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私の存在は、偽りだった。
この肉体の本当の持ち主はピンピラネという女だった。
彼女は、剣の里という施設の巫女だった。八花仙という役職についていたらしい、私には詳しくは理解できなかったが。
里はマーガレットの洗脳で滅んだ。彼女の心もその例外ではなかった。
彼女は洗脳から逃れるため、仮の人格を作り出した。それが私。私は囮人形だったのだ。
私は彼女が用意した舞台の中で、彼女と同格の精神の器ができるまで育てられた。
マーガレットというウィルスに対する免疫の役割を私は課されたのだ。
かつては絶対の存在だった師も架空、その上を行くマーガレットもまた架空。
彼女が覚醒のトリガーとして用意したのは私が自分の姿を見つめることだった。
精神の器が完成し、私が”鏡”で自分を見つめなおした時、精神の深層に眠るピンピラネが目覚める予定だった。
精神の器が完成するまでは、自らの姿を覗く事はタブーとされた。だからこその、ローブだった。
マーガレットを乗り越えた私は彼女と出会い、同化した。
･･･そして、その魂は殺された。

本当なら、そこで消えるはずだった。本当なら。
しかし、予定外のことがおきた。
”ピンピラネ”が自分を切り離したのだ。それも、私を生き残らせるために。
驚くことに、彼女は私を愛していた。架空人格の私を。
彼女は私を死から逃すため、自らの魂を変成しようとした。
荒療治だった、一度同化した精神を割ることは、出来ないと思っていた。出来ても、それは酷く歪になる。

そして。

オーナー：nitoro

(出典：アフター・マーガレット)

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後悔はしていない。彼女を作ったこと。彼女と融合したこと。
そして、彼女のために死を選んだこと。

昔の話。
私は捨て子だった。里近くの森で捨てられた子。
育ての親は、幼子を亡くした母親だった。
死んだ娘の変わりに私に最大限の愛を注いだ。
私は多くを望まなかったし、剣だけが全ての、あの異常な環境にすぐに対応できた。
私は誰も愛さなかった。自分に必要でないことは絶対にしなかった。
母親が死んでも涙一つ流さなかったし、自分に生きていけるだけの力があると解かれば、それで十分。

マーガレットの洗脳は、純粋な巫女で無い私を狂わせるには十分だった。だが、剣に盲信した民でない私は、意識の外の力＝強力な魔法、を駆使することが出来た。
すなわち、偽造の魔法。
私はマーガレットの洗脳を逃れるため、架空人格を作り、その成長を見守った。
マーガレット（夢想）を打ち倒せる強さを、私はもう一人の自分に求めた。
そこで、初めて私の中にある感情が芽生えた。
それが、愛だった。

オーナー：nitoro

(出典：アフター・マーガレット)

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