名前:黒羊の話
HP :5
攻撃力:0
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・召喚剣<35/0/3/0//岩窟人形維持二回目>
 ・召喚剣<30/0/4/0/>
 ・召喚剣<5/0/0/4/速熱衝熱衝>
 ・召喚剣<5/0/0/4/魔魔魔魔魔>
 ・召喚剣<5/0/0/3/鏡鏡鏡鏡鏡鏡/虚構の六度>
 ・召喚剣<10/0/0/3/速熱護衝絶>
 ・裏切書簡

設定:
人間だけが入れる会員制の酒場に一人の男が入っていく。
黒の帽子にコート、白いシャツを背景に黒のネクタイが映える。
男はカウンター席へ向かうと待ち合わせていた人物の隣に座った。
「待ったかい?」
彼が話しかけた男は身なりの良い紳士で、人間階級でも上位であろうことが即座に伺える。
「いや、それほどでもない。それより忙しい中すまないな」
彼は帽子を脱ぎ、手に抱えていた茶封筒をそっと机の上に置いた。
「仕事の途中だったか」
「ん、あぁ。まぁいいよ、大したことじゃない。それより何だって、レプリノシスが逃げ出したんだっけ?」
「あぁ、シャルロットだ。一昨日の晩、急にいなくなった。あれはお前から買ったヤツだったな」
男は不愉快だ、と少し顔を歪ませて酒を煽った。それは彼に対してのやんわりとした非難でもあった。
「勿論は解っている。高級娼婦という言い分で検知機器はつけてない。そもそも、スリープ型のレプリノシスがエラーを起こすなんて考えてなかったからね。素体番号は付いてるけど、ちょっと流通ルートがアレだから保険は掛けてないし・・・にしても、まさかシャルロットが逃げ出すとはねぇ」
他人事のように呟く彼に隣の男はじっ、と視線を向けた。
「とにもかくにも、お前が勧めるからアレには高い金を積んだんだ。どのみち保険も必要ないと言ったのもお前だぞ」
今度は直積的に、彼へと談判を行った。今日、黒コートの男…バートロが呼び出されたのは、用意したレプリノシスが顧客の下から脱走した責任をとるためであった。
「解ってる、解ってるよ。全部僕が仕組んだことだ。責任は取る。とりあえず、今はこれで」
バートロは男のいなす様にカウンターへと金のみっしりと詰まった封筒を投げ捨てた。
「・・・まぁ、金さえ貰えればこっちは文句は無いわけだが」
金さえ貰えば、と二度言って彼は首を引っ込める。
彼が俗物的な人間であることをバートロは熟知していたし、それを利用することも容易かった。
バートロは彼がシャルロットを使って彼女に支払った以上の金銭を稼いでいたことを知っていたが、それについては言及しなかった。
余計な詮索はしない、人を操るにはまず相手の言い分を聞き、慣らすことだ。バートロはその術に精通していた。彼には天賦の人心掌握の才があった。
さらに、彼が世界有数の製薬会社の御曹司であることが闇社会で地位を上げることに限りなく貢献していた。
不法レプリノシスの販売、違法インプラントの移植、中央コンピューターMOTHERへのハッキングによる情報流出。
彼が手を染めていない悪行は一つたりとてない。
中央都市セントラルの”黒い羊"とはまさしく彼のことだった。
「それじゃ後は僕のほうでシャルロットを探してみるよ。見つけたら連絡する。責任をもってね」
「あぁ、待ってくれ」
バートロが立ち上がろうとすると、男は慌ててそれを抑止した。
「その…聞きたいことがある。レプリノシスは…本当に道具だと思うか?」
俗世の塊だと思っていた人間からの、思わぬ哲学的な問いにバートロは少なからず面食らった。
居を正して彼と向き合う。
「いきなりどうしたんだ。君がそんなことを言うなんて意外だな」
「なんというか…俺でもよく解らないんだ。その、レプリノシスは当たり前のように俺達の傍にいる。言わなくても勝手に奉仕してくれる。
だが、時々思うんだ。これでいいのか、って」
バートロは少し彼を見下した顔をした。気付かれない程度の、表情。
「それは中々に難問だね。レプリノシスに対し、恋愛感情を抱く人間もいるが無意味だ、と僕は思ってる。
人間の感情はもっと複雑さ。レプリノシスは所詮、人形でしかない。指示がなければ何も出来ないし、彼等は君が悲しい時に泣いてくれるかい?」
「いや…」
「人間はもっと高等な生き物さ、自信を持って良い。彼等は偽物さ」
冷たい口調でバートロがそう言い放つと、彼は押し黙った。ただ「そうか…」とだけ呟いて、うつむいてしまった。
「自分でもまだ解らないが、ひょっとしたら俺はシャルロットを愛していたのかもしれない…」
男の突然の告白にバートロは思わず噴出しそうになった。が、堪えて紳士的な笑みを顔に貼り付けて応える。
「なるほど。そういうこともあるかもしれない。なら、尚更僕には責任があるようだ。任せてくれ、仕事はきちんと果たすよ」
今度こそ立ち上がって、納得のいっていない男を尻目にバートロは外へと出た。
天幕は夜を示し、人造の星星が凛然と輝いている。バートロはそれを見て三日月型に唇を歪ませて笑うのだった。


オーナー:nitoro

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