名前:領地王イリュ=ダラム
HP :35
攻撃力:0
防御力:1
素早さ:1
剣技:
 ・鏡の剣
 ・鏡の剣
 ・回復剣
 ・公領剣
 ・公領剣
 ・公領剣
 ・土下座剣

設定:
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(このテキストは2005年10月頃に作成されたものです)


『ノート』



深崎から”たまこ”なる携帯ペットを借りた俺は、その晩、中身の 解析に取り掛かかった。
コレを作ったのがどこの企業(或いは個人)かは知らぬが、途中で 投げ出すような奴らが作ったモノだ。ロクでもないプログラムに違い ない。だが、それでも外見だけは市販のモノと変わらない程である。 一見の価値はある。

今夜は久しぶりに徹夜になりそうだ。





幾百目かのプロテクトに当たって、俺はもうやる気を失いかけていた。 あれから3日。予想とは反して、いや、予想以上のプロテクトの前には 3日間という時間はあっという間だったらしい。

…これがただのゲームだったら、中身を全て解析する事ができた。 頑張れば、プロテクトの柔い企業の重要機密を盗み出す程度の 腕前は持っていた。でも、これは違った。

ダミープログラムとプロテクトの迷宮。どれが本当のプログラムで、 どうやって動作しているのかさっぱり検討がつかない。果たして ペンタゴンでさえもこれだけのプロテクトをかけるのかといった複雑さ。 ただでさえ難解なのに、ダミーをプロテクトしていたり、プロテクトを プロテクトしていたりするから、いよいよワケが解らない。 気が狂いそうになる。

畜生、開発途中のプログラムで、ここまでする必要が何処にあるのだ。 こんな小さな器に、この膨大なデータが何処に入っているんだ。 (ダミー1つだけでこの携帯機10個分はゆうに埋まりそうだ) 不可解な点ばっかりだ。最初の期待を嫌な意味で裏切られた気がする。

「……とりあえず、休憩しよう。」
このままじゃ、精神が圧迫される。暫く寝てからコイツをどうするか
決めよう。





………解けた。あっさりと、解けてしまった。
散々時間をかけても解けなかった難問は、発想の転換一つで 簡単に解けてしまうものだ。
 今までダミーだと思ってた偽プログラムやプロテクトが、全て 本プログラムだったら良いのに。そう思ってダミープログラムを 眺めていたら、ある法則性があるのを発見してしまった。
 あとはまるで雪崩のようだった。ダミープログラムをその法則に 従って読み替えて行くだけで、みるみるうちに本プログラムへと かわっていく。この調子なら、一気に全部解析できる…!
「……………解けた。しかし、これは……。」

解析されたプログラムを見て、絶句する。有り得るはずがない。 こんなの、不可能だ。




……プログラムの中身は、人工知能だった。 ただし、ASEMOやAIVOOなんて比較にならないくらい高性能な代物。 例えるならば、そう───人間そのものであるかのような。





 数億に渡る感情パターン。腕や足、耳鼻目の動作から 全身の皮膚の刺激反応にまで及ぶ感覚能力、そして目を見張るほどの 自己学習システム。
 これは、理論上は”ヒト”とそれほど大差ないモノ。 こんな携帯ゲームでなくて、ちゃんとしたセンサーのあるロボットか 何かに埋めこめば、完全な人間が完成してしまう。
「開発途中だなんてとんでもない。  ……最後まで完成しているではないか…。」
前髪を掻き揚げた手をこめかみに当てて、下を向いて考えこむ。 …益々、これの意味が解らなくなった。このプログラムを公表する だけで、世界がひっくりかえる程の技術である。 人型ロボットでも作れば、製品として申し分のないモノになる。 利益なんて考えたらそれこそ想像が付かない。
 それを、何故あえてこんな小さなものに、尚且つその辺に捨てて おいたんだ……。

俺は、とりあえずたまこのフタを戻し、元の携帯ペットに
プログラムをしまいこんだ。フタの裏には申し訳程度に小さく
”(有)仲原研究所”と書いてあった。





仲原研究所。生活に便利な日用品を開発・商品化して 売り出している企業。その製品の全てはある程度メジャー であり、且つマイナーであった。それらは市場の端で 見かける程度のモノである。
企業自体も、誰もが知っている程でなく、誰も知らない わけでもない。この不況でギリギリ生きているといった イメージのある企業、それがこの研究所の表向きの全て。

だが、この企業を詳しく調べてみるとさまざまな点で 怪しい影が見え隠れする。この企業が関わっている製品は、 他社へ開発を依頼したものも含めると実は驚くほど多義に渡る。 その構成は、食品、洗剤、寝具、電化製品、自動車、それに 軍隊への武器弾薬といった具合。出鱈目といっていいほど あちこちに手を出している。 それなのに従業員数はたったの11名。これでまともに動く とは思えない。

…絶対に裏がある。この企業に興味が沸いてきた。





たまこの製作元である拠原研究所に電話をかけてみる。直接、会社に行ってみたかったが 幾ら調べても所在地が解らなかった。何故かホームページに連絡用の電話番号のみ掲載され ていたので、 
 
 
 


オーナー:utsm4

(出典:土下座杯)

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名前:領地王イリュ=ダラム
HP :35
攻撃力:0
防御力:1
素早さ:1
剣技:
 ・蟲毒剣
 ・鏡の剣
 ・鏡の剣
 ・鏡の剣
 ・鏡の剣
 ・公領剣
 ・土下座剣

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(2016年2月22日追記)

7.
納戸がどうにかこうにかして仲原研究所を調べていると、
ある日彼の元へ男がやってきた。男は生野と名乗った。
納戸が仲原研究所を調べるより先に、仲原研究所が納戸
を調べていたらしい。

生野に連れられて埼玉県の奥の方まで行くと、そこに仲
原研究所はあった。一見するとその辺の農家と見分けが
つかない。平屋の奥に通されると所長室のプレート。
奥のソファに男が座っていた。

8.
仲原一は語り始めた。仲原研究所は科学を極めてしまっ
たこと。そして、自分にはコノサキが無いこと。


科学を極めた者は不可避の病にかかり、科学ではその病
に抵抗する事はできないらしい。

せめて自分の技術を封印し世界に病が拡散するのを防ご
うと思ったが、既に仲原研究所の名で出した商品は多義
に渡っていて回収仕切れなかった。例え封印に成功した
としても遅かれ早かれ人類は進歩するので、根本的な対
策にはなっていない。

どうしたらいいものか、と途方に暮れていた頃に、誤っ
てたまこを落としてしまった。あれは並の人間に解析で
きるものではないが、歴とした超文明機械だ。全力を挙
げて捜索した所、深崎という男に拾われてしまった。

深崎は表面のゲームを遊ぶばかりで人工知能の解析を行
う事はしなかったが、どこかに売られでもしたら困るの
で暫く監視をする事にした。

そこで奇妙な現象に出くわした。深崎の横にゲーム機の
たまこによく似た女が現れたのだ。

科学ではこのような事はありえない。あらゆる物理現象
を組み合わせても虚空から存在をつくることはできない
のだ。

もしかしたら、もしかしたら、本当に魔法はあって、
その魔法をもってすれば不可避の病を打ち破れるのでは
ないか──

期待が仲原の胸をうめるが、それを確かめる時間はもう
仲原一には残されていなかった。

そこまで話して、仲原一はふうと息をついた。

納戸は話に興味を持ったものの、未だ何故自分がここに
呼ばれたのか解らずにいた。仲原は口を開いた。


実はつい最近まで仲原研究所は営業をしていなかった。
不可避の病に気付いてからは活動すればするほど人類は
発展し、病による滅びが近くなるし、何しろやる気が
起こらなかった。でもあの魔法のような現象を見てから
心に火が点いた。今では魔法の研究をしている。
ああ、だがしかし、私の命はあまり長くはない。
だから君を呼んだのだ。たまこの解析者、納戸義之君よ。
私に匹敵する頭脳を持ち、この世に魔法のような素敵な
出来事が起こると信じている君ならば、あの女が具現化
した現象を解き明かしてみる事ができるだろう?
解き明かすための技術ならこの本に全て記した。
必要な場所もお金も十分過ぎるほどある。
もし、君か、君を連れてきた生野君のどちらかが私の意
思を継いでくれるというのならば、私は全てを差し出す
用意があるんだ。魔法を解き明かす職場、仲原研究所で
働かないかね? 青田刈りという奴さ。

納戸はぽかんと口を開けてそれを聞き、
そしてすぐに首を縦に振った。

納戸が仲原研究所を調べていた理由も正しく、
そういう事だったからだ。

次:


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(出典:土下座杯)

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