名前:【 式龍 】
HP :5
攻撃力:5
防御力:0
素早さ:2
剣技:
 ・絶対剣
 ・高速剣
 ・紅速剣

設定:
 龍は去るように言ったが、盲目の少女は聞かなかった。
 周囲に漂う濃密な血の臭いと、そして硬い鱗の手触り。目の前に居るものが人外の存在であることくらい、既に少女も理解し始めていた。しかし少女はそれでも離れようとはしない。一人で谷底をさまよっていた人恋しさか、あまつさえ龍の怪我を気遣って、小さな手を器にして清水を運び、牙の隙間に流し込んだ。
 人間の少女は柴(しば)と名乗った。
 生まれてこのかた十とふたつ、ずっと山の中で暮らしてきた。もとは川辺に捨てられた身寄りのない赤ん坊だったのを、山奥に住む山賊集落の女房に拾われたのだという。目の見えぬ赤子、それも女子(おなご)など育てたところで食い扶持が増えるだけだろうに、山賊頭はまるで我が子のように少女を大事にした。ところが鎧武者たちが集落を焼き討ちにしたので、育ての親も村の知人もみな燃えてしまい、あてもなく谷底を徘徊していたと少女は語った。
 龍は、身の上話など無意味だと跳ね除けた。
 この通り我が命は長くない。お前が何をしようと知ったことではないが、追っ手が来れば巻き添えを食らうことになろう。捕まって人買いにでも売られたくなければ、さっさと離れたほうが身のためだ。
 少女は引き下がらなかった。
 このまま谷をさまよっても、いずれ野たれ死ぬしかありません。それよりあなたの力を貸して欲しい。とと様は悪人だったかもしれませんが、このままでは私は死んでも死に切れないのです。
 龍は自嘲の鼻息を漏らした。もう身体の感覚もないのだ、助けてやることなど出来るわけがない。こうして口を利けるのが不思議なくらいなのだ。見ろ、我が背から延びているのが真銀の糸だ。好きなだけ持って、山を降りるがよい。人里で売りさばけば、しばらく生計に困ることもなかろう。

 少女はなおも反論の口を開けようとしたが、そのとき不吉な笛の音が谷底に響き渡った。追っ手に見つかったのだ。すぐさま火矢を構えた密猟隊に取り囲まれ、龍の首を引き摺り下ろす鎖縄を手に手に持った男たちが、闇の中から龍と少女とを包囲した。
「ほほう、こりゃいい。予想外のおまけが付いたようだ」
 密猟隊の頭らしき男が言った。


オーナー:L_D

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(piyo)