。私は処刑はまぬかれないだろう。あるいは逃げるしかない。しかし、伯爵はもはや私を許しはしないだろう。家族を連れて逃げようとすればたちまちに捕らえられよう。すべてを捨ててこっそり逃げるか、しかしそれでは残された家族に迷惑がかかる……」
 これはウツセミが問題に陥ったときに行う思考の整理法のひとつであり、このように頭の中に自分と聞き役を設定し、対話形式で自分の置かれている状況をまとめるのだ。
 ウツセミは、フィクションの中に現れる激情型の人間になれたらどんなに楽だろうと考える。私は今、この無関係なことが明らかな生き物に八つ当たりをしたいのだ。八つ当たりをすることによって、娘の裏切りに動揺した自分の心理を表現したいのだ。そのような目に見える動揺を表現していれば、それこそ心から娘を愛している証であり、そうならないのは自分で思っているほど娘を大事に思っていないからのように感じられ、その気まずさから逃れたいのだ。
 しかし、そのようなことはできるはずがない。ウツセミは人狼で負けた相手をカス呼ばわりするところを除けば基本的に善良な人物であり、分別もあるのだ。
 密告体制時に処刑されたとされている人間は実は全員生きている。処刑を目撃した人間はいない。伯爵にも真相は明かさず、ウツセミの独断である場所にかくまってある。恐怖により裏切りを防ぐための擬装である。無実の人間を殺害するほどの度胸はウツセミにはなかった。
 この事実を明らかにすれば、自分への悪印象も軽減できよう。しかし、それは同時に裏切りへの抑止力が失われることも意味する。戦争が終わるまで、この秘密は守りたかった。かといって、自分が死んでしまえばいずれあの中から誰かが抜け出し、真相を語ってしまうだろう。

 ウツセミが頭を悩ませているころ、シャロロムはウツセミを探していた。「それがこの結果……何を意味するかわかるな?」の続き、「お前も相当な適当者だな」を言いたかったのである。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:2
(suika)(heterodyne)


琥珀丸のくだりもそうだったけど、人狼的思考法が巧みに表現されている。
ウツセミさんメタとして完璧 (heterodyne)(06/18 13時00分35秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<20/腰/骨/2/凹面鏡、合わせ鏡、余命三秒、女王命令/琥珀丸>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<0/3/0/5/高高/スタラ将軍>

設定:
 宰相ウツセミは嵐の中を放浪していた。顔に吹き付ける水しぶきも、声を口の中に吹き戻してくる荒れ狂う風も気にも止めず、天に向かって吠えていた。
「おお、天も荒れよ、風も叫べ!わが心を代弁するがいい!たとえ大陸を水没させるほどに降り注いだとて、その雨はわが心の涙とは比べようもないわ!私は娘との絆も失った!領民の信頼も失った!伯爵に仕える喜びも失ったのだ!稲妻よ、この俺を撃つがいい!すべての光を失ったこの俺の闇を恐れぬならば!」
 稲妻が光り、ウツセミを照らし出した。ウツセミは稲妻の落ちた方角を睨みつけ、何ごとか吠えた。しかし、その声は続く雷音にかき消されてしまった。
 という情景描写を考えながら、ウツセミは宿の2階でコーヒーを飲んでいた。ウツセミは若い頃作家志望だった。一度そうした夢に捉えられてしまった者は、自分のあらゆる心理状態を言語表現に置き換える癖が抜けぬものである。
 ウツセミにはつくづく、こうしたときに誰が見ているでもないのに嵐の中で狂乱の振る舞いのできる者がわからない。そうした人間がフィクションの外に実在していることをウツセミは知っている。彼らが自分のような反省を経ることなく、激情によって即座に狂乱へ到るのか、似た反省を通り抜けた上で狂態に何かの意味を見いだしているのか、誰かが見ているのをなんらかの方法で悟って演技としてやっているのか、誰かが見ていることにして演技だと自分に偽って狂気に身を委ねるのか。
 いかなる仮定をしても、自分がそのような狂態を演じることはない。本当に何もかもを失ったと感じている、失ったものを大事に思っていた者ならばそのような狂乱に至れるのか、単に理性と知性の劣る証でしかないのか。つまるところ自分は賢いのか、賢さに酔って人の心を失っているのか。
「コーヒーのおかわりをお持ちしました」
「ありがとう」
 コーヒーは暖かかった。だが、ウツセミの心は冷えきっていた。という描写をウツセミは考えた。
 明くる日、ウツセミは宿を出て宛てなき彷徨を再開した。何も持たずにふらっと来たが、身につけていた上質の衣類と高価な装飾は路銀として十分だった。
 林の中を進んでいくと、ほどなく視界が開け、見覚えのある風景に出くわした。密告の結果捕らえられた児童を集めた、平原の縁に立つ施設、ヘブンズリバーの収容所だ。
 ウツセミは収容所を回り込み、雨上がりの大平原を見渡した。<無限の射程>に広がるかのようなその大地と空の景観は、なぜか娘を思い出させる。
 char型の変数'A'はint型として読みとられた場合には65であり、逆に言えば、異なる複数の概念が同一の値として保存されるように、京子とヘブンズリバーの光景とはそれぞれ異なるコードの同じ値として脳に記憶されているのかもしれない。
「あれっ、ウツセモさんじゃないっスか。こんちはっス。娘さん、裏切ったそうっスけどだいじょぶっスか。バッチリっスか。あれ、随分サッパリしたかっこっスね」
 背後からの呼びかけにウツセミの思考は中断した。浅黒い肌に頑丈な体のソルダスだ。ヘブンズリバー収容所の職員の中でも、空気が読めないことでは右に出る者のいない人物である。
 なんと返したものか考えあぐねていると、ソルダスは勝手に喋り出した。この男は人と話すのが好きだが、人の話を聞くのが好きなわけではないのである。
「いやー、実は参ってたとこだったんっスよ。こどもたちにエスパーがいたらしくって、逃げられちゃったんスよ。中央の方へ向かったみたいっスけど。あ、サボってわけじゃないっスよ。服務規程にも『収容者に超能力を使わせてはならない』とはなかったわけっスから」
 ウツセミはしばらくソルダスを硬直した顔で見つめていたが、ソルダスが返事を促して肩に手を伸ばしかけると、首の支えを失って顔は上を向き、体は傾いて倒れた。
 以上は無論、ソルダスの話を聞きながらマルチスレッドで組み上げられたウツセミナレーションだ。そうそう都合よくショックで気を失うなどできぬものなのだ。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:1
(suika)


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<10/0/0/2/速熱絶絶絶速/兵士ソルダス>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<0/3/0/5/高高/スタラ将軍>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>

設定:
「ねえ京子、私は何が足りなかったろう。愛情が足りなかったかい」
「生まれてきた時点で人は愛されています。愛情は十分にいただきました」
「それじゃあ何が足りなかったろう」
 京子は答えない。が、ウツセミは京子が血の愛を残していないことが理由であると察する。それは京子の考えではなく、ウツセミの考えた京子像だ。京子に何が足りていないのかは決してわからない。ただ、ウツセミが京子には足りていないものがあるに違いないと思っているだけだ。京子は愛の痕跡を残せなかった。自分がいなくなればもはや、京子は誰の記憶にも残らなくなってしまう。
 コーヒーに口をつけて、隣の席にいる京子の手を握る。
「ほんとにデカセクシスは残ったままでいいの」
 しかし、振り返ると京子はもういなかった。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/2/速熱絶絶絶速/兵士ソルダス>
 ・召喚剣<5/3/0/3/衝衝衝/ミスポルム>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<20/0/0/2/速熱絶絶/ダランベール>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・裏切書簡

設定:
 適当伯領に帰り着いたウツセミを、スタラ将軍は暖かく迎え入れた。適当伯領に帰り着くと、すぐさま兵隊が駆けつけ、ウツセミを捕らえた。適当伯領は激怒した超能力少年団によって既に壊滅していた。様々な描写を考えながら、ウツセミは適当伯領へと戻った。
 ウツセミは幼い頃に何度かこうしたまじないを行っていた。原理は「想像したことは起こらない」というジンクスだ。想像もしなかった失敗やトラブルに何度か出くわしたあとで、幼いウツセミは「想像していたことは起こらない。逆に悪い結果をすべて想像しておくことによって、それらを回避することができる」という個人的なオカルティズムに辿りついたのだ。
 都合のよい結果を想像してしまうのはその可能性を潰すことになるため、なるべく考えないようにする。それでも、頭の中についそうしたアイディアは沸いてくるものだ。そうしたときウツセミは、ほかに創造もしなかった都合のいい結末が現れるのを期待しながら、精一杯悪い想像をする。
 今回も、ウツセミの想像はまるで外れていた。適当伯領はスタラ将軍の離反に混乱しており、ウツセミどころではなかった。
 ヘブンズリバー方面より現れた超能力少年団はスタラ将軍を精神支配して連れ去ってしまった。機を同じくしてスパイ活動を行っていた琥珀丸が消え、シャロロムは軍事の二本柱を失ったかっこうになる。適当伯シャロロムは謎の力を持った少年団に対処するために、外国より学者ダランベールを招聘した。ウツセミが帰り着いたのはちょうどそのときである。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:1
(stara)


うっかり洗脳 (stara)(05/25 12時44分15秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/2/速熱絶絶絶速/兵士ソルダス>
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<20/0/0/2/速熱絶絶/ダランベール>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱速衝衝/貴公子アンヌ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・裏切書簡

設定:
「おお、ウツセミ。しばらく見なかったな」
「あ、はぁ、まあ。あんまり怒ってなさそうなので適当に話を合わせることにいたしましたぞ〜! それで、こちらの方が学者の……」
「数学と哲学・物理学を研究しています」
 ダランベールが一礼する。
「と、いうことは超能力については……」
「まったくの素人ですね」
 狂笑の兆候を見せたウツセミに適当伯が釘を刺す。
「そう笑ったものでもないぞ、ウツセミよ。専門が違うとはいえ学者には違いないのだ。中華の料理人は中華が専門ではあろうが、我々よりは和洋の料理も上手にやってのけるに違いない」
「なるほど、何か名案が……そう言うウツセミの顔は既に破滅を予期した狂気の笑いの影を覗かせているのであったが……」
 ウツセミの狂言動を二人とも気にしなかった。適当伯は適当であったし、ダランベールはこいつらはみんな適当なのだろうと諦めていたからだ。
「超能力もビジネスも、まず人があってこそです」
 なぜかビジネスに話を広げるダランベール。弱冠26歳にして学者としての名声を持つ彼であるが、高校時代の動機などからはやっかみから「社会を知らない」と揶揄されがちである。これは揶揄した本人の見えないところで行う復讐行為、自分は俗世の事情にも詳しいのだという見栄張りである。
「なるほど」
 納得するシャロロム。顔を引きつらせたままのウツセミ。
「そこで、超能力の元となっている少年団に大砲を打ち込んでみるのはどうでしょう……」
「うむ、『戦争は大砲に始まり大砲の弾とともに尽きる』というわけだな……」
 ウツセミの哄笑がけたたましく響く中、傍仕えの名言官タクストゥスがシャロロムの発言をさっそく書き付けた。名言官はウツセミの留守の間に新設された役職で、シャロロムの名言を記録し保存するのが役割である。スタラ将軍がとらわれてシャロロムが思わず「今宵満月引き抜きラーメン」ともらすと、翌日には城下有数のラーメン屋である骨麺亭より「引き抜きラーメン」(満月を表したものか、生卵が乗せられている)が売りに出された。これは適当伯領の経済に与える影響が大きい、と宰相補佐ダウィッドより進言されたのだ。
 貴公子アンヌはこのやり取りを遠くに聞きながら、鎧を身に着けていた。弱冠12歳の京子と結婚するのではと噂されたシャロロムの息子、領内に並ぶもののない良識家にしてロリコンである。彼は29歳であった。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:1
(suika)


ついに脳内ナレーションが口から。 (suika)(05/28 00時57分00秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<10/0/0/2/速熱絶絶絶速/兵士ソルダス>
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<20/0/0/2/速熱絶絶/ダランベール>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・裏切書簡

設定:
 鎧兜をまとって勇ましく出陣した貴公子アンヌが、何の戦果も挙げず凱旋したのは翌日のことであった。凱旋というのは勝利を収めて帰還することであるが、適当伯領では地の文も適当なのである。
 その顔は紙のように白く(髪があまり白くない文化圏にお住まいの方は申し訳ない)、出てくる言葉はおとぎ話の切れ端のようなものばかりだった。スタラ将軍と同じく、超能力による恐るべき精神攻撃を受けたのだろうと予測が飛び交った。気弱官ダムシェルはこの噂を聞いただけで気を失って倒れ、4時間25分程で気を取り戻した。これにより、アンヌ狂乱の衝撃力は4.25フレンツェルと計測された。ダムシェルの測定は後世の歴史家からも評価が高く、衝撃力学の教科書には間違いなく名気絶として記載されている。
「いやー、たいへんっスね。どんどん人が減ってっちまうっスね。戦争もビジネスも人が第一である。あ、これあの学者のモノマネっス」
 ソルダスが余りまくっている大砲の弾をバランスボールに使い、上に寝そべって背中を延ばしながら言う。伯爵の名言効果で各武器屋競って大砲関連グッズばかり作り、大砲の弾が切れたら戦争も終わりという名言を様々に曲解し、発射しない飾りの弾や、大きすぎて大砲に込められない弾、縁起のいい双子弾など次々に役に立たないものを作った。
「京子さんとかあれきり見ないっスけどどうしてるんスかね。なんとなくもう出てこない気がするんスよね。あ、もちろん帰ってきた方がいいと思ってまスよ。ウツセモさんもアンヌさんも京子さんが第一である。っスからね。なんつて」
 メヘヘヘ、と、縁起のいい双子弾で足の裏をマッサージしながら笑うソルダスを、ウツセミはしかし怒らない。ウツセミはこうした不謹慎な発言は大嫌いであるが、ソルダスは空気が読めないのが仕事のようなものと諦めていたし、ウツセミもなんとなく京子にはもう会えない気がしていたからだ。
 ヘブンズリバーのあの風景を見たときに、何となく京子にはもう会えないだろうと本能的に感じていたのである。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<20/0/0/2/速熱絶絶/ダランベール>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>

設定:
「煩悶し、適当伯城を一人行き来するウツセミ。ヘブンズリバー方面より現れた超能力少年団の正体が知れてしまえば、ウツセミの裏切り防止策は水泡に帰す。だが、既に防止策など何の役にも立っていないのではないか……と、後ろから肩を叩かれる。振り返るとそこには、適当伯その人である。いかぬ、この方には秘密を守らねばぬ」
「日々悪化するウツセミの狂言動に心を痛めるシャロロム。シャロロムはウツセミの気持ちを理解するべく、狂言動を真似てみる。何やら秘密があるようだな、ウッツよ。シャロロムはウツセミの心中を鋭く看破する」
「ギクリという音が耳に聞こえたようにぞ思う。いや、ならぬ。今はまだ早い、平然としていなくては。ウツセミはキリリと表情を引き締める」
「何やら面白そうなことをしている。このソルダスも一役買って出るとしよう」
「あれに見えるはソルダス。空気が読めないだけに裏切りとは無縁と考えられていたソルダスの裏切りは適当伯領に大きな衝撃を与え、この気弱官ダムシェル、三日三晩寝込んだ。果たして、ソルダスの裏切りは誤報にあったか」
「この決死を表現した表情、伝わらぬは遺憾なれども、今は些事を気に病んでいるときではない。『あっ、ウツセモさん、シャロロモ閣下、お久しぶりっス。今日はお別れを言いに来たっス』」
「ソルダスの語る内容はにわかには信じがたいものであった。洗脳を受けながらも類い希なる空気の読めなさを発揮し、魔少年らに交換条件を持ち出したソルダス。捕虜がこのような態度をとるのは初めてであり、洗脳するにしても本人の納得を得なければいつ洗脳が解けるかわからぬ、交換条件は是非とも受け入れるべきだとひとごとのように説得するソルダスに、いかに超能力を持つとはいえやはり少年、言われてみればそんなような気がしてソルダスを解放してしまったのだ。あっぱれなるかなソルダス、敵の手に落ちてなお、我らへの情報伝達を交換条件に持ち出すとは。適当伯領随一の空気の読めぬ男として、その名は末代まで語られよう」
「い、今までどうすればいいのか迷っていた名言官、ここでついにが、がわ、我が意を得たりとふれ、筆を構える」
 名言官はあんまり喋んないのでたまに喋ると噛んでしまうのだ。
「名言には及ぶまい。シャロロモと呼ばれたシャロロムは手をかざし、名言官を押しとどめる。さあ、ソルダス。してお主の最後の報告とは」
「今まで謎に包まれていた例の超能力少年団の狙いについてっス。少年らは一部適当伯領側について彼らと対立してるみたいっスが、その辺の事情はわかんねっスね。ただ、目的は<楽園>を作ることっス。どっかから手に入れたポテンシャライザーっての使って、さらった人を途心に分解してるみたいっスね。京子さんは分解されてヘブンズリバーの風景を美しくするのに使われたみたいっス」
「なんということだ。するとつまり、ウツセミが青ざめた顔で(そう都合よく顔が青ざめるものか知りませんが)尋ねる」
「京子さんとは二度と会えないっスね」
「威勢よく倒れるダムシェル、今日この日は『ダムシェルの大音声』として歴史に刻まれよう……一時間、二時間と経ち、その衝撃力の大きさに周囲の者は口々にウツセミを憐れんだ。ダムシェルが二時間も気絶するほどの衝撃……気の弱い人間には想像するだに恐ろしい。やがて気を失ったまま五時間が過ぎると、ダムシェルが五時間も起きないことに衝撃を受けて気を失う者まで現れた」
「し、しかしなぁらこれだけの衝撃にさあされてなお気丈に気絶しないでおけるシャロロム様、さすがは適当伯の伯爵といぇよう。シャロルム様万歳」
「ソルダスよ、重大な情報をありがとう。して、やはり行くのか」
「行ったら俺もポテンシャライズされちまうんでしょうけどね。ま、約束っスからね。ウィンクをして鼻の下を人差し指の第二関節辺りでこするソルダス」
「約束ならしょうがないな。これまでサンキュー」
「おいたわしやシャロロム様、胸が張り裂けんばかりの悲痛な想いをこらえ、あえて軽妙な挨拶でソルダスを気負わせまいとする心遣い。今日のピッツァにはピーマンでサンキューと書かれましょう」
「夕日に背を向けて去っていくソルダス。実際にはソルダスは夕日に向かい、適当伯と愉快な仲間たちに背を向けて歩いているのであるが、ここは敢えてそれを『夕日に背を向けて』と言い表したい。なぜなら、言葉の響きとしてはそちらの方がかっこいいからだ。ご静聴サンキュー」


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:5
剣技:
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/5/0/2/高斬/チャイルド・チルドレン>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速速魔魔魔魔/人形の愛>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・裏切書簡

設定:
「京子ポテンシャライズドの報を受けて気を失ったまま息を引き取ったダムシェルの葬儀を抜け出し、ヘブンズリバーへ向かうウツセミ。そこには悲壮な決意が秘められていた。ダムシェルの計測値がいくつであったかは結局わからない。ことによるとミリフレンツェル単位だった可能性もある。だがやはり、計測可能な限界を超える衝撃値のために命を落とした可能性は拭えないのだ……それに引き替え実の父である自分は?
 狂人のふりをするとて大道を走らば狂人なのだ。京子ポテンシャライズドにショックを受け、おかしくなったふりをすれば京子ポテンシャライズドにショックを受け、おかしくなったのだ。
『でもそれは人形の愛ですよ』
 童話の中に閉じこもっていた貴公子アンヌが反論をしかける。
『たしかによく似ています。見る人皆騙されるかもしれません。しかし、何人を信じ込ませようと人形は人間にはなれません』
 返答に窮したウツセミにシャロロムが助け舟を出す。
『物語とは凡例に過ぎぬ。いや、凡例ですらなく模範、それもそうあるべきという模範ではなく、一個の見本のようなものなのだ。すべてのピッツァーノが店頭見本の通りに具材が配置されていなくてはならないわけではない。すべての娘を失った父親が同じ量の涙を流さなくてはならないわけではなく、同じフレンツェルの衝撃を受けなくてはならないわけではない』
『シャロロム閣下の助け舟、我が家の暦に“シャロロムの助け舟”として刻み込まれましょう。礼節を弁えながらも表情の優れぬウツセミ。
“(顔を上げて)ピッツァーネに例えるなら私はこねたまま焼かれていない生地、肉や野菜の代わりに布切れと木片の置かれたピッツァーニではないですか”
 沈黙するシャロロム。そしてアンヌ。
”娘の死に胸が張り裂けるばかりがよい父ではありませんよ。娘さんも天国(天国?ポテンシャライズドが?)で、気丈な父を自慢に思っていることでしょう。”
 脈絡なく現れたダムシェルの遺族。
 結局のところ、私は私にしか興味がないのだ。ダムシェルの遺族に、ダムシェルの葬儀の最中にすら空想の中で自分に都合のいいことを言わせる、これは故人に対する最大の冒涜と言えよう。
”冒涜官を新たに新設してはいかがかな、冒涜力の計測のために。そう言って死せるダムシェルはこちらを見やる。だがウツセミよ、お前の家族は宣告するだろう。
(最大の冒涜は京子の死を若い頃に志した作家の夢の残滓の餌にしていることだ)
と。
 泣くがよい、ウツセミよ。弁明よりも行動が真実を示す。狂人のごとく振る舞うは狂人だ。娘の死にショックを受けているがごとく振る舞うは娘の死にショックを受けているのだ”
”娘さんも天国で、泣きも喚きもしないお父さんに薄情さを感じていることでしょう”
 そして少年はナイフを取る。私はダムシェルの葬儀を抜け出してヘブンズリバーへ向かった。どうにもならぬを承知でその土をすくうために。紛れもなく不安定の徴だ。私は今、考えに考えた末に奇行動に移しているが、そのように考えに考えてしまうことが不安定を証ていよう』
 だが、私は証明したいのではない。
 声よ、声よ。私は何者かでありたいと願ったことなどなかった。
 声よ、私は誰に向かって話しているのだ? それとも、声が誰かに向かって話しているのか? ああ、京子よ、今日もお前の木琴が聞けない」


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:1
(suika)


木琴www (suika)(06/06 00時16分32秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<0/0/0/0//Yシャツを着用したイラストを描く事>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速速魔魔魔魔/人形の愛>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・裏切書簡

設定:
 ある朝ウツセミが子供を失った夢から目覚めてみると、自分がベッドの中でチューブをつながれた重病人になっているのに気づいた。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:1
(utsm4)


Yシャツを着用したイラストを描く事 (utsm4)(06/09 02時38分17秒)

名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/帰ってきたスイーツ京子>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<0/0/0/0//Yシャツを着用したイラストを描く事>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/血の愛>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<50/0/0/0//ジュライラ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・裏切書簡

設定:
「『お久しぶりです、お父様』
 そう言って帰ってひたスイーツ京子さん。あったく普段どおりでない再会に普段どおりの再会をするその姿は、それを装っているよぅにも見えるのであった。普通だったら、思わず感動のあまり抱きつくとかうまくしゃべれないとか、なんかありそうですよね。それが普通なんだと思うんですけど、そこがその、ふ普通を装ぉっているみたいにも見える。でもそれはそれが普通だからなのかもひれません。
『ばかな、そんあことが……』
と、ウツセミさんがこひゃえました。今これ『そんあこと』って言っちゃったかもしれまひえんが、ウツセミさんが『そんあ』って言ったんじゃなくて、これは僕の滑舌がわういんです。
『帰ってきました。Nona Gateを通っひぇ』
 Nona Gateといひますのは適当伯と争っている諸勢力のひほつで、魔王ノナ軍の秘密兵器でごじまう。それでその魔王ノナのNona Gasoは伯爵様の側ひんらならみんな知ってますから、これはスパイ!?と身構えたのも無理ならうわけです。
『Nona……Non -a, 否定の−女……ノナは野菜であり、野菜はラドゴフか誰かの心理、いや精神だったかの分析では失われた身体を表す……』
 これはウツヘミさんがそう言ったんいぇすけれど、これはこのとおりにそう言ったんじゃねくて、ラドゴフとかそんな名前でしたけどちゃんとした名前言ってました。『ラドゴフの精神分析では』というようなことを言ってはんへす。この辺はむぅかしかったのであんま覚えていないんですけえど、こういうこともあるんだなあって、伯爵様の名言記録用以外にも個ひん的な名へんとか覚えておひはいほとをメモする用のメモする紙を持ちあうこうっていう発端になりました。
『ふひつへすぞおーっ! 否定の女の、失われた身体を通っていなくなったはずのむふめがやってきたというわけですぞな!?』
と、私、あの人のしゃへりかたむずかしくてあまりまねできないんですけど、ウフセミさんがそんな風に興奮したわへでふね。そしたらサロロム様が、
『そういっはものでもないつぉ、ウヌセミ。”へきふんを通ってひたものはてきふんを知る”だ。こぇほど心強い情報はにひとしてあらん』
と、こういうふうにウツセミさんを落ちつへました。これはよく覚えてます。きひんとメモしましたはらね、『へきふんを通ってひたものはてきふんを知る』、ばっちりです」
 名言官は普段あまりしゃべらない。名言を聞き逃さないよう、極力雑音になる自分の声は出さない、と言っているが、名言官に採用される前からほとんど喋らなかったのである。
 名言官の父は息子が名言官に取り立てられたことを大変誇りに思っており、日々息子の宮廷での活躍を聞くのを楽しみにしている。父は息子との付き合いが長いので、この滑舌でも問題なく聞き取れるのだ。しかし、この「にひとしてあらん」は父にも理解しかねた。
「これ、モンセオールよ。そのにひとしてあらんというのは何かね」
 かすれるような、しかし名言官よりはまだしも聞き取りやすい声で父が尋ねる。
「にひですか。にひとしてあらんというのはですね、多うん『こんなにいいものはない』ほいうような意味つぁと思うんえすけど、そう言わてみるとふぁつの武士とかの士ってかいへ二士あのか二本の矢で二矢あのかわぁらないですね」
「そうか、それは名言逃しをしたかもしれん。だが悔やんではいけないよ。『悔やむ懐に名言来たらず』だ」
 小刻みに体を震わせながら、父はそ知らぬ顔で息子の動向に注意を向ける。名言官の息子はこの父の名言をどう受け止めるのか。しかし、名言官は話を続けてしまう。名言には及ばなかったのか、それとも息子がまたしても名言を逃してしまったのか。
「はい、ひをふへます。そぇで伯ひゃく様が
『魔王ノアいはここにいへいるほほはしあええいうおか』
っへ聞いはんえすけど、ノアはあんあいNona Gateを把握しへないみはいっすね。京子さんは自りひで入りほんでひはみはいです」
 息子の顔に悔やみは一切ない。『悔やむ心に名言は来たらず』。適当に思いつきで言ってみた名言だが、言った以上は責任がある。そう考えるとこれでいいのかもしれない。
「そえで京子さんがへっきょく先陣にたへて、魔王ノファに攻めほむことにあったんです。それでほのとき京子さんが何かすごいかっほいいほと言ってはんですけど、なんだったかあ、思い出せぬへす。
『よいがえったものなあではの』、いや違ったかな、
『ひほはかあらずひぬけれろも、だはらかひがあるとか、あれ、やっふぁいいんだ、よいがえったものだあらこその生命の大切さを……あえ、そんなんじゃなはっはかな……』」
 メヘヘヘ、と笑うわが子を、「これでよいのだ」と、己の適当に考えた格言に押されて納得する。
「今日も一日がんばってきたのだね。父は鼻が高いよ」
 名言官の父は満足に微笑んだ。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/帰ってきたスイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<10/0/5/1/盾魔/マジックシールド>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<50/0/0/0//ジュライラ>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・召喚剣<0/0/0/0//Yシャツを着用したイラストを描く事>
 ・裏切書簡

設定:
 そして我々は魔王ノアの居城へと兵を進めた。京子さんの案内で労せずして進軍することができた。
 適当伯領はもはや壊滅的な状態にある。特に気弱官ダムシェルの死後、後任は決まっておらず、領内の度量衡は混乱の極みにある。ラーメンの味が与える衝撃を計れずして、どうしてラーメンの値段を決めることができよう?
 死者を蘇らせるNona Gateによりダムシェル殿を復活させること。それ以外に適当伯領の再生の道はない。
 道中、伯爵から幾多の名言を聞くことができた。
「人は進むとき、時間も進んでいる」
「あっ、間違えて鞭持ってきちゃった」
「全軍で進撃すると、空いた城を誰かに奪われないか心配だ」
 ……私にはその豊穣な意味のすべてを計り知ることはできないが、名言官としての、名言を嗅ぎ分ける本能が反応している。後の世で大いに活用される智恵となるだろう。
 私にこの機会を与えてくれた宰相補佐ダウィッド殿には感謝の言葉もない。
 既にこの世を去った父の墓に、まだ碑文は刻まれていない。いつかこの仕事での経験を活かして、すばらしい名言を私も考え付こう。そしてそのときこそ、父の墓にそれを刻むのだ」
   ――モンセオール・アーンジュリッツ『適当伯領回想録』より


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/帰ってきたスイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/足裏健康大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<0/0/0/0//Yシャツを着用したイラストを描く事>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<50/0/0/0//ジュライラ>
 ・召喚剣<10/0/5/1/盾魔/マジックシールド>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<50/0/0/0//閉塞の五度>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・裏切書簡

設定:
「いよいよ魔王ノナとの対面というときになって、使者が魔王軍よりやってきた。巫女ミトユヰである」
「すいません、まだ準備が整っていなくて……」
「戦といえど決まりごとはある。寝ている最中に不意打ちしたり、民間人に手をかけるのは道理のわからぬ外道や獣のすることだ。特に、将軍や王の演説中に突撃をするなどはもってのほかである」
「そういうこともあろうかと、食料は多めに持ってきてある。ここでしばし休憩するのもよかろう。しかし、我々も遊びに来ているわけではない。二日、三日と先延ばしにされてはたまらぬぞ」
「巫女はしばし呆けたように伯爵の顔を見られていた。このように見事な弁舌を用意もなく滔々と述べる伯爵の知性に恍惚としていたのであろう」
「準備というのはどういったことなのかね。なんなら、我々も協力できないではない」
「な、なんということですぞ伯爵殿! 感極まってなれなれしく殿呼ばわりですぞ〜! これから戦うという敵方にあまりに深い情け、この使者の巫女もあっけに取られておりますぞ〜!」
「実は、我らが魔王さまはあまりこういう音頭をとるようなことに慣れていなくて、演説文が出来上がっていないのです。せっかくこうして伯爵自らお越しいただいたのに、演説のひとつもできないようでは礼節に欠け、真に心苦しい次第なのであります」
「そうした苦しみは私もよく心得ている。差し支えなければ協力させていただこう」
「嗚呼! 私は今、生まれて初めて漢字表記の感嘆をしている! いったい、これまでに敵方の王の演説文を一緒になって考えるなどということを行った一国の主があっただろうか。私は今この時ほど、適当伯に仕えたことを嬉しく思ったことはない」
「今のところ出来上がっている原稿はこれです」
「巫女の差し出した羊皮紙を、形式に則って一度宰相ウツセミが受け取り、それから伯爵に手渡された」
「遠路はるばるよく来てくれたな、自らの墓標の地へ。我こそはnona gate、虚界の扉を開きしもの。貴様らも屠って死後我がしもべとしてくれよう」
「以上が魔王の書いた文である」
「少あいですね」
「と名言官が横から口を出す。一般的に演説文は400字前後が望ましいとされている。まれに原稿用紙10〜20枚程度の長大な演説文を用意するものもあるが、こうした文章は要点が定まらず、味方の兵の指揮にもよい影響は与えない。演説は味方を奮い立たせ、敵を震え上がらせるべきものなのである」
「Nona gateをつくったときの 苦労話でも 入れたらいいんじゃないかな」
「とダウィッド」
「うむ、しかし我々はNona gateの成り立ちをよく知らぬ……そういったことは触れずに400字程度考えねばなるまい」
「そもそも、魔王殿はこの戦にどういった意気込みをお持ちなのですかな」
「伯爵の旧友である料理人が尋ねる」
「どうって言われても……魔王様はあまりそういったことは語られないので……」
「しかし、そこが一番大事なのですよ演説とは」
「ないものをねだっても仕方あるまい。こういうときは、自分の立場になって考えるのだ……特に主張したいものもなく、しかし何かうまいことを戦場で言ってのけねばならない……そう、そういう時はまず自軍の軍備を誇る。そちらの自慢の軍事力を3つほど上げてみてはくれぬかね」
「不落を誇る石壁ヂヤシヴコヴヒ、暗殺に長けた邪僧ョヌヂ、それから幻術を得意とする不肖私、巫女ミトユヰ、でしょうか……」
「う・う〜む……この若干照れた様子の誇らしげな表情! 妻子持ちの私も思わずグッと来てしまいますぞ〜! それにしても伯爵様の、さりげなく敵方戦力を聞き出す手腕にはウツセミ脱帽でござんす!」
「ではこうしよう。『遠路はるばるよく来てくれたな、自らの墓標の地へ。石壁ヂヤシヴコヴヒの礎となるがよい。邪僧ョヌヂの闇に踊る刃がその墓碑銘を刻み、巫女ミトユヰの幻術がその惨状を故郷に知らしめよう』、これで80文字だ。先は長いな」
「あの、私の幻術は戦場での混乱をもたらすようなもので、蜃気楼みたいな感じで遠くへ連絡するような機能はないんですが」
「うむ、幻術という言葉だけで適当に考えてしまった。しかし、実際とは違う機能を宣伝して相手を混乱させる実用的な演説、というのも悪くないやらしれん。これぞ真の幻術とは思わぬかね」
「は、伯さく様、先ほどからの立て続けの名言、この名言官もウツセミ殿のしゃべり方がうつってしまった次第ですぞ〜!」
「名言に浮かれているときではないぞ、『我こそはnona gate、虚界の扉を開きしもの。貴様らも屠って死後我がしもべとしてくれよう』を入れてもまだ130文字程度だ……戦をするにも一苦労だな」
「あ、そういえば、この間何か赤い石をノナ様に渡しました。何かよくわかりませんが、なかなか大事なもののようでした」
「赤い宝石か、それをいただきとしよう。ウツセミよ、赤い石で何か一句読んでみよ」
「遅かったな、伯爵よ! 『赤の宝石』は既に手に入れた! 今こそNona gateは完成する。泣け、喚け。震え、怯えよ。その恐怖が血の赤の殺戮の王の降臨の前菜となるであろう……」
「よい出来栄えだ。それで行こう。なかなかお前はこういうことに才能があるのだな」
「ほうふうと、おなひ調子れ最後の部うんを脚ひょくすえば400文字いけそうれすぞ〜!」
「ではこうしよう。『我こそは魔王ノナ、恐怖のフルコースを味わい、舌平目を打つ闇の帝王。nona gate、虚界の扉を開きしもの。貴様らの血を我が喜びのソースとし、その悲鳴を食堂に流れるオーケストラとしよう……奮い立て精鋭よ、闇の饗宴のときは来たれり』」
「これで300文字くらいですね」
「最低でもあと50文字はないとかっこがつかぬな」
「あ、あの、もうだいじょうぶです! あと50文字くらいは自分たちで何とか考えてみます! こんなによくしていただいて、こんなに楽しい戦は初めてです。魔王様にも、たいへん素敵な方たちだったと伝えておきます」
「伯爵様、よいことをすると気持ちのいいものですな」
「まったくだ。我々の考えた演説が明日にも読まれるのだと考えると、達成感があるな」
「ほ、ほうひて適当伯軍の夜は更へへいった。魔王城の中では時ゃ遅しと残りの5でゅう文字を考へていうほほだあろう。まさに、事あいは一ひょく即発のほきを迎えはのだ」


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/1/3/速熱熱衝絶>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/帰ってきたスイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/足裏健康大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<10/0/5/1/盾魔/マジックシールド>
 ・召喚剣<50/0/0/0//ジュライラ>
 ・召喚剣<50/0/0/0//閉塞の五度>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/1/0/4/毒毒毒毒/フィーグムンド>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>

設定:
 ある朝ウツセミが目を覚ますとベッドの中で管を繋がれた重病人になっているのに気づいた。
 いや、本当はずっと気づいていたのだ。ただ視界の隅に追いやっていただけで。
 今わの際に、子供たちよ、夢に見たのはお前たちのことではなく若き日に熱中したゲームのことであった。ただ、最初の娘京子のことばかりが何度も出てきた。お前たちについては私は、満足のいく生を送っていると安心している。だが、幼くして命の終端を迎えた京子のことは今も心残りだ。
 京子が生きていればどんな姿になっていたのか? 何の仕事をしていたのか? 私はマーガレットに思いを委ね、様々な京子の予想図を描いた……
 愛とは物質や肉体が本質ではない、愛とは血の愛だ、血として残ることだ。誰もがそれを本能では理解している。
 お前たちは京子を知らぬ。もはや妻もこの世にはなく、私が最後だ。私の死とともに京子の記憶は宇宙から消滅する。最後の瞬間まで密度濃く京子を思う義務が私にはある。
 お前たちは血の生物の愛の道のりを行け、そして願わくはマーガレットのキャラとしてネットに放流された京子の血が、複雑な誤読と脚色と脱胎を繰り返しながら人の記憶の中を生き抜き、繰り返されるデッドコピーの果てに無限遠の彼方でオリジナルとして再生され愛を受けるように。
 そのような最後の演説も一つとして言葉にならず、薄く開いただけの目で天井の明かりを見ながら意識の遠のいていく呼吸器の中の薄く目を見開いた私。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:1
(elec.)


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/帰ってきたスイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/足裏健康大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速熱熱衝衝/適当伯シャロロム>
 ・召喚剣<50/0/0/0//ジュライラ>
 ・召喚剣<10/0/5/1/盾魔/マジックシールド>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<50/0/0/0//閉塞の五度>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>
 ・召喚剣<5/1/0/4/毒毒毒毒/フィーグムンド>
 ・裏切書簡
 ・裏切書簡

設定:
「おお、ウツセミよ。どこに行っておったのだ。演説が始まってしまうぞ」
『伯爵は料理人の振舞ううどんをすすりながらウツセミにプログラムを差し出した。魔王の演説準備が整うまで、魔王軍は出し物で我々を歓待してくれている。現在の出し物はノナ・シャロロム両軍対抗親睦障害物競走だ』
 名言官の筆記スピードは神速の域に達していた。伯爵の名言以外を記録するように用意していたノートに最近では、頭の中に沸き出でるままに文章を書き、現実を紙の上に転写していた。
「現在戦うは魔王軍所属妖怪ダキヌカレ、そのぐんにゃりとした肉体で次々に障害物をかわし中! ぜひぜひそのぐんにゃりした体でダキヌカレたいですぞ〜! 一方我が適当伯軍の選手は料理人、圧倒的に分が悪いッ! が、しかし、ただの人間が障害物競走でここまで魔族と渡り合うその姿は必見! 血気盛んな少年諸君、ダキヌカレクンのいやらしい肉体にばかり目をやっていてはなりませんぞ〜」
 一方ウツセミも負けてはいない。かつては筆記に費やしていたその才能を、ナレーションとして活かす。
 プログラム上では魔王の演説は障害物競走の後となっている。ウツセミのいない間に様々な出し物や競技が行われていた。競技関係は10対の脚を持つ骸王ニシヂァグ1体vs伯爵側人間10人のムカデ競争など、魔王側に有利な試合が多い。しかし、ほかにもダンスやのど自慢など純粋なエンターテイメントもあり、また、伯爵が「自軍に有利な試合を設定するのは戦の常道」としたこともあり、伯爵軍側は不平等をさして気にしてはいなかった。
「雨天決行……魔王軍のこの戦争にかける意気込みが窺えますわね。あっ、バターのいいにおい」
「ポップコーン、どうですかね。いりませんか。炒りませんか」
 プログラムを覗き込んでいたスイーツ京子が振り返ると、骸王ニシヂァグが大量のポップコーンを抱えてうろつきまわっている。
『私は初めてその怖ろしい姿を目の当たりにした。さっきのムカデ競争のときは、目が悪くてあまりよく見えなかったのだ。巨木のごとき巨体、剥き出しの蠢く骨、十対もの脚、鎌のような腕……そして肩からはポップコーンの製造機を吊るし、出来立てのポップコーンを箱につめて売っていた』
 戦争には掟があり、いかに敵とはいえ民間人を虐殺したり、ポップコーンを売りにきたところを討つのは許されない。逆にポップコーンの中に毒を入れるようなことをすれば信頼を失い、次回の戦争ではポップコーンの売り上げが激減してしまうだろう。伯爵は骸王から買ったポップコーンをぼりぼりと行きながら、うどんの汁をすすった。まずポップコーンの固い感触を楽しみ、ついでうどんの汁で柔らかくして消化しやすくするのである。
「うまい。さすがは骸王、トウモロコシの骸の扱いにも長けていると見える」
「劇場で食べるポップコーンはうまい。たとえその劇の主役がブレイスヴァであっても」
 障害物競走から戻ってきた料理人が汗を拭きながら戻ってきた。
『魔王城周辺で奏でられていたオーケストラが徐々に静かになっている。それとともに、辺りの話し声も収まっていた。いよいよ演説が始まろうとしている。もはや辺りにポップコーンを噛む音は聞こえない。城壁に人影が現れると、静寂を保ったまま一瞬空気がざわついた』
「この沈黙を保った空気の中で、私はソルダスを懐かしく思い出す。いつも空気の読めなかったソルダス。彼がいれば、ここでなおもポップコーンをぼりぼりとやっていたのだろう」
 ウツセミが周囲の和を乱さぬよう、小声で述懐する。
 テラスの中央にたどり着いた魔王は原稿用紙を取り出し、広げた。と、即座に風がそれを攫って行った。
「なんというハプニング! 魔王の力量が、今、問われる……!」
「いいえ、あれは演出よ。魔王は演説を暗記してきたに違いないわ。伯爵の手を借りた演説文なのだもの、それくらいの器量を見せたいところのはず」
 マーガレットを崇める教団のスカウトを受けて旅立った同郷人の後を追って戦乱の中に身を投じたフリダとジュライラだ。ジュライラは『月刊 戦争演説』に2回記事が載ったこともあり、演説への見識はなかなかのものだ。
「左利きの女が世界を作り、我らは生まれた」
『適当伯軍最前線に緊張が走った。伯爵の筋書きにない演説始め――』
「すいひゃせん、あの、目あわううてよく見へないんへすあ、魔ひょうノハは紙あとあさえてあわへへあんなほほいっへうおうにいえあすか」
 名言官は傍らの料理人に尋ねた。料理人は3回聞きなおしてから、「そうは見えない」と答えた。名言官は早速続きを書きつける。
『しかし、紙を飛ばされたゆえのうろたえという風にも見えない。魔王はことによると、まったく新しい演説を用意してきたのかもしれない』
「我こそは魔王ノナ。Non-a、<女としてある否定>、<女として受肉した非在>。我こそは創世神龍宮寺宏美の記憶と力を継ぎし者だ。
 見よ、伯爵。デクスター王家に安置されていた“赤の宝石”だ。先ほどついに私はこの魔石の秘密を解明した。これこそは創世の神の惨劇の記憶の結晶だ。私は世界の秘められた力を手中に収めた……そして見せてやろう、Nona Gateの真の姿を」
「魔王がその手を大きく広げると、中空に雷光をまとわりつかせた赤い球が現れた! 内側には不気味な闇が蠢き、脈打っている……!」
『興奮のあまり、ウツセミはナレーションを叫んだ。だが、居合わせた誰もそれを攻めはしなかった。ただ、目の前の光景に幻惑されていたのだ』
 魔王の手の中で光球は少しずつ薄らいで行き、中心に一冊の書物が次第に姿を現してきた。そして光が消えると、書物は魔王の手の中に納まった。
「これこそはNaga Note、<竜宮音木草>……Nona Gateの正体であり真央だ。
 我が名はNon-a、不在なる神の現せ身たるを名に刻みし者! そして我が力のよりどころたるゲートは宇宙の振動の根源にしてただ一つの真なる書物である<竜宮音木草>の名を、その名の中に秘めしものだ。我が勝利と君臨は既に運命づけられている。
 闇の眷属よ、饗宴の時は来た! 思う様生き血をすすり肉を食らうがいい、そして伯爵よ、貴様は我が光刃ビヂヘジゾヲヲでもって直々に四度殺してやろう!」
「演説が終わるか終わらないかのうちに魔族は興奮して吠えたけった。私もダキヌカレクンが興奮してるのかと思うとついつい吠えたけってしまいますぞ〜! そのうなり声は周囲を満たし、ワタクシ、ウぅムと唸ってしまう次第」
「すごいね、魔王軍みんな生き生きとしてる」
「ちょっとオカルトっぽいけど、これから戦場に出るって時にはぴったりな名演説だね」
「素晴らしい演説だった。これは私も一演説返さねばなるまい」
『そう呟いて伯爵は立ち上がった。私は繰り出される名言に備え、ペンを握り締めた』
「諸君、うろたえるな!
 聞き覚えのある者もいよう、我らが祖国デクスターの名が『右』を意味する言葉『デクストラ』に由来していることを。そして盾国ジニスターは『左』を意味する『シニストラ』が元となっている。魔王の言う通り名前に符号があるならば、魔王はデクスターではなくジニスターを居城としているはずだ。つまるところ、魔王はたまたま現れた符号を元に適当なことを言っているに過ぎぬ。とんだ適当魔王だ。
 そして、我が勇士たちよ! スタラ将軍不在の今、このシャロロム=アウタングラッシェ=ヘベリエロンが戦の指揮を取る。諸君はフィトヒット名誉一刀流免許皆伝が率いていることを忘れるな」
『フィトヒット名誉一刀流……伯爵の傍に仕えてきた私も初めて耳にする剣術だ。恐らくは、秘剣と呼ばれるものなのであろう。武術に疎い私も思わず胸が高鳴った。私はこれから、歴史的瞬間に立ち会うのだ』
「ひゃああ〜、このウツセミ、伯爵様がお若い頃から仕えてまいりましたが、フィトヒット名誉一刀流など初めて聞くし、伯爵様が剣術を習っていたこと自体初耳ですぞ〜!
 伯爵様のことだからきっと適当な剣術を今考えたに違いありませんぞ〜!」
「それが事実だとすれば、戦争演説史上稀に見る機転……!」
 耳ざとく聞きつけたフリダが感動する。フリダは基本的にポジティヴなのだ。
「しかし、ここで皆に言っておかねばならぬことがある。実は今日は剣を忘れてきてしまった」
『盛り上がっていた士気は目に見えて衰えた。剣を借りればよいという問題ではない。門外不出の秘剣である。専用の剣を忘れてしまってはうまく戦えないのに違いあるまい。一方、魔族は大いに笑い、この戦はもらったものとばかりの様子だ。魔城より死霊パドアムフが現れ、そのガス状の体で上空に文字を描いた。“自軍の兵士を落胆させる演説を行ったやつは初めて見た”と読める。私はこんなにも悔しく、心細く感じたことはなかった』
 ウツセミの狂笑とウツセミ以外の落胆の中、『月刊戦争演説』をバックナンバーまで取り寄せているジュライラだけが気づいていた。これは専門的に「破壊と再生」と呼ばれる演説の技法だ。
「落胆には及ばぬ!
 フィトヒット名誉一刀流は失われた!
 だが、たとえ失われても一度得られたものは何度でも得なおすことができる。今こそ、フィトヒット名誉一鞭流の勃興の時だ!」
 魔王軍をも上回る唸り声が響き渡った。いちべんりゅうのべんの部分が鞭を指すことを必ずしも理解していたわけではない適当伯軍兵士たちであったが、感動に必ずしも理解は必要ないのである。
「すごいなあ。やっぱライヴって違うね」
「え?」
「すごい、やっぱライヴって違う!」
「そりゃそうだよ。伯爵は戦争の勝利じゃなく、希望というもの一般について語ったんだから」
 あまりの圧倒的な歓声に、フリダは大声で言い直さなくてはならなかった。ジュライラの返答もフリダには聞こえていなかったが、フリダは適当に相槌を打った。よくわからないけど、多分ジュライラも何かしら感動の意を表明しているのだろうと勝手に解釈したのだ。ジュライラの方はフリダの様子を見て、聞き取れていないのに適当に流しているのではないか、という疑念を持ったが、すぐに気にしないことにして今の自分の発言を元に『月刊戦争演説』に投稿する記事を頭の中で組み立て始めていた。
「おい、みんな聞いてくれ! ここにいる名言官が今書いていたことだ!」
 大歓声の中、ひときわ大きく通る野太い声で料理人が叫んだ。名言官が最近、名言を記録するのみならず、小説仕立てで日記じみたものを書いていることを知っていた料理人は、何かうまいことでも書いているんだろうと、名言官からノートをひったくったのだ。
『大事な戦に剣を忘れたために、適当伯シャロロムをうっかり伯と呼ぶ歴史家もいる。だが、この一事をもってうっかりの名で呼ぶことはあまりに恣意的に過ぎるだろう。かくいう私も、名言官としての着任式の日に、せっかく父に買ってもらったマントを忘れていったものだ』
 次第に料理人の声が途切れ途切れになっていく。何を書いてあるのか要点がわからず、このまま読んでいいものか困ってしまったのである。
「名言官よ、こいつは一体何を書いてあるのだ」
「そえあえすね、わあくひもいふか一はつの本をひははめようと思っえまひて、そのほう稿であうわけです」
「いつか書こうと思う一冊の本?」
「ほうへす、ほへえおそらうはほんな風にあうのあろうという予ほくをまいえてうん章にひへうんです」
「いや、要点だけ喋ってくれ。これはこれから書こうと思う本のことなんだな?」
「ほうあいあす」
「聞いたか、みんな! 名言官は、まだ実現していない未来のことを書いていた! 伯爵の演説は俺たちに未来を見せてくれる!」
「ひ、ひあ〜、あんまりと言えばあんまりな話のまとめっぷりですぞ〜。そもそも名言官が本当のところ何を言っていたのか、このウツセミとんとわからんぱらりのぷうですぞ〜」
 だが、その時傍らのスイーツ京子が間髪入れずに立ち上がり、拳を振り上げた。
「未来伯万歳! 未来伯領に栄光あれ!」
 すると京子を中心に未来伯コールが大怒号となって響き渡った。
 そもそもの名言官の文章から未来への繋がりが不明瞭なのに加えて名言官の発音がまったく不明瞭なため、フリダはこれを「味蕾伯」だと思った。「なんかうまいこと言ってる伯爵」という意味にしか解釈できないので何かしら捉え違いをしているのを自覚していたが、場の雰囲気に乗ることにした。フリダはいつだってポジティヴなのだ。ジュライラの隣にいた竜人フィーグムントは、「ミダイ」と聞き間違えていた。多分これは「未代伯」であり、未代という「前代未聞」のような意味の言葉があるのだろうとフィーグムントは考え、大いに伯爵を称えた。ジュライラは未来伯と最初聞こえたような気がしたのだが、隣でフィーグムントがあまりにも大声で「未代伯」とコールするので、よくわからないながらも「ミダイ伯」と合わせることにした。さらに後ろの方にいた適当伯領出身のフリダ=アンジロッスはもはや周りの合唱を聞き取ることができず、「がっせー」や「バッチコイ」のような、何かそういう掛け声なのだろうと解釈して「ダイハク万歳」と声を張り上げていた。それに影響されてさらに後ろの方では「ダイハツアンザイ」になってしまっているものもいた。しかし、それでもまだ名言官の「いあいしゃふあんしぇー」に比べれば周囲との調和を保っていた。
 死霊パドアムフは苦々しく思いながらも、宙に新たに「だが、ここまで落胆した自軍をこんなにも高揚させた演説を見たのも初めてだ」と書き記した。パドアムフは根がまじめなのである。客観的に優れているならば素直に称えなければならぬという信念がこの死霊にはあった。
 料理人が「娘さんもずいぶん適当になりましたな」とウツセミに微笑みかける。
 ちょうどその時、ひとりの少年がナイフを高く掲げ、大声で叫んだ。周囲は一時、未来伯コールをやめて少年の宣誓に耳を傾けた。しかし、少年特有の高い声でありながら、周囲の音圧に負けないように低く重い声を出そうとしたため、何を言っているのかまったくわからなかった。
「いいぞ! その通りだ!」
 料理人が大声で賛同すると、周りにいた誰もが同調して少年を称えた。未来伯コールに未来少年コールが入り混じり、少年は照れ笑いをしながら合唱の輪に加わった。
「彼は何て言ってたんですぞー?」
「いや、知らん」
「まったく誰も彼もが適当だ。
 しかし、こう適当でなくては先ほどの落胆からの素早い立ち直りはなかったろう。もしかすると、伯爵はこのような時が来るのを見据えて、領民を適当に教化していたのではないか。いや、そうではあるまい」
 さすがに自分の言っていることが適当すぎると反省したウツセミは自ら反語で文を閉じた。
 誰もがめいめいなことを考え、心はばらばらだった。
 しかし、気持ちは一つだった――打倒、魔王ノナ!


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:0


名前:適当伯シャロロム
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:6
剣技:
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱衝衝衝/帰ってきたスイーツ京子>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速護熱護重重/足裏健康大砲>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速護熱衝衝/少年はナイフを取る>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速熱熱衝衝/適当伯シャロロム>
 ・召喚剣<5/0/0/1/速速盾鏡死死死死/宰相ウツセミ>
 ・召喚剣<0/0/0/0//ぱんつを着用したイラストを描く事>
 ・召喚剣<5/0/0/3/魔魔魔鏡鏡魔/本能の愛>
 ・召喚剣<10/0/5/1/盾魔/マジックシールド>
 ・召喚剣<50/0/0/0//閉塞の五度>
 ・召喚剣<50/0/0/0//ジュライラ http://stara.mydns.jp/upload/up/sharorom_war.txt>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<5/0/0/3/速魔魔魔魔速/フリダ>
 ・召喚剣<20/0/3/1/回2回3/拒絶の壁>
 ・召喚剣<5/5/0/2/毒毒>
 ・裏切書簡
 ・裏切書簡
 ・召喚剣<5/1/0/4/毒毒毒毒/フィーグムンド>
 ・召喚剣<40/0/0/1/死/デカセクシス>

設定:
「わたくしもお供いたしますぞ、伯爵様。矢も盾もたまらなくなった(矢も盾もたまらないというのがどういう状態を指すのか知らないが……)ウツセミが出陣の意を表明する」
「おお、ウツセミよ。万の味方を……いや、万は言い過ぎだ、百の味方を得た思いだ……いや、十……0.5くらいか知れぬ」
「もう、伯爵様ったら、せっかくお父様がなれない戦ごとをやろうというのにあんまりですわ」
「よいのだ、京子よ。私は伯爵様の適当なところと(正直適当は勘弁してほしくもありましたぞが……)誠実なところが好きで仕えていたのだ。誰か、私の鎧を用意してくれ。ウツセミは部下に鎧を着けてもらいながら、初めてスーツを着て父にネクタイを締めてもらった日を思い出す。齢60を越えての初陣、剣の振り方もわからず、およそ生きて帰れるとは思えない。しかし不思議に気持ちは落ち着いておりますぞ。


オーナー:niv

(出典:マーガレット百年戦争)

評価数:2
(suika)(elec.)


パンツだこれ! (elec.)(06/27 22時52分54秒)